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甲状腺検査の継続と拡充を県知事に要望

 10月7日、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)は、福島県県民健康調査課を訪れ、「県民健康調査の甲状腺がん検査は縮小せず、広く県民に周知して拡充、継続すること」など、『県民健康調査の目的に沿った調査と検査の継続と拡充を求める』福島県知事宛ての要望書を手交しました。
以下に要望書を掲載します。

福島県知事 内堀雅雄 様

要 望 書

2016年10月7日
           原発事故被害者団体連絡会
             共同代表 長谷川健一  
              同   武藤類子

 県民健康調査の目的に沿った調査と検査の継続と拡充を求めます。

 県民健康調査の目的は「東電福島第一原発事故による放射性物質の拡散や避難等を踏まえ、県民の被ばく線量の評価を行うとともに、県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、もって、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図る」と要綱に記されています。

 9月14日の第24回「県民健康調査」の検討委員会で、2巡目の健診で悪性または悪性疑いと診断された子どもは、前回より2人増え59人、また手術をして甲状腺がんと確定したのは4人増え34人となり、1巡目と2巡目をあわせた数は、甲状腺がんの悪性または悪性疑いが174人、手術を終えた人が136人で、1人をのぞく135人が甲状腺がんと確定したと発表されました。

 これに先立つ8月25日、福島県小児科医会は現行の甲状腺検査によって「被験者、家族のみならず一般県民にも不安が生じている」とし、同意を得られた人のみの検査とするよう、規模の縮小を求めて福島県に要望書を提出しました。それに対して「311甲状腺がん家族の会」や国内外120を超える市民団体からは、検査を縮小せず、むしろ拡充してほしいという要望書が提出されました。
 上記小児科医会の要望書提出のニュースの後で、当団体より検査の縮小に関して県民健康調査課に問い合わせたところ、県としては縮小の方向では考えていないとの回答でしたが、福島県からの「甲状腺検査のお知らせ」には3巡目の検査から検査の同意書に「同意しません」という欄が新たに設けられており、また、「検査1回目の受診の有無や検査結果にかかわらず、受診することをおすすめします」という文言も削られていました。小児科医会が縮小を要望する前に、福島県としても縮小の方針が立てられていたかのような案内です。

 しかし、第24回検討委員会では、委員の多くから「二巡目の検査の評価が出るまで検査縮小の議論はすべきではない」「チェルノブイリの例では4,5年から低年層の甲状腺ガンが急増することが観察されているので、実はこれからだ」「この検査は非常に特殊な事態の中で、非常に意味のある調査である」「最初は放射線の影響は考えにくいという報告をしたが、今は懸念がある。放射線の影響を考慮しながら検証していくべき」などの意見が述べられ、検査の拡充と継続が確認されました。

 9月26日、27日は日本財団主催の東京電力福島第一原発事故による健康影響などを議論する第5回国際会議が開かれ、今回のテーマは福島県で多発している甲状腺がんについてでした。参加したIAEAやUNSCEAR、WHOなどの国際機関メンバーらは、福島原発事故では、事故によって放出された放射性ヨウ素の量がチェルノブイリ原発事故の10分の1であることなどから、「福島はチェルノブイリとは違う」と強調し、福島県で実施されている小児甲状腺検査で多数のがんが見つかっていることについて、「過剰診断」が起きていると指摘しました。

 しかし、福島の子どもの多くを執刀している福島医科大の鈴木眞一教授は、詳細な手術症例を報告し、125例のうち5例を除く121例が、1センチ以上の腫瘍かまたはリンパ節転移があると説明し、「過剰診断」とはほど遠い治療実態を明らかにしました。また、片葉を摘出した患者の中に、再発しているケースがあることも公の場で初めて認めました。

 チェルノブイリ原発事故後、ベラルーシでは30年経った現在でも検診を続けています。福島県では原発事故から5年の時点で、福島医科大学の医師や、小児科医会から甲状腺がん検診の縮小の提言や要望が出ていることに、また、福島県が縮小の傾向を見せていることに、私たちは原発事故の被害者として非常な危機感を抱いています。

 先入観や過去の原発事故のデータにとらわれることなく、東電福島第一原発事故後で被曝した被害者の実態に真摯に向き合い、県民健康調査の本来の目的に立ち返って、県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、将来にわたる県民の健康の維持、増進を遂行していただけますようお願いいたします。

              要 望 事 項

1.県民健康調査の甲状腺がん検査は縮小せず、広く県民に周知して拡充、継続すること。

1.県民健康調査では、甲状腺がんに限らず検査項目を増やし、検査のスパンを短くして、県民健康調査の本来の目的に立ち返り、県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、将来にわたる県民の健康の維持、増進を遂行すること。

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by kazu1206k | 2016-10-07 23:15 | 福祉医療 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k