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汚染水告発の不起訴理由説明、福島地検

 福島原発告訴団が告発した、東京電力福島第1原発放射能汚染水海洋放出事件について、福島地方検察庁(以下、福島地検)は不起訴処分を行い、4月7日、福島地検で福島原発告訴団に対して「不起訴理由説明会」を開いた。告訴団からは正副団長はじめ県内外の告発人と弁護団の河合弁護士が参加し、福島地検の吉武斉彦検事が不起訴理由を説明して、質疑に応じた。

 本件は、2013年9月3日に東京電力元幹部武藤栄ら32名と法人としての東京電力株式会社を「人の健康に係る公害犯罪の処罰に関する法律(公害罪法)」の被疑事実で刑事告発した事件。福島県警が昨年10月2日、公害犯罪処罰法違反容疑で、広瀬直己東電社長や勝俣恒久元会長、武藤栄元副社長ら新旧経営陣32人と、法人としての東京電力を福島地検に書類送検し、福島地検が3月29日、これを不起訴処分とした。 

 告発は、汚染水貯蔵タンクの監視や漏えい防止措置を怠った結果、2013年7月までに応急仮設タンクから約300トンの汚染水漏洩、引き続いて海洋環境への漏洩を引きおこし、これを速やかに検知して漏出を早期に食い止めることができず、事業場における事業活動に伴って人の健康を害する物質を大量に排出した疑い。さらに東京電力が、2011年6月政府から検討を求められた原子炉施設を囲む遮水壁の設置について、経営破綻を危惧して問題を先送りにし約2年間にわたり、抜本的対策を講ずることなく放置、危機的な状況を政府規制担当者らに説明せず、これまで1日当たり300~400トンの汚染水を海へ流出させた疑いだ。

 これに対する福島地検の説明は、以下の通りだ。
1.溶接型タンクから漏えいさせた件について、 廣瀬社長ら4名と法人としての東京電力を嫌疑不十分、ほか28名を嫌疑なし、
2.遮水壁先送りにより被害を拡大させた件について、勝俣元会長ら6名と法人としての東京電力を嫌疑不十分、ほか26名を嫌疑なし、とした。
 福島地検は、公害罪の成立要件として、
①有害物質の排出②危険の発生③事業活動に伴う排出④過失、
の4点を挙げ、一部でも要件が立証困難である時点で不起訴だが、本件の性質に鑑み、念のために、他の要件につき更に検討したとしている。
 その処分理由の趣旨を、次のように説明した。
1、汚染水貯蔵タンクから漏えいについて、排出、危険の発生について立証困難とし、「排出の過程」とはいえず「事業活動に伴う排出 要件を満たさない」とし、「貯蔵タンクの堰の排水弁の閉止」や「漏えいを確実に検知する対策の実施」など結果回避義務を一部認める余地はあるが、予見可能性が立証困難で、過失を立証することは困難。
2、遮水壁先送りについて、建屋周辺地下水の放射性濃度は滞留水に比べて極めて低濃度で、滞留水漏洩を疑わせるだけの高濃度放射性物質は検出されていない、「排出」の証拠がないから「危険」の発生も立証困難とし、これまた「事業活動に伴う排出 要件を満たさない」とし、汚染水の海洋流出防止のためには、海側遮水壁を設置すれば十分で陸側遮水壁設置を回避義務として課すことは相当でない。
 このように福島地検は、汚染水貯蔵タンクからの漏えいは汚染水の海への「排出」に至っていない、遮水壁先送りも原子炉建屋の滞留水が水封され貯留しているため「排出」と「危険」を立証する証拠もない、従って嫌疑不十分または嫌疑なし、という処分理由を説明した。

 この説明に対して、概要次のような質疑が行われた。
Q海側遮水壁で十分と書かれているが?
A昨年の10月まで海側が開いていたことは承知している。告訴団から告発の内容にはなかったが、「捜査はした」。でも、問えないという結論になった。建屋の滞留水が海まで出ているとは認められなかった。地下にしみこんだ水が海まで行くのは相当の時間がかかる。
数10年かかるとの、専門家の意見がある。

