検察の不起訴理由への反論-2
2015年 01月 26日
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2015年1月26日
東京地検福島原発事故 東電役員の再不起訴はここが問題だ!
東電も保安院も,緊急の津波対策が必要であることは認識していた。
検察の論理は,どんな対策を講じても事故は防ぐことはできなかったという論理
そして,何の対策も講じなかった東電を免責するものである。
検察は被害者の声を聞かず,巨悪=東京電力の言い訳を追認し,正義を放棄した。
検察審査会による強制起訴によって東電幹部の刑事責任を追及しよう!
福島原発告訴団弁護団 海渡 雄一
注:本意見は,2015年1月22日に東京地検が公表した不起訴理由説明を元にまとめたものである。検察庁は告訴団に対して口頭での説明の機会も設けると約束されているが,この説明は未だ実施されていない。この口頭の説明にもとづいて,この意見は追加・変更される可能性がある。
目次
第1 再捜査の概要とその焦点
第2 添田孝史「原発と大津波 警告を葬った人々」とその裏付け証拠で何が明らかになってきていたのか
以上は第1回目に掲載。http://skazuyoshi.exblog.jp/22758293/
第3 政府事故調の追加公開資料によって明らかになった新事実
第4 検察の注意義務に関する不起訴理由に対する反論
第5 検察の予見可能性に関する不起訴理由への反論
第6 検察の結果回避可能性について不起訴理由への反論
第7 検察審査会による強制起訴と検察による新告訴の厳正捜査を求める
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第3 政府事故調の追加公開資料によって明らかになった新事実
1 政府事故調の保安院小林勝氏調書が裏付ける貞観地震津波の重大な危険性
原子力安全保安院の安全審査課耐震安全審査室で平成21年(2009年)6月30日以降,室長を務めていた小林勝氏は,津波対策について極めて重要な証言を行っている。同氏に対しては,平成23年(2011年)8月18日(1)と平成23年(2011年)9月2日(2)の2回聴取が実施されている。
(1)一通目の調書
まず,小林氏の一通目の調書には,次のように記されている。
「貞観地震については,森山審議官が貞観地震を検討した方が良いと言い始めた時に初めて知った。1F-5の中間評価が終わり,1F-3のプルサーマルが問題になった平成21年頃,福島県知事が,①耐震安全性,②プルの燃料の健全性及び③高経年化の3つの課題をクリアしなければプルは認められないと言っていた。森山審議官は,当時,貞観地震が議論になり始めていたことから,福島県知事の発言に係る①耐震安全性の検知(ママ)から,貞観地震の問題をクリアした方がいいんじゃないかと言い始めた。私も森山審議官の考えに賛成だったが,結論として,1F-3のプルサーマル稼働を急ぐため,(8字削除)原案委(ママ)に諮らなかった。私は,野口安全審査課長(当時)に対し,かような取扱いに異議を唱え,「安全委員会に(5字削除)話を持って行って,炉の安全性について議論した方がよいのではないか。」と言ったが,野口課長は「その件は,安全委員会と手を握っているから,余計な事を言うな。」と言った。また,当時ノンキャリのトップだった原広報課長から「あまり関わるとクビになるよ。」と言われた事を覚えている。当時の状況は,私や森山審議官のように,貞観地震について懸念する人もいれば,1F-3のプルサーマルを推進したいという東電側の事情に理解を示す人もいたという状況だったこともあり,(7字削除)原案委(ママ)に諮らなかった。なお,当時の野口課長の前々職は,資エ庁(資源エネルギー庁)のプルサーマル担当の参事官であり,プルサーマル推進派で,現在,首席統括安全審査官(審議官クラス)を務めている。当時の野口課長の関心は,プルサーマルの推進であり,耐震評価についてはあまり関心がなかったようであった。」((1)の1-2頁)
「自分が耐震安全審査室長に就任して間もないH21.7.13に開催された,総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会 地震・津波,地質・地盤合同WG(第33回)に出席した際,貞観地震を巡る議論があることを知った。その後平成22年に,東北大学の教授であり,我々の審議会の委員でもある,私が非常に尊敬している今泉教授が書いた論文で浸水域が示され(平成22年5月24日),同年8月には岡村教授が福島において貞観地震に係る堆積物が出たと指摘した論文も読み,被害が相当大きかったのだと思った。」
