福島検察審査会に申立、汚染水海洋放出事件
2016年 04月 13日
福島原発告訴団は、福島市市民会館へ移動して、福島検察審査会申立行動について、記者会見&報告会を行った。
佐藤和良副団長が4月7日の福島地検による不起訴理由説明会を報告。
福島地検は、公害罪の成立要件として、①有害物質の排出②危険の発生③事業活動に伴う排出④過失、の4点を挙げ検討したが、汚染水貯蔵タンクからの漏えいは汚染水の海への「排出」に至っていない、遮水壁先送りも原子炉建屋の滞留水が水封され貯留しているため「排出」と「危険」を立証する証拠もない、従って嫌疑不十分または嫌疑なし、という説明。福島地検は「はじめに結論ありき」の捜査姿勢だ、強制捜査も含めて捜査が尽くされたのか、依然として大きな疑問が残る。汚染水の海洋流出は、少なくても昨年10月26日の海側遮水壁閉合以前は続いており、これを放置してきた事実は隠せない。現在でも流出防止は実現していない。漁業者はじめ多くの福島県民、周辺住民、海に生きる多くの人々、海洋の生きとし生けるものにとって、放射能汚染水の海洋放出は許されないと、報告した。
「1 排出と危険の発生について
検察官は,放射性物質を事業場の構内から海に出すことが排出であるとし,タンクから漏れた漏洩水は,地下水が海に達するのは時間がかかり,また,排水路経由で流出した可能性は否定できないとしつつ,立証が困難とした。厳格な立証を要求することで,東電とその役員を免罪している。」
「3 過失の成否について
2)堰の排水弁の閉止について
堰の排水弁の閉止については,検察官は結果回避義務を課す余地はあるとして,次のように判断している。
「排水弁を通常時に閉止しておくと,堰内に雨水がたまり目視での漏えい発見が困難になる弊害等は認められるが,同弊害等は限定的なものであったとの評価も可能である」とし,閉止しておくという義務を課す余地はあったとしている。過失責任を問う前提があるとしていることは重大である。
3)漏えいを確実に検知する対策の実施について
漏えいを確実に検知する対策の実施についても,検察官は,「これらは,実施が可能で,微少漏えい発生後,比較的早期に検知し,排出量を可能な限り低減させることにより「排出」に至る危険性を除去するための有効な手段であると言える」として,結果回避義務を課す余地ありとしており,このような対策を講じなかった東電役員と東電の過失責任を,ほぼ認めているといえる。
結果の予見可能性についても,「平成24年1月及び2月に合計3件の微少漏えい(にじみ,滴下)事象が発生していたことから,当時,タンクからの微少漏えいが予見できたことは認められる」としている。
検察官は,フランジ型タンクは広く一般に使用されており,福島第一原発でも,本件事故まで2年以上運用され,その数も本件事故当時は305基にまで増加していたなどから予見が困難としているが,前述の通り,事故後の一定期間の緊急時が終了したあとは,新設も溶接型に切り替え,その直後からフランジ型のタンクは直ちに溶接型のものに更新をはじめていれば,このような多数のフランジ型タンクを設置することにはならなかったはずで,このようなタンク設置方針そのものが,同社の過失そのものなのである。
検察官は,結果回避義務だけを切り離して検討すれば一部認める余地はあるものの,予見可能性が立証困難であることから回避義務は課し得ないとするが,このタンクは仮設タンクであり,放射性物質を長期にわたって保管できるものでないことは,作業に携わったもの全体の共通理解だった。このことは,後に詳述するとおりであり,予見可能性は十分にあった。東電と役員の過失は明らかである。」など詳細に説明した。
申立書の結論は、以下の通り。
「汚染水が大量に海洋に漏洩していたにもかかわらず,このことが国民とりわけ福島県民には国政選挙終了まで知らされていなかった。事故の早期の収束を願ってきた福島県民・日本国民の願いは踏みにじられ,復興に立ち上がろうとする被害者の心を折るものと厳しく批判されている。
検察官は,「本件活動は滞留水の封込めといえるから『排出の過程』とは言えない」という驚くべき論法を持ち出した。しかし,完全な封込めなど実現できておらず,告示濃度を上回る漏洩が継続してきた。海側遮水壁を封鎖し,トレンチからの流出を止めたのは平成27年(2015年)であり,サブドレン,地下水ドレンでは高濃度の汚染データがでている。
汚染水に含まれる放射性物質は膨大であり,太平洋全体の汚染が懸念されている。この汚染水の漏洩は,事故収束と汚染水管理の責任を負っている東京電力・同社役員が必要な初歩的な注意義務を怠り,無策のまま,対策を先送りしたことによるものであり,公害罪法違反の犯罪である。東京電力が,事業活動に伴って人の健康を害する物質を排出したことは明らかであり,責任を負うべき役員たちと法人の刑事責任は法廷で問われるべきであると考え,本申し立てに及んだ。」