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東電元幹部、遂に強制起訴へ

 2011年3月の福島原発事故から4年4ヶ月、2012年6月の福島原発告訴団の告訴・告発から3年1ヶ月。7月31日午後、東京第五検察審査会は、東京電力の旧経営陣、勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長、武黒一郎元副社長に対して、業務上過失致死傷罪で「起訴すべきである」と7月17日議決したことを公表した。
 東京電力福島第一原発事故の刑事責任を問う、福島原発告訴団14,716名の告訴は、遂に、東京第5­検察審査会による、東京電力の旧経営陣、勝俣恒久元会長ら3人の強制起訴となり、今後、裁判所が指定する検察官役の弁護士(指定弁護士)によって起訴され、刑事責任を問う刑事裁判が開かれることとなった。
 福島原発告訴団は、東京電力福島第一原発事故の刑事責任を問い、東電元幹部や旧原子力安全・保安院幹部らを含む33人を業務上過失致死傷などの疑いで2012年6月に福島地検に告訴したが、2013年9月東京地検が全員を不起訴処分としたため、2013年10月、東電元幹部だけに絞り勝俣恒久元会長ら6人を東京検察審査会へ審査申し立てた。2014年7月、東京第五検察審査会は、勝俣恒久元会長ら3人に対して「起訴相当」としたが、再捜査した東京地検が本年1月再び不起訴としたため、東京第五検察審査会が再審査して、2度目の起訴議決を行い、強制起訴となった。
 未曾有の放射能汚染と低線量長期被曝をもたらした福島原発事故は未だ収束せず、直接間接の原発事故による多くの犠牲者がうみだされ、未だ11万人余の住民が避難生活を強いられる現状が続くにも拘らず、安倍内閣は「避難指示解除準備区域」「居住制限区域」の指定を2017年3月までに解除し、東京電力の精神的損害賠償も2018年3月に打ち切る閣議決定を行った。復興庁も「原発事故子ども・被災者支援法」の基本方針改定案で「避難指示区域以外からは避難する状況にはなく、支援対象地域は縮小または撤廃することが適当」として、被害者の実情、被害の現状を軽視した、不合理な「被害者きりすて」政策を強要している。福島原発事故の原因究明を放棄したまま、安倍内閣は、脱原発の世論を無視して川内原発の再稼動を強行しようとしており、国外への原発輸出も促進するなど、福島原発事故を顧みない誤った原発推進政策に固執している。
 こうした中で、東京第五検察審査会の議決は、大きな意味を持つ。今後開かれる法廷で真実を明らかにし、福島原発事故の原因を究明し責任の所在を明らかにすること。未だに誰一人として事故の責任をとらぬ、この国の法治国家としての中身を問い直し、新たな民主主義の内容を構築すること。真の被害者救済と人間の復興に道を開くこと。福島原発事故を顧みない誤った原発推進政策と危険を顧みない再稼動を止めること、などだ。
 今後、福島原発告訴団は、裁判の支援活動として、傍聴、記録、広報、支援弁護団の設立など、新たなネットワークづくりに入ることになる。

●起訴議決を受けての団長声明

2015年7月31日
福島原発告訴団 団長 武藤類子


 私たち福島原発告訴団が2012年に14,716人で行った告訴・告発事件について、東京第五検察審査会は本日7月31日、被疑者勝俣恒久、武黒一郎、武藤栄の3名について起訴議決としたことを発表し、3名は強制起訴されることとなりました。
 未だに11万人の避難者が自宅に戻ることができないでいるほどの甚大な被害を引き起こした原発事故。その刑事責任を問う裁判が開かれることを怒りと悲しみの中で切望してきた私たち被害者は、「ようやくここまで来た」という思いの中にいます。
 この間、東電が大津波を予見していながら対策を怠ってきた事実が、次々に明らかになってきています。これらの証拠の数々をもってすれば、元幹部らの罪は明らかです。国民の代表である検察審査会の審査員の方々は、検察庁が不起訴とした処分は間違いであったと断じ、きちんと罪を問うべきだと判断したのです。今後、刑事裁判の中で事故の真実が明らかにされ、正当な裁きが下されることと信じています。
 福島原発告訴団は、この事件のほかにも汚染水告発事件、2015年告訴事件によって原発事故の刑事責任を追及しています。事故を引き起こした者の刑事責任を問うことは、同じ悲劇が二度と繰り返されないよう未然に防ぐことや、私たちの命や健康が脅かされることなく当たり前に暮らす社会をつくることに繋がります。その実現のために、私たちは力を尽くしていきます。これからも変わらず暖かいご支援をどうぞ宜しくお願い致します。

東京第五検察審査会  議決の要旨 
議決書は、以下からダウンロードできます。
https://drive.google.com/file/d/0B6V4ZwGwBEaxUW44STEtcENIb3M/view?pli=1