「東電の想定津波波高の数字については,平成23年3月7日に開催された会合の時に初めて聞いた。当時,我々が推本と会合を持ち始めており,次の長期評価では,貞観地震がきちっと評価されるなという認識を持ち始めたことから,東電にも一言言っておかなければならないと思い,3月7日に東電を呼んだ。東電の説明によれば,佐竹,推本及び土木学会の各モデルに基づいた波高計算をしたところ,佐竹と推本のモデルでは,敷高(ママ)を超える津波が来るとのことであった。そこで私は,東電の(2字削除)課長と(2字削除)に「これは,早く工事しなきゃダメだよ。」といった。すると,彼らは,「平成24年の秋に,土木学会の評価手法の見直しがあるから,そのときに併せて貞観津波の評価をしたい。と言った。これに対して私は「そんな悠長なことではだめだぞ。それでは遅いぞ。」と言ったが,それ以上の事は言わなかった。それ以上のことを言わなかったのは,正直なところ,当時はまさか3・11のような大きな津波が来るとは思っていなかったからである。これらのやり取りを証明するメモ等のエビデンスは,現時点で見当たらない。土木学会の評価手法の見直しの件については,平成23年3月7日以前(年が変わる前と思う。)に岡村先生から「波源モデルを大き目にしないといけないな。そういったところを土木学会の評価に反映させたいな。時期は平成24年だな。」などと聞いたように記憶している。」((1)の2-3頁)
「東電が,「平成21年9月,バックチェックでは,土木学会の津波評価技術の手法を用いることとし,貞観津波を考慮しないことで保安院は了承した。」旨話しているようだが,保安院として,貞観津波を考慮しないことにつき了承するしないなどと言うことはない。かような点については,学識経験者の意見を踏まえた上で評価を行うので,事務局サイドでその良し悪しの判断をすることはない。
(以下4行分削除 ここには,二通目の調書で小林氏が忘れたとして厳しく追及されている9月7日の会合に小林氏がなぜ欠席したかの理由が書かれているものと思われ,さらに重大な事実が隠されている可能性がある―筆者注)
保安院としては,平成21年8・9月頃,1F・2Fにおける貞観津波の評価については,その最終報告の中できちんとなされると思っていた。」
「貞観地震の被害が大きいのではないか,昔,津波が相当奥まで入り込んでいるんじゃないか。」と思ったのは,今泉先生の論文を見た平成22年5月頃である。」
「岡村行信先生が平成22年8月に書いたAFERC(Active Fault and Earthquake Research Center:活断層・地震研究センター)の記事を読んでから,貞観地震に係る堆積物調査も重要であると考え始めた。これに伴い,高い津波が来ると注意しなければならないと思うようになった。」((1)の3頁)
「名倉安全審査官は,平成21年7月1日の合同WGで,バックチェックの(2字削除)報告書において貞観津波を考慮して記載する(3字削除)と東電に言っている。私もその審議会に出席していたから覚えている。
また,津波堆積物の研究については,岡村先生も福島で貞観地震に係る堆積物が出たと指摘していたことから,私としては重要なファクタ-と思っていた。」((1)の4頁)
このように,保安院の福島第一原発3号機のバックチェックを担当していた耐震安全審査室の室長であり,津波審査の中心にいた小林氏は貞観の津波と同様の津波が福島第一原発を襲う可能性があり,その場合原発の安全性が確保できないことを知っていたことが明らかである。
平成20年(2008年)の段階で津波対策の工事計画までが検討されながら,これを土木学会に検討依頼するという形で,対策を先送りし,しかも,この報告が保安院に対してなされなかったことの持つ意味は決定的である。東電役員たちは,保安院がどんなに腐敗していたとしても,この報告がなされれば,保安院から直ちに厳しい対策を求める指導がなされることを確実に予測しながら,それを避けるために報告自体をしないという隠蔽工作を行ったのである。
(2)二通目の調書
二通目の調書はより詳しくなっているが,小林氏自身の姿勢がやや防衛的に変わっている部分がある。
平成21年(2009年)8月及び9月の東京電力による貞観津波に関する説明について次のように記されている。
