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汚染水、福島検審に2357人が第2次申立

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 6月15日午前、福島原発告訴団は、福島検察審査会に対して、東京電力福島第1原発放射能汚染水海洋放出事件について、追加の2357人による第2次申立と起訴相当の議決を求める上申書(2回にわけて掲載)を提出した。
 第2次申立は、福島原発告訴団が当初6月22日に予定していたが、福島検察審査会の要請により、急ぎ6月15日に行ったもの。
 また、起訴相当の議決を求める、新たな上申書では、事故後にすみやかにスラリー壁を建造しなかったことが汚染水対策混迷の根本であることをふまえ、汚染水の拡散・増加の実情、アメリカでの事故時の事業者責任追及の厳しさとアメリカでの原発汚染水の監視の現状、地検不起訴理由におけるフランジ型タンク設置や地下水が海に達するまで相当の期間を要するとの認定や原子炉建屋内の滞留水の水封など、初歩的な科学的誤謬を指摘している。
 そのうえで、「この汚染水の漏洩は、事故収束と汚染水管理の責任を負っている被疑者らが必要な初歩的な注意義務を怠り、無策のまま、対策を先送りしたことによるものです。まさに公害罪法違反の犯罪」として、「福島の人々の生命・健康を守るために、被疑者らを起訴し、責任を問うことが必要なのです。審査員の皆様が,福島の人々の運命を握っています。審査員の皆様には,公正かつ徹底した審理をして頂けると期待しています。」として、起訴相当の議決を強く求めている。(2回にわけて掲載)
 福島検察審査会は議決を急いでいるように見えるが、わずか3カ月で、起訴の是非の判断ができるのか。汚染水問題が深刻さを増す中、トリチウム汚染水2500兆ベクレルもの海洋放出計画が福島県民、漁業者に押し付けられようとしている。このような中で、事件は幕引きは許されない。あきらめず、起訴相当の議決を強く求めるため、告訴団は、6月22日に「東電 汚染水問題」集会&デモを福島市内で行う予定だ。13:30に福島市市民会館・第2ホールに結集を呼びかけている。


福島検察審査会
平成28年(申立)第6号審査事件

上申書(2)
―申立書の補充―

                               
平成28年(2016年)6月15日
福島検察審査会 御中
申立人ら代理人 弁護士 河合 弘之
                  同   弁護士 保田 行雄
                  同   弁護士 海渡 雄一
                  同   弁護士 甫守 一樹
                  同   弁護士 大河 陽子

上申の趣旨

申立人らが,申し立てている東京電力とその幹部らによる公害罪法違反事件に関する検察審査会審査申し立て事件については,申立書において起訴すべき理由を述べたところですが,以下に述べるように明らかに起訴することを相当とする多くの事情がありますので,これらの点をご説明し,証拠を提出し,起訴相当の議決をされるように強く求めます。


上申の理由

第1 事故後にすみやかにスラリー壁を建造しなかったことが汚染水対策混迷の根本であること

1 日弁連人権大会でのシンポジウム
日本弁護士連合会は,平成27年(2015年)10月1日,第58回人権擁護大会シンポジウム第3分科会において,「放射能とたたかう~健康被害・汚染水・汚染廃棄物~」と題し,本件被疑事実に関わる福島第一原発事故における汚染水問題についてのシンポジウムを開きました。
本項において,申し立て時に提出したこのシンポジウムの基調報告書(以下「基調報告書」という。)(甲31)及び同シンポジウムの別冊資料集(以下「資料集」という。)(甲32)等に基づいて,申し立て書を補充します。

2 混迷が続く汚染水対策
基調報告書第2章(75頁以下)では,「福島第一原発事故に由来する汚染水対策等及び労働者被ばくについて」と題し,本件告発に係る問題点が詳細に記載されています。
基調報告書90頁に,福島第一原発の汚染水の漏えいに関し法令に基づいて原子力規制委員会に報告のあった11件の事象が記載されており,規制委員会の発足から平成27年(2015年)5月までの間,2,3か月に1回の頻度で報告事項に該当するトラブルが発生していることが分かります(なお現在は,これに平成27年(2015年)9月15日の汚染水タンクエリア堰内水漏えいが加わり全部で12件となっている)。
基調報告書100頁には,平成23年(2011年)3月11日以来の汚染水問題の一連経緯が記載されているので参照していただくと,福島第一原発の汚染水問題とは,数々の不手際・不祥事の積み重ねであることが分かります。

