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プライバシー権及び知る権利の保障など、人権擁護大会の決議

日本弁護士連合会の第60回人権擁護大会は、10月6日、滋賀県大津市で開催されました。
10月5日には、「情報は誰のもの?~監視社会と情報公開を考える~」と題したシンポジウムも開かれ、米国の大量監視の実態を暴露した元NSA(米国国家安全保障局)局員のエドワード・スノーデン氏もオンラインで登場して「大量監視はテロリズムの防止に役立っていない」などと話しました。
以下に、「個人が尊重される民主主義社会の実現のため、プライバシー権及び知る権利の保障の充実と情報公開の促進を求める決議」を紹介します。

個人が尊重される民主主義社会の実現のため、プライバシー権及び知る権利の保障の充実と情報公開の促進を求める決議

2013年6月、元NSA(米国国家安全保障局)局員エドワード・スノーデン氏は、米国政府がインターネット関連企業の協力を得て、全世界のインターネット上のデータを監視できる情報環境を作り、秘密裏に活用していた実態を内部告発し、世界を震撼させた。同氏の内部告発は、国家が高度デジタル技術等を用いて国境を越えて秘密裏に個人の行動を過去にまで遡って監視することが可能な社会(超監視社会)の下で、プライバシー権が脅かされている実態と、国家が隠匿していた公的情報が内部告発等により市民に公開されることの重要性を明らかにした。
 
日本においても、インターネット、監視カメラ、GPS装置など、大量の情報を集積する技術が飛躍的に進歩し、マイナンバー(共通番号)制度も創設された。また、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律」(以下「組織犯罪処罰法改正法」という。)により、いわゆる「共謀罪」が多数新設されたことで、市民に対する監視が強化されることへの懸念も指摘されている。
 
公的情報の公開については、特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」という。)が施行され、政府が恣意的に情報を隠匿する懸念が高まる中、PKO派遣部隊の日報や学校法人の獣医学部設置の過程文書が不存在扱いされ、また、学校法人への国有地売却経緯に関する文書を行政機関の判断だけで短期間で廃棄したとされるなど、情報公開と国民の知る権利を軽視する運用が政府によってなされている。
 
このままでは日本は、保護されるべき私的情報が国家により自由に収集・利用され、公開されるべき公的情報が公開されない国になってしまいかねない。こうした現状に歯止めをかけ、個人が尊重される民主主義社会を実現するためには、プライバシー権及び知る権利の保障を充実させるとともに、情報公開の促進を図ることの重要性を改めて確認する必要がある。
 
人は監視されていると感じると、自らの価値観や信念に基づいて自律的に判断し、自由に行動して情報を収集し、表現することが困難になる。すなわち、プライバシー権及び知る権利は、個人の尊重にとって不可欠な私的領域における人格的自律を実現するとともに、表現の自由の不可欠な前提条件となっており、立憲民主主義の維持・発展にも寄与する極めて重要な人権である。
 
したがって、大量の情報が集積される超監視社会とも呼ぶべき現代にあって、個人が尊重されるためには、公権力により監視対象とされる個人の私的情報は必要最小限度とし、公権力が私的情報を収集、検索、分析、利用するための法的権限と行使方法等を定めた法制度を構築すべきである。
 
また、個人が尊重される民主主義社会の実現のためには、その手段である民主制の過程が健全に機能しなければならない。代表民主制下において国民が自律的に代表者を選任し政策形成に参加するためには、公的情報が国民に対して十分に公開されていることが不可欠である。そのためには、知る権利の保障の充実と、情報公開を促進する制度の整備が必要である。
 
さらに、知る権利には、メディアによる自律的な報道や内部告発による権力監視が大きく奉仕するのであり、これらを萎縮させない仕組みの構築も重要である。
 
こうした知る権利及び情報公開の重要性に照らせば、行政機関をして重要な政策決定に係る意思形成過程の公的情報は必ず記録・保存させ、恣意的な秘密指定や廃棄を許さず広く公開させるとともに、権力監視の仕組みを強化する必要がある。
 
以上を踏まえ、当連合会は以下の具体策を提言する。

1 超監視社会におけるプライバシー権保障の充実

(1) 公権力が、自ら又は民間企業を利用して、あらゆる人々のインターネット上のデータを網羅的に収集・検索する情報監視を禁止すること。

(2) 監視カメラ映像やGPS位置情報などを取得し、それを捜査等に利用するに際して、これを適正化するため、新たな立法による法規制を行うこと。

(3) 捜査機関による通信傍受の対象犯罪を更に拡大し、また、会話傍受を可能とする立法を行わないこと。加えて、通信傍受の適正な実施について独立した第三者機関による監督を制度化すること。

(4) 市民監視を拡大し、市民の自由を著しく萎縮させるおそれの強い、組織犯罪処罰法改正法によって多数新設された、いわゆる「共謀罪」の規定を削除すること。

(5) 公安警察や自衛隊情報保全隊などの情報機関の監視権限とその行使について、法律により厳格な制限を定め、独立した第三者機関による監督を制度化すること。

(6) マイナンバー制度が、あらゆる個人情報の国家による一元管理を可能とする制度となり、市民監視に利用されることのないよう、制度上・運用上の問題点を明らかにし、廃止、利用範囲の大幅な限定、民間利用の禁止等の対応を行うこと。

2 知る権利の保障の充実のための情報公開の促進と権力監視の仕組みの強化
 
(1) 公的情報の公開、保存及び取得に関し、基本理念と基本事項を定める情報自由基本法(仮称)を制定すること。

(2) 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)等を改正し、本来市民が入手すべき情報を、行政機関が恣意的に隠匿できない情報公開制度を確立すること。

(3) 公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)上、電子データが「行政文書」とされていることを踏まえて、全ての電子データを長期間保存することとし、また、行政文書の恣意的な廃棄等が行われないよう監視するために独立性の強い第三者機関を設けること。

(4) 秘密保護法について、廃止を含めた抜本的見直しを行うこと。
 
(5) 内部告発者の保護を強化するとともに、公益通報制度を周知すること。
 
(6) メディアによる権力監視を一層強化するために、自律的に多様な報道を行うことが促進される仕組みを構築すべきであること。
 
当連合会は、上記提言を実現すべく全力を尽くしていく決意である。
 
以上のとおり決議する。

2017年(平成29年)10月6日
日本弁護士連合会
by kazu1206k | 2017-10-16 23:41 | 平和 | Comments(0)