「貞観津波に関しては,平成21年6月及び7月に開催された地震・津波,地質・地盤合同ワーキンググループ(以下「合同WG」という。)第32回及び第33回において,産総研の岡村先生から指摘を受けている。また,同年7月の耐震バックチェックの中間報告書に対する「耐震設計審査指針の改訂に伴う東京電力株式会社福島第一原子力発電所5号機耐震安全性に係る中間報告の評価について」の中でも,貞観津波の調査研究成果を踏まえ,事業者がその成果に応じた適切な対応を取るべきとしている。
こうした状況の中で,私の部下である(7字削除)が,平成21年8月28日及び同年9月7日に,東京電力に対して貞観津波についてのヒアリングを行っている(2字削除)は,同年8月初旬ころから貞観津波に関する対策等について,東京電力に対して説明を求めていたようである。
同年8月28日のヒアリングの保安院側出席者は(4字削除)であった。このときのヒアリングでは,平成14年2月の土木学会原子力土木委員会津波評価部会による「原子力発電所の津波評価技術」(以下「津波評価技術」という。)に基づく想定波高を踏まえた福島第一原子力発電所(以下「1F」という。)及び福島第二原子力発電所(以下「2F」という。)の津波評価とそれに対する対策等についての説明を東電から受けた。
また,平成14年7月の地震調査研究推進本部による「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(以下「地震長期評価」という。)や貞観津波等に関する新しい知見については土木学会に研究を依頼しているという点についても,同様に説明を受けた。
8月28日のヒアリングの際に,(2字削除)から東京電力に対して,新しい知見に基づく試計算の結果があれば見せてもらいたい旨の依頼をした。そして,この依頼に基づいて,東京電力が平成21年9月7日午後1時から保安院に説明に来た。このときのヒアリングでは,貞観津波に関し,平成20年の佐竹論文に示されているモデル8及びモデル10に基づく試計算の結果について説明を受けた。私は,この9月7日のヒアリングにも出席したことを覚えていない。
問(10字削除)平成20年8月28日のヒアリングの際,東電の担当者に対し,「次回のヒアリングには小林室長も出席する。」旨を東電に伝えたとのことであり,実際にも,あなたは同年9月7日のヒアリングに出席する予定となっていましたね。
答 はい。
問 にもかかわらず,同月7日のヒアリングに欠席したというのであれば,それなりの理由があったと思いますが,どのような理由だったのですか。
答 何かのマネージメントがあったんじゃないでしょうか。
問 平成23年8月18日,事故調において,あなたからのヒアリングを実施した際,あなたは,平成20年9月7日のヒアリングに欠席した理由について何と話していたか覚えていますか。
答 マネージメント。そうでなければ,翌日の産総研のヒアかな。
(8行分削除)
問 もう一度確認します。あなたが,9月7日のヒアリングに欠席した理由は何ですか。
答 覚えていません。
9月7日に(2字削除)が東電から説明を受けた内容については,私も,9月のうちに,(2字削除)から報告を受けたように記憶している。その内容は,「東京電力から貞観津波についての試計算結果について説明を受けた。その試計算結果が大きな数字になっている。いずれ耐震バックチェックで評価する必要が出てくるかもしれない。」というものであった。その際,(2字削除)からは試計算結果の具体的な数値については聞いていないものの,敷地高を超える津波がくる可能性があるということは聞いたかもしれないが,よく覚えていない。
(2字削除)から報告を受けた後,詳しい時期は覚えていないが,1Fに関して(2字削除)から聞いていた内容,すなわち「貞観津波の試計算結果の数字が大きい。敷地高を超える可能性がある。」ということを森山安全審査課長(当時)に伝えたことを覚えている。(森山審議官の聞いていないという証言と矛盾しており,小林氏の証言の方に信憑性がある―筆者注)
「私が1Fに敷地高を超える津波がくる可能性があると認識した契機として間違いなく覚えているのは,1F3号機で,プルサーマル計画が始まるとき,すなわち平成22年3月ころ(2行削除)である。1F3号機のプルサーマル計画の議論をしている際に,森山安全審査課長と貞観津波について議論したことがあり,「1Fに大きな津波がくるらしい。これについては敷地高を超えるらしいので,ちゃんと議論しないとまずい。」と話したことを覚えている。
