原発事故避難者の住宅保障求め政府交渉
2017年 02月 24日
区域外避難者の住宅無償提供の打ち切りが3月末に迫る中、避難当事者の必死の訴えが続きました。わたくしも、県内避難者の仮設住宅居住者は、高齢、病弱、独居、困窮などで転居が困難な人が多く、通告通り退去を求めず、人道的対応を求めました。内堀福島県知事と安倍内閣総理大臣による福島原発事故被害者の切り捨てに抗い、人として生きる権利を求める人々を圧殺することはできません。闘いは続きます。
避難者の窮状、たとえば、民間賃貸住宅の避難者における、管理会社の事実上の「追い出し」事例についても、まったく把握していませんでした。都道府県・住宅種別の避難者数についても把握していません。それでは対策のとりようがありません。さらに、驚くべきことに、4月以降の住宅が決まっていない避難者の数について復興庁として、まったく事実とは異なる認識・回答をしていることが明らかになりました。
復興庁は、「福島県によれば、3月で住宅提供を打ち切られる避難者(12,363世帯)のうち、4月以降、転居先が決まっていない避難者は2158世帯」と回答。しかし、福島県が「(4月以降の住居が)ほぼ確定」といる世帯数も「確定」に含めてしまっているうえ、「ひだんれん」による交渉では、この「ほぼ確定」については、福島県の担当者が、「退去のみが決まっており、転居先が決まっていない人も含まれている」ことを認めています(詳しくは、質問1)②~④の質疑をご覧ください)。
私たちは、改めて、国として主体的に対策をとること、現行の住宅提供を継続させることを求めました。
日時:2017年2月20日 13:00~14:00事前打ち合わせ
14:00~15:30政府交渉
場所:衆議院第一議員会館第4会議室(地下1階)
主催: 「避難の協同センター」「原発事故被害者の救済を求める全国運動」
協力:「避難の権利」を求める全国避難者の会
対応省庁:復興庁、内閣府、総務省、財務省、厚生労働省、国土交通省
紹介議員:菅直人衆議院議員
注)★を付した設問については、2月7日に前もってご回答いただいた。
★1)災害救助法による住宅提供の打ち切りに関して、以下についてご教示いただきたい。
①打ち切り対象の避難者数(県別・住宅種別)
(復興庁)
(当方)県別・住宅種別について把握していなければ、対策がとれないではないか。把握してほしい。
②①のうち、すでに4月以降の住居をみつけている人の数(県別・住宅種別)
③①のうち、4月以降の住居をみつけられていない人の数(県別・住宅種別)
④①のうち、帰還する意向である人の数
(復興庁)
(当方より)
・福島県の戸別訪問の結果と齟齬がある。福島県は、「住宅が確定している世帯(A)」「ほぼ確定している世帯(B)」「未確定(C)」というカテゴリーを設けている。(A)と(B)を「確定している」としまっているようであるが、「ほぼ確定」は3月末に退去することを決めているだけで、その先はきまっておらず、事実上、未確定としてカウントすべき。
対象世帯数訪問実施世帯確定済
(A)ある程度※
(B)未確定
(C)(B)+(C)
第1回9,3946,7952,3582,5381,8994,437
第2回6,1974,6881,5172,1331,0383,171
第3回3,275
※「ある程度」とは、退去が決まっており、引っ越し先が決まっていない数が含まれている。
注)ひだんれん村田さんからのその後の補足情報…福島県は第2回調査結果(11/15現在)と同じ11/15現在のデータとして、12月5日に「意向調査・2回の個別訪問後」として「未定1,564」という数字を記者発表、福島民報などが「住む家未定 1000世帯」などと報じた。第1回・第2回個別訪問のデータの「ある程度決まっている」(計4,671)を「移転等」と読みかえるトリックを使っている。しかし、12月21日のひだんれん・全戸全国連との第5回交渉で、「ある程度」の中身を追及された小林則正・生活拠点課副課長(戸別訪問の担当責任者)は「移転することについては心に決めているが、決まっていないというのがそこに入っている」と正直に答えている。
(当方)
・自分は、「戸別訪問」を追い出しととらえ、断った。住宅提供打ち切りありきで、こちらの意向をきいてくるのは、順序がおかしい。
・支援団体の聴き取りでは相当数が住居を確定させていないという実感がある。
・国家公務員住宅における意向調査では、70%以上が転居先を確定させていない。
(備考)
福島県「住まいに関する意向調査」
2016年1月~3月実施、6月発表
・対象:2017年3月で災害救助法に基づく応急仮設住宅の供与が終了する世帯
12,436世帯 回答率59.7%
・県外避難者の5割以上が避難継続を希望
・県外避難世帯77.7%が2017年4月以降の住宅が決まっていない
その後、戸別訪問などを経て、「決まっていない」割合は減少。
避難者にしてみれば、「決断を迫られた」というのが実態
2)福島県による意向調査、支援団体による避難者の交流会における聴き取りや報道などによると相当数の人が住居を見つけられず、経済的にも追いつめられた状況にある。災害救助法による住宅提供の打ち切りは時期尚早であると考える。このことに関して政府としての見解をいただきたい。
(内閣府回答)災害救助法の適用の打ち切りについては、福島県が諸事情を勘案して決定したもの。
(当方より)
・福島県が決めたというが、政府としてそれに同意している。また、打ち切り後に、意向調査や戸別訪問をやっており、順序が逆。このままでは路頭にまよう避難者がでてしまうという厳しい実情を踏まえ、再度協議を行うべき。避難者の実情を踏まえれば、延長すべき。
・各自治体から、延長について意見書が提出されているはず。その扱いは?