3 凍土壁工法の問題点
基調報告書105頁には,現在東京電力と経済産業省が進めている凍土壁工法の問題点がまとめられています。
凍土壁とは,地下水が建屋に流入することを防止するために,建屋の周りを1.5キロメートルにわたって,1メートル間隔で約1500本の凍結管を埋め込むなどして周囲の土を凍結させ,地下水が建屋に流入することを防ぐ,いわゆる陸側遮水壁を構築するための工法として採用されたものです。凍土壁工法は,汚染源を水に「近づけない」対策の柱とされています。
しかし,凍土壁工法には以下の問題点があり,その意義は乏しいものです。
なお,凍土壁工法の問題点については,資料集34頁以下の浅岡顕名古屋大学名誉教授(元地盤工学会会長)のプレゼンテーション資料「福島イチエフでの凍土壁の有効性を問う―恒久的遮水壁の構築が急務―」を参照してください。

(1)実現可能性に疑問
凍土壁工法は小規模な実験が行われたのみで,福島第一原発で予定されているような大規模・長期に及ぶ工事は前例も実証もありません。
しかも,熱源となっている多数の埋設管の存在や地下水流の影響等で凍結が困難な可能性があります。
さらには,地中のがれきや埋設管の影響により鉛直(重力の方向)埋設精度が低く,凍土壁が隙間だらけとなり止水できない可能性もあります。
現在も凍土壁は凍結できない状況が続いています。平成28年(2016年)5月16日の会見では,東京電力原子力・立地本部の白井・岡村両部長代理が,凍結は約束していなかった旨を述べるに至っています(添付資料2 まさのあつこ 「F1凍土遮水壁はどうなっているのか(2) 2016年5月16日会見」)。凍土壁を担う東京電力自身が凍土壁の実現可能性を確約しないという無責任な態度に出たのです。
加えて今月2日(平成28年(2016年)6月12日)には,原子力規制委員会の更田豊志委員長代理が,東京電力に対して,「『壁』と呼んでいるけれども,これは最終的に壁になるのか。壁じゃなくて『すだれ』のようなもので,ちょろちょろと水が通るような状態」と批判する事態に陥っています(添付資料4 2016年6月12日産経新聞)。
このように凍土壁の実現可能性には大いに疑問が生じています。

(2)凍土壁工法は無用なコストと作業員の被ばくを引き起こす
   凍土壁は本来仮設の構造物であり,仮に凍結できたとしても,将来的には解凍することを予定しています。凍土壁が採用された当初,凍土壁は,建屋内部のドライアップ(建屋内汚染水をすべて汲み上げて地下水流入抑制すること。東京電力 「建屋内の汚染水管理について(地下水流入抑制のための止水技術)2013年10月2日」より。)と止水工事を完了し建屋内部への地下水の流入を止めた後に,解凍する予定でした。
   しかし,建屋内部から水を抜いてしまえば水による放射性物質の遮蔽効果が失われ,放射性物質が空気中に浮遊・拡散し,空気中での放射線環境は急激に悪化します。現段階ではドライアップも止水工事も目途が立っていないのです。
   また,凍土壁は,維持メンテナンス費用や冷却液の循環のための電気代など膨大なランニングコストがかかることもあり,長期の使用には向きません。
   以上のとおり,凍土壁工法の採用は,無用なコストと放射性物質の浮遊・拡散による作業員の被ばくを伴うものであり,汚染水漏洩防止として不適切です。

4 ロードマップ改訂―建屋内への流水量の抑制計画に変更
平成27年(2015年)6月改訂のロードマップでは,ドライアップは放射線被ばくのリスクを高めることであり,止水工事は不可能であることから,「止水」ではなく,凍土壁によって建屋内への流入量を100t/日まで抑制するとし,廃炉まで解凍しない計画に変更されつつあります。
しかし,凍土壁の維持継続の困難さと,作業員の被ばく問題や凍土壁の維持管理費用等の人的,コスト的負担の大きさを考えれば,地下水の流入量をいくばくか抑制することを目的とし,廃炉が完了するまで凍土壁の維持と地下水位の管理をし続けるという考えには一片の合理性も認めることはできず,無策というほかありません。