「平成21年7月に1F5号機の耐震バックチェックの中間報告について評価作業を行った後,貞観津波に関する新しい知見が出てきていたのは確かである。私としては,貞観津波が非常に気になっており,1F3号機の耐震バックチェック中間報告の評価作業をやるのであれば貞観津波のことをしっかりと議論しなければならないと思っていた。しかし,実際のところ,1F3号機の耐震バックチェックの中間報告の評価を行う過程で貞観津波に関する議論はなされなかった。
そもそも,耐震バックチェックの中間報告の評価作業は,耐震・構造設計小委員会地震・津波,地質・地盤合同ワーキンググループ(以下「合同WG」という。)及び同小委員会構造ワーキンググループ(以下「構造WG」という。)において審議されることとなっている。
しかしながら,地震・地震動評価や津波評価の詳細については1F5号機の評価の際に合同WGの中で審議されていることから,1F3号機の評価の際には議論しないこととされてしまった。つまり,1F3号機の評価については,構造WGにおける施設の安全性のみの審議とされたのである。
(5行削除)
結果としては,1F3号機の評価の際には,1F5号機の評価作業以降に得られた貞観津波の新たな知見に関する議論が完全に抜け落ちた状態で審議が進んでいったのである。
実際に,1F3号機の評価に関し,構造WGにおいて貞観地震の議論はなされていない。東京電力の吉田原子力設備管理部長(当時)が構造WGにおいて,「福島県からプルサーマル計画の受入れに当たり,3条件が出されている。事業者として説明責任を果たしていく所存であるので,保安院においても1F3号機の耐震バックチェックの中間報告について評価作業を実施していただけると幸いです。」という趣旨のことを言っている。これは,野口課長が構造WGのロジを担当していた私に言って,議事進行に加えたものである。」((2)の1-4頁)
「耐震バックチェックの評価作業自体は耐震安全室が担当するので,私も実作業として1F3号機の評価には携わっているが,その後の意思決定には関与していない。保安院内における1F3号機に関する評価作業が完了するころ,すなわち平成22年7月ころ,私は野口課長に原子力安全委員会に話を持っていくべきだという具申をした。私としては,(9字削除)保安院における評価作業では議論しなかったものの,原子力安全委員会で議論してもらえれば耐震バックチェックの評価結果に貞観津波に関する新しい知見が反映されると考えていた。
しかし,ここでも私の意見が通ることはなく,結果として,原子力安全委員会に保安院としての評価結果を諮ることはなかった。野口課長から「保安院と原子力安全委員会の上層部が手を握っているのだから,余計なことはするな。」という趣旨のことを言われたのを覚えている。」((2)の4頁)
「私としては,1F3号機の耐震バックチェックの中間報告について評価作業をするのであれば,貞観地震についても議論しなければならないと考えていた。(4行削除)((2)の5頁)
実質的に人事を担当する(3字削除)課長(当時)から「余計なことをするとクビになるよ」という 趣旨のことを言われた。結果として,1F3号機の評価作業の過程で貞観地震が議論されなかったのは既にお話ししたとおりである。」
「東京電力が津波堆積物調査を実施していることについても,平成21年中には名倉から聞いていた。前述のとおり,平成21年9月,名倉から貞観津波についての東京電力に対するヒアリングの結果について報告を受けた。その報告では,東京電力が行った貞観津波についての試計算結果によると,福島地点に敷地高を超える大きな津波が来るかもしれないとのことであった。このとき,私は,試計算結果に対する東京電力の対応について,名倉から詳しい報告は受けていないと思う。ただ,名倉との会話の中で,耐震バックチェックの最終報告の段階でシミュレーションをやらないといけないという話はしたと思う。
名倉から,東京電力が津波堆積物調査を実施しているということについても報告を受けた。報告を受けた時期は,平成21年9月よりは遅かったと思うが,詳しい時期は覚えていない。その後,津波堆積物調査の結果がどうであったかなどの質問を名倉にした記憶もなく,結果についてフォローしていなかった。」((2)の7頁)