(復興庁)自治体から意見書が83件きている。内容を踏まえて被災者に寄り添った対応をしたい
3)福島県による第3回戸別訪問の結果について、およびそれに関する政府の見解および具体的対応についてご教示いただきたい。。
(回答)まだ報告がきていない。
★4)国が子ども・被災者支援法の基本方針にもりこんだ、「公営住宅の入居の円滑化」について、以下についてご教示いただきたい。
①公営住宅の確保(県別、住宅種別)
②応募者数、入居決定者数(県別・住宅種別)
(国土交通省→別紙1)
(備考)
→区域外避難者1万2,539世帯のうち、審査中・入居決定戸数は、370戸ほど。一部にすぎない。
★5)避難者の定義、避難者登録の運用についてご教示いただきたい。
①たとえば、たとえば当初の借り上げ住宅から、公営住宅などに引っ越した場合は、避難者としての登録を継続されるか。
②国は区域外避難も含め、避難者数をどのよう把握しているか。
③住宅借り上げ制度の終了に伴い、避難者数の把握・集計に影響はあるか。
(復興庁)
→補足説明:復興庁から各都道府県に対して、住民票を移したうつさないにかかわらず、避難元に戻る意思がある人を避難者としてカウントするように通知をだしている(2014年8月4日付、都道府県宛てに通知別紙2)。現在、避難先の都道府県が行っている公営住宅の優先枠等で入居した人もカウントされる。
当方)避難先自治体の対応によって、住民票を移したことによってカウントされない可能性があり、カウントされるということを自治体に徹底させてほしい。
④復興庁が閉鎖される2021年度以降、避難者の把握や支援策についてはどの省庁が責任を持つのか。
6)公営住宅への優先入居について:自治体により所得要件・世帯要件が厳しく設定され、避難者を切り捨てる事態となっている。切り捨てられ支援が受けられない避難者の救済含め、国として特定入居扱いを認めるべきではないか。
例)東京都
・家賃が高いので、自力で民間賃貸住宅に引っ越しをすることが困難。都営住宅への入居か、家賃補助が不可欠。
・要件を満たした応募数が192 世帯のみ。(都の独自の要件にひっかかる人が多数出ている)
・UR 住宅・雇用促進住宅・区市町村営住宅の避難者は優先枠対象から外されている。
(国交省回答)住居の確保は優先されるべき。法律上の要件から「特定入居」扱いすることは難しいが、各自治体の判断により、地域の実情に応じて、優先入居や倍率の優遇などの対応を行っている。
(当方)「特定入居」扱いを決断している自治体もいる。国として、「特定入居」も容認すると明言してほしい。(→明言することは難しいようです。)
(当方)ひだんれんの交渉における福島県の説明によれば、3・11の直後に国交省から、「特定入居扱いにしなさい」という通知がでた。福島県は、国交省と相談の上、県として「特定入居」とすることにした。文書もある。
※国交省の認識と齟齬があるため、文書にてやりとりを行うこととした。
7)自治体間格差について:自治体によって避難者支援がばらつき、避難先に自治体によって避難者格差が生じている。国として主体的に「住まいの確保」に動くべきではないか
(復興庁回答)自治体の実情に応じて、対応していただいている。復興庁としては、被災者支援総合交付金による見守りや相談支援、コミュニティ形成支援、相談窓口の設置などを行っている。
(当方)避難当時、避難者には選択肢がなかった。避難先・入居した住宅の種類によって、差異が生じてしまっている状況。結果として、避難者支援が充実していない地域では、避難者が困窮化してしまう。国として動くべき。
(参考)
・現在の公営住宅(無償)の入居期限の延長
…北海道、札幌市、京都府、伊勢市、鳥取県、鳥取市、米子市など
・公営住宅の無償提供
…山形県など
・公営住宅の「優先枠」「専用枠」の設定
…東京都、埼玉県など