Qどこのデータか?
A捜査上のことで言えない。

Qなぜ、海側遮水壁だけしか認めないのか?凍土壁は建屋に地下水が流入することを減らす目的で行った。結果回避義務にあたる。地下水が入ってくるのを防がずに、出るところだけを防ぐというのは全体としておかしいのではないか?入ってくるのを問題にしないのはなぜか?
A捜査は汚染水対策について、対策全般の妥当性を判断するのではなく、判断したのは、刑事責任を問えるかどうかだ。結果回避義務を課すのか、他の手段はあるのか?弊害はなど。最低限のことをしていれば防げた、どの点に義務違反があったかで考えた。

Q検察は陸側遮水壁がなくても漏えいしない、やっても意味が無いというのか?
A刑事責任が問えるかどうか。汚染水対策全般を判断していない。

Q地下に汚染が行っているのかの証拠を開示してほしい。
A「処分結果」の第1のaからdのように状況証拠はあるので、認定はしたが、裏付けがとれない。事故で放出された放射能と、もともと自然界にあるものが合わさっている。
事故で放出されたものか?タンク由来か?建屋由来か?特定ができない。
3-1に書いたように最高裁判例があるので、「排出する事業しか、適用しない」

Q建屋由来のものではないと断言するのか?
A断言するつもりはない。放射能は広がっている。事故時に落ちたものが、雨水で広がったのか、高濃度のものが土壌に浸透したのか地下水はいろんな可能性がある。海に出ているのは滞留水とはいいきれない。

Q代理人はその法解釈が間違っていると考えるので、検審に申立をする。

Qタンクの設置状況の立地の悪さから、タンクからの漏えいは予見可能ではないのか?
A刑法上のレベルでは難しい。

Qタンクの納品時、品質は保証できないと業者がいったり、現場の作業員もこれでは危険だと言っていた。そのことについて、捜査をしたのか?
A答えられない。

Q強制捜査はしたのか?
A必要な捜査はしている。

Q完璧な水封はされていない。東電自身が「告示濃度を超えて、流出している」と公表している。会社が認めているのに、問えないのか?法人としての東電も告発しているのだが。東電が自白しているということだ。
A会社がそう言ったとしても、両罰規定なので。
原発事故由来か?タンク由来か?建屋由来か?わからないから。
公害罪法で問うには、特定しないといけない。なんとか罪を問えないかとも考えたができなかった。告発された以外のことも捜査したが起訴はできなかった。

Q2年待って、海側が閉じるのを待っていて、不起訴を出したのか?
A警察の捜査があってからだったので。そういうわけではない。

Q今までになかった原発事故が起こった。今まで大丈夫だったからでは通用しない状況だ。
A法制度はねじ曲げられない。

 福島地検の「はじめに結論ありき」の捜査姿勢が如実にでた説明であり、強制捜査も含めて捜査が尽くされたのか、依然として大きな疑問が残る説明であった。
 最後に、告訴団弁護団の河合弁護士から、本件不起訴処分について、法解釈の誤りがあり、到底承服できないことから、検察審査会へ申し立てる旨の発言が行われた。
 
 汚染水の海洋流出は、海側遮水壁が閉合されなかったために、5年間も続いてきた。少なくても昨年10月26日の海側遮水壁が閉合以前は流出がつつき、これを放置してきた事実は隠すことはできない。現在でも汚染水は遮水壁の下を抜け、一方では雨水と共に流れ、昨年10月依然より少なかろうと海洋流出が続き流出防止は実現していない。唯一の汚染水の海洋流出防止策は、建屋四方を囲む恒久遮水壁を作ること以外にない。漁業者はじめ多くの福島県民、周辺住民、海に生きる多くの人々、海洋の生きとし生けるものにとって、放射能汚染水の海洋放出は許されざる行為である。
汚染水告発の不起訴理由説明、福島地検_e0068696_1092423.jpg










 
by kazu1206k | 2016-04-08 22:41 | 脱原発 | Comments(0)