「添付資料5のメール本文に「貞観の地震による津波は簡単な計算でも,敷地高は超える結果になっている。防潮堤を作るなどの対策が必要になると思う。」との記載がある。だから,遅くとも,このメールの送信日である2010年(平成22年)3月23日までに,私は,貞観津波についての想定波高結果が1Fの敷地高を超える可能性があることを名倉から聞いて認識していたことは間違いない。
さらに,森山審議官も,遅くとも今述べたメールの送信日までには,(13字削除)間違いなく認識していたはずである。
しかし,(13字削除)この認識に基づいて,東京電力に対して具体的な対策についての指示をしたことはなく,耐震バックチェックの最終報告の段階で議論する必要があると考えるにとどまっていた。
添付資料の5のメール本文で,私は,津波対策として,防潮堤を作るということを森山審議官に提案しているが,(40字削除)防潮堤を作ると,むしろ周りの集落に向かう波が大きくなってしまうなどというデメリットの議論はあったように思う。防潮堤を作るに当たってのメリットとデメリットは,1F3に限った話ではなく,他の発電所の場合でも議論されていたことである。
なお,1F沖に防潮堤を作るという(2字削除)案について,森山審議官からは対策を急がせろなどといった特段の反応はなかった。」
「2010年3月24日付森山審議官が私等にあてた「1F3バックチェック(貞観の地震)」と題するメール(添付資料1)について先ほどの説明に加えて補足する。このメールは,平成22年3月24日に森山審議官が1F3号機のバックチェックに関して寺坂院長(当時)等に説明した結果を伝えてきたものである。
院長等の上層部に対する説明であるので,この日程については事前に決まっていたのだと思う。
私は,添付資料5に関して既に説明したとおり,平成22年3月23日に,森山審議官に対して,1Fにおける貞観津波に関する対策について説明している。森山審議官としては,院長等に対する説明の準備として説明を求めてきたのだろうが,説明者である私には院長等に対する説明が控えているといったことは知らされていない。
院長等に対する説明に同席していたわけではないので,森山審議官が説明した際の院長等の詳しい反応はわからない。」((2)の7-8頁)
「平成23年3月7日付東京電力作成に係る「福島第一・第二原子力発電所の津波評価について」(添付資料12)について説明する。
この資料は,同日,東京電力が貞観津波についての試計算結果を説明に来た際のものである。この資料のうち,「「地震本部の見解に対応した断層モデル」・「869年貞観津波の断層モデル」に対する津波評価について」には津波想定波高が記載されており,よく記憶している。また,この資料については,東京電力から直接説明を受けたことも覚えている。
私は,この資料を見て,1Fにおける津波想定波高が非常に高くなっていると認識した。既に,この時点で1Fにおける津波想定波高が敷地高を超えるという認識は持っていたので,試計算結果を見て,さほど驚くということはなかった。」((2)の12頁)
「東京電力は,貞観津波に関する対策工事は土木学会の津波評価技術の改訂に合わせて実施するという説明をしていた。要するに,平成24年秋に予定されていた津波評価技術の改訂までは対策工事をやらないということであった。
(3字削除)この説明を受け,「それでは遅いのではないか。土木学会による津波評価技術の改訂に合わせるのではなく,もっと早く対策工事をやらないとだめだ」「このままだと,推進本部が地震長期評価を改訂した際に,対外的に説明を求められる状況になってしまう。」とコメントしたことを覚えている。私のコメントに対し,東京電力は「土木学会における津波評価技術の改訂を待って対応する。」との説明をしていた。この時には,これ以上のやり取りはなく,私のコメントにしても単に口頭で,言っただけであり,対策工事を指示をしたというほどのものではない。
私が,これ以上東京電力に対して強く言わずに,東京電力の方針をいわば黙認してしまったのはやはり津波に対する切迫感,危機感が足りなかったからだと思う。
(3行削除)
震災後に,3月7日にした東京電力とのやり取りを名倉と振り返ったことがあるが,このやり取りの中で一番強く印象に残っているのは,やはり東京電力の対策工事が遅いということであった。しかし,3月7日の東京電力とのやり取りについて,私から,課長を含めて上司に報告を上げたことはない。なぜなら,この時も耐震バックチェックの最終報告の際に評価すればよいと考えていたので,この時点では報告の必要性を感じなかったからである。」((2)の12-13頁)
以下は、次回へ。
