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区域外避難者への住宅供与終了の撤回を求め日弁連声明

日本弁護士連合会は、6月26日、「政府に対し、改めて被災者の意向や生活実態に応じて避難先住宅の供与を更新する制度の立法措置を講ずるよう求めるとともに、福島県に対し、十分かつ具体的な支援策が実現しないまま一律に区域外避難者への応急仮設住宅の供与を2017年3月末で終了するとしたことを撤回するよう求める」とする「区域外避難者への応急仮設住宅供与終了の撤回を求める会長声明」を公表した。

区域外避難者への応急仮設住宅供与終了の撤回を求める会長声明

福島県は、2015年6月15日、東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う避難者が入居する応急仮設住宅と民間借り上げ住宅の無償提供を、避難指示区域以外からの避難者(区域外避難者)については、2017年3月末で終了すると発表した。また、福島県は、避難指示区域からの避難者についても、「避難指示の解除の見通しや復興公営住宅の整備状況等を見据えながら、今後判断いたします。」としている。

今回の終了の対象となる避難者の正確な数は明らかでないが、避難指示区域以外からの避難者は3万人を超えると報道されている。仮に2017年3月末で一律に終了した場合、政府が2015年6月12日に公表した福島復興加速化方針の中で帰還政策を打ち出したこととあいまって、区域外避難者に与える影響は計り知れない。

2012年6月に衆参両院の全会一致で可決・成立した子ども・被災者支援法は、「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていないこと」(第1条)を確認し、第2条第2項は、「被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない。」と定めている。

当連合会は、復旧・復興の主体は被災者・原発事故被害者であり、復旧・復興が憲法の保障する基本的人権を回復するための「人間の復興」であるとの認識の下、区域の内外を問わず、事故以降1年間の追加被ばく線量が1ミリシーベルトを超えることが推定される地域の住民には、避難の権利を認めて必要な支援を求めるとともに(2013年10月4日付け「福島第一原子力発電所事故被害の完全救済及び脱原発を求める決議」)、原発事故による避難者に対する住宅提供の期間について1年ごとに延長する現在の災害救助法に基づく支援自体を改めて、これを相当長期化させ、避難者の意向や生活実態に応じて更新する制度等の立法措置を求め(2014年7月17日付け「原発事故避難者への仮設住宅等の供与に関する新たな立法措置を求める意見書」)、区域外避難者への避難先住宅無償提供の終了についても、撤回と、更なる長期の住宅提供を求めた(2015年5月28日付け「区域外避難者への避難先住宅無償提供の終了に反対する会長声明」)。

被災地の復旧・復興をいかに促進するか、避難指示区域以外の地域から避難した者とそこにとどまっている者との関係をどう考えるか等々の困難な問題があるとしても、今回、福島県が、従前の支援に代わりうる十分かつ具体的な支援策等を示すことなく、一方的に住宅供与の終了を発表したことは、上記子ども・被災者支援法の趣旨に反し、区域外避難者の幸福追求権(憲法第13条)及び生存権(憲法第25条)との関係でも極めて問題があるといわざるを得ない。
本来、帰還するか否かは、避難先での生活の実情、子どもの学校生活、家族の就労状況、被災地の現状を踏まえて、避難者が自由に選択するべき事柄である。避難者の生活状況や避難者の意思を無視して帰還を促したとしても、真の復旧・復興は果たされない。

したがって、当連合会は、政府に対し、改めて被災者の意向や生活実態に応じて避難先住宅の供与を更新する制度の立法措置を講ずるよう求めるとともに、福島県に対し、十分かつ具体的な支援策が実現しないまま一律に区域外避難者への応急仮設住宅の供与を2017年3月末で終了するとしたことを撤回するよう求める。


  2015年(平成27年)6月26日
        日本弁護士連合会      
        会長 村 越   進 
by kazu1206k | 2015-06-30 18:58 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k