議決書の別紙
●犯罪事実
 被疑者勝俣恒久(以下「被疑者勝俣」という。)は,平成14年10月から東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の代表取締役社長として,平成20年7月からは東京電力の代表取締役会長として,同社の経営における最高責任者としての経営判断を通じて,被疑者武黒一郎(以下「被疑者武黒」という。)は,平成17年6月から東京電力の常務取締役原子力・立地本部長として,平成19年6月からは東京電力の代表取締役副社長原子力・立地本部長として,同社の原子力担当の責任者として原子力発電所に関する知識,情報を基に実質的経営判断を行うことを通じて,被疑者武藤栄(以下「被疑者武藤」という。)は,平成17年6月から東京電力の執行役原子力・立地本部副本部長として,平成20年6月からは東京電力の常務取締役原子力・立地本部副本部長として,平成22年6月からは東京電力の取締役副社長原子力・立地本部長として,同社の原子力担当の責任者として原子力発電所に関する知識,情報を基に技術的事項に関して実質的判断を行うことを通じて,いずれもその頃,福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の運転停止又は設備改善等による各種安全対策に関する実質的判断を行い,福島第一原発の地震,津波による原子力発電所の重大事故の発生を未然に防止する業務に従事していた者であるが,福島第一原発は,昭和40年代に順次設置許可申請がなされて設置され,我が国では津波に対する余裕の最も少ない原子力発電所とされていたととろ,文部科学省に設置された地震調査研究推進本部(以下「推本」という。)の地震調査委員会が平成14年7月31日に公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」(以下「長期評価」という。)において,三陸沖北部から房総沖の海溝寄りの領域内のどこでもMt(津波マグニチュード)8.2前後の津波地震が発生する可能性があるとされ,原子力安全委員会が平成18年9月に改訂した耐震設計審査指針(以下「新指針」という)では,津波について,施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても,施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないことを十分に考慮したうえで設計されなければならないとされ,原子力安全・保安院は,それを受け,各電力事業者に対し,既設の原子力発電所について新指針に照らした耐震バックチェックを指示し,そのバックチェックルールでは,津波の評価につき,既往の津波の発生状況,最新の知見等を考慮することとされ,他方,それまでの海外の事例や東京電力内で発生した浸水事故等により,想定津波水位を大きく超える巨大津波が発生して原子力発電所が浸水した場合には,非常用の電源設備や冷却設備等が機能喪失し,最悪の場合には炉心損傷等の重大事故が発生する可能性があるととが既に明らかとなっていたところ,平成19年11月ころより,東京電力では,耐震バックチェックにおける津波評価につき,推本の長期評価の取扱いに関する検討を開始した結果,平成20年3月ころには,推本の長期評価を用いると福島第一原発のO.P.(小名浜港工事基準面)+10メートルの敷地(以下「1Om盤」という。)を大きく超える津波が襲来する可能性があることが判明し,それ以降,被疑者武藤においては少なくとも平成20年6月にはその報告を受け,被疑者武黒においては少なくとも平成21年5月ころまでにはその報告を受け,被疑者勝俣においては少なくとも平成21年6月ころまでにはその報告を受けることにより,被疑者ら3名はいず、れも,福島第一原発の10m盤を大きく超える津波が襲来する可能性があり,それにより浸水して非常用の電源設備や冷却設備等が機能喪失となり,炉心損傷等の重大事故が発生する可能性があることを予見し得,したがって,被疑者武藤は少なくとも平成20年6月以降,被疑者武黒は少なくとも平成21年5月以降,被疑者勝俣は少なくとも平成21年6月以降,福島第一原発の10m盤を大きく超える津波が襲来した場合に対する何らかの設備改善等の安全対策を講じることを検討し,何らかの合理的な安全対策を講じるまでの間,福島第一原発の運転を停止すること等も含めた措置を講じることにより,いつか発生する可能性のある大規模地震に起因する巨大津波によって福島第一原発が浸水し,炉心損傷等の重大事故が発生することを未然に防止すべき注意義務があるのにこれを怠り,必要な安全対策を講じることなく,運転を停止することもないまま漫然と福島第一原発の運転を継続した過失により,平成23年3月11日午後2時46分に発生した東北地方太平洋沖地震(以下「本件地震」という。)に伴い,本件地震に起因して生じた巨大津波による福島第一原発の浸水により,全電源喪失により非常用の電源設備や冷却設備等を機能喪失させ,炉心損傷等の重大事故を発生させ,同日以降に生じた水素ガス爆発等により福島第一原発から大量の放射性物資を排出させた結果,別紙被害者目録(省略,以下同様)の番号1ないし13の計13名につき,水素ガス爆発等により生じたがれきに接触するなどして同人らにそれぞれ同目録記載の傷害を負わせ,福島第一原発から約4.5キロメートルに位置する福島県双葉郡大熊町大字熊字新町176番1所在の医療法人博文会双葉病院に入院していた患者のうち同目録の番号14ないし57の計44名につき,前記放射性物質の大量排出に起因して災害対策基本法に基づく避難指示により,長時間の搬送,待機等を伴う避難をさせ,その避難の過程において同目録記載の同人らの既往症をそれぞれ悪化させ,よって,同目録記載の日に同人らをそれぞれ同目録記載による死因により死亡させたものである。
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by kazu1206k | 2015-07-31 23:37 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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