5 凍土壁工法には莫大な税金(およそ345億円)が注ぎ込まれている
資料集54頁に記載されている通り,スラリーウォールやECウォールなど,従来の工法によって,凍土壁工法より低費用で高い止水効果を実現することができたはずなのです。日本弁護士連合会は,凍土壁のような仮設の構造物ではなく,コンクリート地中連壁などの既存技術による恒久的遮水壁へ切り替えるよう求めています(甲31 基調報告書98,110頁)。
凍土壁工法という明らかに不合理な選択がされた理由は,東京電力が自らの費用負担における陸側遮水壁を建設しないでいたところ,大量の汚染水漏れが発覚し,東京オリンピックへ向けて事態の収拾を図りたい国が乗り出して国費を支出するため,従来技術ではない「チャレンジング」な新技術の研究開発支援名目が必要だったからなのです(甲31 基調報告書102,105,110頁)。東京電力の尻拭いのために,血税が極めて非効率な形で投入されているのです。怒りを通り越して呆れるような話なのです。

6 止まらない海洋汚染
陸側遮水壁が現在に至っても完成していないことにより,海洋汚染は現在も続いています。
基調報告書89頁記載の通り,福島第一原発付近での沿岸では,セシウム137の放射能濃度は,事故前の100倍程度で高止まりしています。
また資料集17頁に記載された原子力コンサルタント佐藤暁氏の試算によると,福島第一原発事故によって放出された放射能量は,平成25年(2013年)10月までで,汚染水によるものが大気放出量の約10倍に上り,チェルノブイリ原発事故の放出量をはるかに上回っているといいます。福島漁業者への打撃は測り知れず,補償を行えば済む問題ではありません。
今後,大規模な地震や津波等が福島第一原発を襲えば,サイトに蓄えられた大量の汚染水が流出し,さらに汚染が拡大するおそれもあります。

7 速やかに恒久的遮水壁を建設しないことが現在の迷走を招いた
これまでも繰り返し述べてきたとおり,被疑者らが当初予定した通り陸側遮水壁を建設していれば,汚染水の流出は回避ないし相当程度軽減することが出来たのです。既存の技術による陸側遮水壁の計画は平成23年(2011年)4月段階から存在し(甲31 基調報告書98頁,101頁),同年6月14日に公表することが予定され,想定問答集まで作成されていました。東京電力自らが行うのであれば,凍土壁工法のような「チャレンジ」をする理由がないので,従来工法により,凍土壁よりもはるかに低費用で高い止水効果を実現することが出来たはずです(甲31 資料集54頁参照)。
東電の平成23年(2011年)6月13日付内部資料「福島第一原子力発電所地下バウンダリの基本仕様について」に別紙として添付された「地下バウンダリの基本仕様について」という資料(甲16の1)には,以下のような記載があります。

2.地下バウンダリを設置する目的
  ○地下を通じた放射性物質の拡大による海洋汚染を防止すること。
  ○高濃度の滞留水がこれ以上海洋に流出させないために,「後追いにならない備え」とすること。

つまり東京電力は,平成23年(2011年)6月の時点で,後手に回った汚染水対策を反省し,早期に陸側遮水壁を建設しない場合,将来大量の汚染水が海洋に流出することを当時から予見していたのです(甲33 木野龍逸著「難航する汚染水対策―問題の先送りが事態を深刻にしていく」『科学』2014年8月号848頁)。そうでありながらこの計画を撤回した理由は,遮水壁の費用が1000億円レベルとなる可能性があり,これを公表して市場から債務超過に近づいたという評価を受けることをおそれたからなのです(甲31 基調報告書101頁)。対策工事費用が多額に上ることから財政状態の悪化をおそれて計画を撤回,問題を先送りし,徒に被害を発生・拡大させる構図は,福島第一原発事故前の被疑者らの津波対策とまったく同じです。

8 小括
本被疑事実は,その態様の悪質さや被害の深刻さからすれば,被疑者らの刑事責任は重く,起訴をしないという選択はあり得ません。すみやかに審査会は起訴相当の議決をするべきです。

