南スーダン「駆けつけ警護」ー日弁連声明
2016年 11月 19日
現在、南スーダンは、政府と反政府勢力との間で内戦状態となっています。本来、政府はPKO5原則の一つである「紛争当事者間の停戦合意の成立」が崩れている現状では、自衛隊を撤退させるべきでした。しかし、政府は派遣期間を延長して、より危険な「駆けつけ警護」「宿営地共同防衛」の任務を付与してしまいました。現地において自衛隊員が殺傷し、あるいは殺傷される危険が現実のものとなったのです。
恒久平和主義が政府によって破られる歴史的瞬間、戦争・戦場の現実、「戦争のリアリティ」という深刻な危機を目前にしています。
南スーダンに対して、日本は、自衛隊派遣、憲法違反の安保法制よる「貢献」ではなく、あくまで非軍事的な平和貢献をすべきです。政府による「駆けつけ警護」「宿営地共同防衛」の任務付与は撤回されるべきです。政府はPKO5原則に基づき、南スーダンから自衛隊を撤退させるべきです。
以下は、日本弁護士連合会の「南スーダンPKOへの新たな任務付与に対する会長声明」です。
南スーダンPKOへの新たな任務付与に対する会長声明
政府は、本年11月15日、国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)にPKOとして派遣されている自衛隊に対して、いわゆる駆け付け警護の任務を付与する閣議決定を行った。
政府の見解によれば、国連等及び我が国がPKOを実施することについて派遣先及びその紛争の相手方が同意し、しかも、その同意がPKOの実施期間を通じて安定的に維持されると認められる場合になされていれば、仮に駆け付け警護に伴い武器が使用されたとしても、国家又は国家に準ずる組織が相手方とならず、憲法第9条が禁止する「武力の行使」と評することはできないとされている。また、派遣継続を認められるためには、憲法第9条に合致した活動であることを担保するPKO参加5原則を満たしていることが必要とされる。
しかし、自衛隊が駐留しているジュバ市内において、政府軍と反政府勢力との間で大規模な戦闘が発生し、その際にNGO関係者を襲撃したのは政府軍であると報じられている状況の下、駆け付け警護の任務が付与され、その過程で武器が使用される事態が発生すれば、国家又は国家に準ずる組織が相手方となることも考えられるところであり、政府見解によっても、「武力の行使」に該当する可能性が出てくる。
また、反政府勢力の指導者である前副大統領は「7月に起きた戦闘で、和平合意と統一政権は崩壊した。」との考え方を表明している。そして、国連特別報告書が「停戦合意は崩壊している」と断じていることからすればPKO参加5原則が保たれているのか自体に疑問が呈されている状況にある。
当連合会は、上記の情勢にもかかわらず、現時点で自衛隊の南スーダンPKO派遣継続を前提として駆け付け警護の任務を付与する閣議決定がなされたことに懸念を表明する。あわせて、現地での駆け付け警護の実施に際しては、現地の情勢を見極めた上で、「武力の行使」にあたる危険を冒すことのないよう、慎重な対応を求める。
2016年(平成28年)11月17日
日本弁護士連合会
会長 中本 和洋