・引っ越し費用の補助
…秋田県、山形県、新潟県など
家賃補助
…新潟県、沖縄県など
原発事故子ども・被災者支援法 第九条
国は、…移動先における住宅の確保に関する施策、移動先における就業の支援に関する施策、移動先の地方公共団体による役務の提供を円滑に受けることができるようにするための施策…その他の必要な施策を講ずるものとする。
★8)国家公務員住宅について:以下の問題が生じている。国として対応すべきではないか。
①場所によって高額な家賃が設定されており、避難者が居住継続することが困難となっている。
(財務省)
補足説明:国が、福島県に対して、国家公務員宿舎を提供するときの請求額は、国家公務員が入居するときの家賃を請求している。福島県が避難者に貸与する際の金額は、福島県が決定しているが、国家公務員並みにしたということ。
(当方)
・実際には、駐車場など含めて8万円の家賃にもなってしまっている場所がある。国家公務員なみ、と言っても、避難者には公務員ほどの所得はない。
②入居期間が2年と制限されている。自主的避難者のもとにのみ、「取り壊すので出て行ってくれ」という通知がきている場所がある。
(当方)なぜ、福島県任せにしているか?
(参考)国家公務員住宅入居者の7割以上が転居先を確定していない。高い家賃、2年の入居期限、その先は?
9)民間賃貸住宅について:福島県が初年度半額(最大3万円)、次年度3分の1(最大2万円)補助が設定されているが、以下の問題がある。沖縄県・新潟県のように家賃補助の上乗せをする自治体、埼玉県のように宅建協会経由で配慮を求めている自治体もあるが、そうでない自治体が大半である。国として対応すべきではないか。
①東京都のように家賃が高い地域においては、残りの家賃を避難者が支払うことが容易ではない。
②貸主の意向に左右され、家賃の値上げ(通常請求)や敷金・礼金が大きな負担になり継続できない避難者も多く発生する。
③自治体が実態をつかんでおらず、支援が後手にまわっている。
(回答)契約が貸主-避難者になるため、貸主の判断となる。
(当方)継続契約にあたって、不動産屋から無理難題を言われ、事実上追い出しにあっているケースも報告されている。そういった事情を把握されているのか? (明確な回答無し)
(当方)ぜひ把握してほしい。
★10)避難者特例法における特例事務の扱いは、4月以降も継続されるか。
(総務省)
11)国として「個別に寄り添って生活再建が図られるよう」の姿勢を明確に示すため、県外で避難を継続希望している方々が2017年3月末で強制退去をさせないことを表明すべきでないか。
(復興庁)ご意見は承った。復興庁としては、被災者支援総合交付金による見守りや相談支援などで引き続き、避難者の方々によりそった対応を行っていきたい。
12)県内の仮設住宅居住者は、高齢、病弱、独居、困窮などで転居が困難な人が多い。これらの現状を把握しているか。福島県の「避難者住宅確保・移転サポート事業」の体制、事業内容はいかなるものか。これで対応可能と考えているか。対応できない人には通告通り退去を求めるのか、明らかにされたい。
(復興庁)「避難者住宅確保・移転サポート事業」は福島県による事業であるが、県内避難者の引っ越しの手続きの相談などのサポートを行っているもの。
(当方)実際には、郡山の仮設などで、困窮している高齢者が多い。これらの避難者の追い出しをすることは絶対にやめてほしい。
13)自治体が担う費用について
~国が負担もしくは東電に確実に求償できるようにすべきではないか。
(回答)災害救助法に基づく住宅提供にかかる費用については、現在、東電に求償すべく調整中である。
(当方)質問の趣旨は、独自支援策をとる自治体が担う費用について、国、または東電に求償できるようにすべきというものであるが。
(回答)所掌する省庁が今同席していない。経産省かも?