いわき市が東京電力へ申し入れー廃炉・安全対策・賠償等
2016年 11月 25日
内容の詳細は、以下の通りです。
申入書
東京電力ホールディングス株式会社 代表執行役社長
廣瀬 直己 様
1 福島第一・第二原子力発電所の廃炉に向けた取り組み及び確実な安全対策について
2 福島第一原子力発電所事故に関する適正な賠償の実施について
平成 28 年 11 月 24 日
福島県いわき市長 清水 敏男
1 福島第一・第二原子力発電所の廃炉に向けた取り組み及び確実な安全対策について
東京電力ホールディングス(株)(以下「東京電力」という。)に対しては、 これまでも再三にわたり、福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)事故の一刻も早い収束と福島第二原子力発電所(以下「福島第二原 発」という。)の廃炉を強く求めてきたところであり、また、数十年に及ぶ 廃炉作業の中、市民への影響が無いよう廃炉作業を安全かつ確実に進めることが大前提であることから、これまで「確実な安全対策を講じるよう」申し 入れを行ってきたところであります。
今月10日には福島第一原発1号機の建屋カバーが完全に取り外される など廃炉作業が進められている中、先日明らかとなった、いわゆる「炉心溶融隠ぺい問題」や、福島第二原発において敷地境界の侵入検知を意図的に切るなど数々の法令違反が相次いだことは、様々な形で廃炉作業に協力している市民の信頼を大きく裏切る行為であり、東京電力による福島第一原発事故からの本市の復興の妨げとなっているとともに、風評被害の長期化や、市外で生活されている方々の帰還に大きな影響を及ぼすものであります。
また、労災事故の発生や労働安全衛生法に基づく届出不備などの法令違反に対し、市民の中に不安を訴える声も挙がっており、すべての作業工程において、極めて慎重かつ万全な安全対策が求められます。
さらに、一昨日には福島県沖を震源とするマグニチュード7.4、震度5弱の地震が発生、それに起因する津波も発生したことから、引き続き、地震・ 津波をはじめとする自然災害に対する万全な安全対策が求められます。
東京電力においては、企業体質を改善するとともに、法令を厳格に遵守し、 廃炉に向けた中長期ロードマップに基づく取り組みをしっかりと進めるための十分な安全確保に向け、特に次の4項目について取り組むよう強く申し 入れます。
(1) 福島県内全ての原子力発電所の廃炉方針の決定と確実な安全対策
経済産業大臣による福島第二原発の廃炉に理解を示す発言や、廃炉については事業者が判断するべきこととする政府の見解などを踏まえ、福島第二原発を廃炉とする方針を早急に決定すること。
また、数十年に及ぶ廃炉作業期間中、多くの市民が不安を抱えた生活を強いられることから、東京電力及び国の責任において、確実な安全対策を講じること。
(2) 福島第一原発に係る確実な汚染水等対策の早期実施
汚染水対策を重層的に講じるとともに、海洋モニタリングを適切に実施すること。
また、「汚染源に水を近づけない」対策の重要な一角である凍土遮水壁については、速やかにその効果を検証し、より効果的な汚染水対策について安全かつ確実に取り組むこと。
(3) 作業員の安全管理の徹底
新たに事務本館が完成するとともに、防護装備着用エリアを作業環境により区分けするなど、作業環境に改善がみられるが、廃炉作業は今後長期間にわたって継続することから、労災事故の防止や作業員の安全管理に万全を期すとともに、作業場の放射線量を低減するなど作業員の被ばく低減に向けた取り組みを含め、適正な作業管理を実施すること。
(4) 市民への説明責任の遂行
市民が安心して日常生活を送るためには、東京電力が市民との信頼関係を構築することが必要であることから、事故を発生させた当事者とし ての説明責任を果たし、市民との信頼関係の構築に全力で取り組むこと。
2 福島第一原子力発電所事故に関する適正な賠償の実施について
本市の市民や事業者は、事故が収束していない状況の中、不安を抱えながら生活や事業活動を行っており、その精神的な苦痛や風評被害などの間接被害に伴う営業損害は計り知れないものがあります。
一方で、放射線への不安などから、自主的に市外に避難し、心ならずも家族が離れ離れに生活せざるを得ない家庭が少なくありません。
また、本市においては、全市的に除染事業による側溝堆積物の撤去ができず、道路側溝の排水不良や衛生悪化など、市民にとって大きな問題とな っております。
このような、被害者である全ての市民や事業者に対して、迅速かつ適正な賠償が実施されるとともに、本市にとって切実な課題に対して責任をもって対応されますよう、次の2項目について強く申し入れます。
(1) 営業損害に係る適正な賠償
ア 福島第一原発事故に伴う商工業者等に対する営業損害については、 昨年6月に、将来的な減収分を直近の減収にもとづく年間逸失利益の2倍相当額を一括賠償するとともに、国が集中的な自立支援策を展開するとの方針が出されており、市内の一部の事業所では業績の改善はみられるものの、業種によってばらつきがあり、特に農林水産業及び加工業、観光業において、風評被害が依然として継続しております。
これらのことから、今後においても、風評被害をはじめとする個別具体的な事情による損害について、事業者等の意見や要望を真摯にくみ取 り、事業者の再建に結び付くよう、適正な賠償を実施するよう強く申し 入れます。
イ 農林業に係る営業損害賠償については、本年9月に平成29年1月以降、年間逸失利益の2倍相当額を一括賠償する案が示されましたが、 一括賠償後の具体的な取扱いが示されておらず、賠償の打ち切りが懸念されることから、農林業者や関係団体の意向を十分に踏まえ、確実に賠償を実施するよう強く申し入れます。
(2) 地方公共団体に対する迅速かつ適正な賠償
本市一般会計、特別会計及び企業会計の一部のうち、政府指示の有無に関わらず事故との因果関係が明らかな費用について東京電力に対し、 それぞれ賠償請求を行っておりますが、本市の請求額、約52億円に対し、これまで約12億円と2割程度しか支払われておりません。
ついては、迅速かつ適正な賠償を実施するとともに、今後本市が福島第一原発事故に伴って実施する様々な業務・事業についても、最後まで確実に賠償対象とするよう、責任をもって対応されることを強く申し入 れます。