第2 汚染水の拡散・増加
1 汚染水によって放出された大量の放射性物質
佐藤暁氏の試算によれば,津波として建屋内に浸入した大量の海水に混じり,平成25年(2013年)10月現在までに福島第一原発1~3号機の原子炉に注入された海水と淡水により破損燃料から抽出された放射性物質の量は,Cs-134(セシウム134)とCs-137(セシウム137)がそれぞれ71,000TBqと150,000TBq,Sr-90(ストロンチウム)が58,000TBq,H-3(トリチウム)が400TBqに及びます。ちなみに塩分も5,100トンに達します。
これらを大気中に放出された放射性物質の量と比べると,例えばCs-137においては丁度一桁上回り,実にチェルノブイリ事故が撒き散らした量をもしのぐのです。
その濃度は,29,120トンを処理した2011年7月26日の分析においては1,760kBq/cm3を示しました。これが粗半値の830kBq/cm3に薄まるには同年10月25日までの日数を要し,汎用のホースを通して140,020トンが法令に適合しない仕様のタンクに移送され貯えられました。更に380kBq/cm3となったのは同年暮れの12月27日で,この日までの貯水量は192,110トンとなります。
そして,それまでにも既に何度か漏出を経験しています。ある時はホースの継手から,別のある時は割れたホースから,更に別のある時はうかつにもタンクを溢れさせ,そこかしこに漏らしたのです。
ちなみにこのような濃度の意味する意味を以下より理解できるかと思います。
原子力規制委員会の定める線量限度等を定める告示の中に,周辺監視区域の外に放出する際の許容濃度が示されています。その別表第一において,気中濃度に対しては第五欄,水中濃度に対しては第六欄に許容濃度の数値があります。たとえば,トリチウム(H-3)について読み取ると,気中濃度0.005Bq/cm3,水中濃度60Bq/cm3です。ストロンチウム(Sr-90)に対しては格段に厳しく,気中0.000006Bq/cm3,水中0.03 Bq/cm3となり,セシウム(Cs-137)に対しても気中0.00003 Bq/cm3,水中0.09 Bq/cm3です。したがって,仮に濃度380kBq/cm3のセシウム(Cs-137)で汚染した水をわずか1リットルだけ海に放出するとしても,これをあらかじめ4,200トン以上の大量の清浄な水で希釈しなければ,同告示の基準に違反することになります。東京電力が初期において頻繁に漏らした汚染水の量がこのような少量であった事はなく,著しく大量を太平洋に流出させたのです。特に平成23年(2011年)4月1日から6日までの期間には520トンもの大量の高濃度汚染水が希釈されないまま垂れ流され,これに4,700TBqが含まれていたとの報には絶句せざるをえませんでした。なぜなら,琵琶湖2杯分の水で希釈されて初めて告示の許容濃度となる程の放射能量だったからです。
このような我が国での異常には,日付変更線を跨ぎ,東8,000kmの彼方に大陸の西岸があるアメリカの諸機関も注目しました。例えばアメリカ合衆国商務省海洋大気庁(NOAA)は,早々のうちから海流(黒潮)に乗った放射性物質の拡散と輸送の様態を解析し,2,3年のうちに辿り着くとの予想を示しました(佐藤暁氏も2012年にその予想図を入手)。結果として,平成26年(2014年)11月,海洋調査機関WHOIが,アメリカのカリフォルニア州沖合150kmにおいて福島原発事故由来の放射性セシウムを検出したと発表しました。さらに翌年2月には,カナダのブリティッシュ・コロンビア州のバンクーバー島沿岸でもその到着を確認しました。
もっとも,その濃度においては1.4Bq/m3(Cs-134),5.8Bq/m3(Cs-137)という希薄さではありましたが,ここで重要なのは次の2点です。第一に,これほどの希薄な濃度でも測定しようと試みれば,大量の試料に対し長時間の測定を行なう事により可能となる事です。第二に,Cs-134とCs-137の比を知ることで発生時期を逆算し由来の判定が可能となる事です。すなわち検察官が立証困難の理由とした,「検出限界未満」,「由来不明」とは,単にきちんと測定しようと努めていないからに他なりません。なお,ノルウェーの環境調査機関は,アメリカ西海岸の濃度がピークを迎えるのは平成30年(2018年)で,影響が少なくとも平成38年(2026年)までは続くと述べています。

2 増え続ける汚染水
続いて翌平成24年(2012年)12月18日までに処理された汚染水は527,430トンとなり,松林が伐採され整地された敷地には数え切れないタンクが並んでいます。放射能濃度は59kBq/cm3まで低下しましたが,その後の濃度低下は緩慢となり,平成25年(2013年)7月9日になっても測定結果は54kBq/cm3を示しています。このことは驚く事ではありません。既に初期の超濃厚な汚染水が汲み上げられ,破損燃料に触れてこれより低いレベルの汚染水に置換され平衡状態に達したからです。同年9月24日までに処理された汚染水の体積は747,290トンとなり,その後も増え続けています。

2回目、以下に続く
http://skazuyoshi.exblog.jp/24461569/

汚染水、福島検審に2357人が第2次申立_e0068696_81142.png

by kazu1206k | 2016-06-15 22:22 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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