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被害者の人権回復、脱原発を目指す宣言–日弁連総会

日本弁護士連合会は、5月27日、第67回定期総会で、被災者の生活再建の支援や十分な賠償の実現と健康保持への支援、再発防止のための損害賠償制度の充実等を「国及び電力会社等に求めるとともに、東日本大震災及び福島第一原発事故の被災者・被害者の基本的人権の回復と二度と原子力事故を引き起こさないために、引き続き、全力で取り組む」として、「東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の被災者・被害者の基本的人権の回復への支援を継続し、脱原発を目指す宣言」を採択した。以下に掲載。

東日本大震災・福島第一原子力発電所事故の被災者・被害者の基本的人権の回復への支援を継続し、脱原発を目指す宣言

東日本大震災及び福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)事故発生から5年が経過した。

当連合会は、これまでも、被災地を中心に被災者及び福島第一原発事故被害者のための法律相談を行い、「人間の復興」の観点から、数々の支援と立法提言活動を行ってきた。

しかし、震災発生から5年を経過してもなお、全国で避難生活を送り続ける人々の数が17万人を超え、復旧・復興が進んでいるとはいえず、一人一人の被災者及び被害者の抱える問題が、複雑かつ深刻になっている。その一方で、福島第一原発事故の教訓に学ばず、原発の安全性の確認が不十分なまま再稼働が優先され、原子力事業者の損害賠償責任を限定しようとする動きさえも見られる。

当連合会は、震災及び福島第一原発事故発生から5年が経過した現在、人々の生活再建及び被災地の復興が道半ばであること、一人一人の被害に対応したよりきめ細かな支援が必要とされていることを改めて認識し、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする法律専門家団体として、引き続き、被災者及び被害者に寄り添い、支援活動を継続するとともに、原発事故の再発防止に取り組むことを宣言する。特に重要な課題を以下に示す。

第一に、被災者の生活再建の支援について、被災者生活再建支援法をはじめとする現行の支援制度では、個々の被災者の個別具体的な救済策としては不十分であることから、住宅被害のみならず生活基盤全体の被害を基礎とする制度に改め、支援制度を拡充するとともに、被災者生活再建支援員などを配置する人的支援をも行い、個別のきめ細かな支援策を計画して実行する仕組みへと改正されるべきである。

第二に、震災及び福島第一原発事故による震災関連死として認定された死者数は3400人を超え、なお増加している。これは、避難生活の過酷さを示すものである。震災関連死について、各自治体が実施している認定審査は公平かつ適正に行われる必要があり、また、災害弔慰金制度の趣旨にのっとってできる限り支給される方向で認定されるべきである。自治体間での取扱いに差があるとの指摘もあり、今後、公平な審査が行われていくために、これまでの認定例が公表されるべきである。

第三に、福島第一原発事故について、引き続き、東京電力ホールディングス株式会社に対し、避難指示の解除等を理由として、賠償の早期打切りを図るのではなく、被害の実情に即して、必要かつ十分な賠償を行うよう求める。とりわけ、原子力損害賠償紛争解決センターの和解案の受諾を長期にわたり拒否する例があるが、和解案を尊重し受諾するよう求める。

また、国に対しては、福島第一原発事故被害者の良好な生活環境の確保や、健康維持のための支援策の実施を求めていく。とりわけ、避難指示区域以外からの避難者の入居する仮設住宅等(民間借り上げ住宅等のみなし仮設住宅、公営住宅を含む。)について、総合的に支援する新たな立法措置を採ること、福島第一原発事故被害者の健康への影響を最小限に抑えるため、健康診断を継続的に実施し、医療費を減免する措置を採ること、子どもたちが心身の健康を回復するために、定期的に保養の機会を供する措置を採ることを求める。

第四に、原発事故における原子力事業者の損害賠償責任の有限化を求める動きが見られるが、原発事故の再発を防止するため、国に対し、原子力事業者の無過失・無限責任を堅持し、損害賠償がより実効性のあるものとなるよう求めていく。

第五に、原発再稼働について、原子力規制委員会が策定した規制基準では安全は確保されないので、運転(停止中の原発の再稼働を含む。)は認めず、できる限り速やかに、全ての原発を廃止することを国に求める。併せて、これまでの原子力施設立地自治体が原子力施設依存から脱却し、自立していくことへの支援を行うことを国に求めていくものである。

以上のとおり宣言する。
以上

2016年(平成28年)5月27日 日本弁護士連合会
被害者の人権回復、脱原発を目指す宣言–日弁連総会_e0068696_9201696.png

by kazu1206k | 2016-05-28 23:04 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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