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いわき市、廃炉・安全対策と賠償を東電社長に申し入れ

 いわき市は、11月22日午前10時から、市役所本庁舎第3会議室で、東京電力ホールディングス株式会社の小早川智明代表執行役社長に清水市長が面会して、「東京電力株式会社福島第一・第二原子力発電所の廃炉に向けた取り組み及び確実な安全対策について」と「東京電力株式会社福島第一原子力発電所事故に関する適正な賠償の実施について」申し入れました。下記に、転載します。

東京電力ホールディングス株式会社 代表執行役社長
小早川 智明 様
             申入書

1 福島第一・第二原子力発電所の廃炉に向けた取り組み及び確実な安全対策について
2 福島第一原子力発電所事故に関する適正な賠償の 実施について


平成29年11月22日
福島県いわき市長   清水 敏男

【重点申入項目】

1 福島第一・第二原子力発電所の廃炉に向けた取り組み及び 確実な安全対策について

 東京電力ホールディングス(株)(以下「東京電力」という。)に対しては、 これまでも再三にわたり、福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」と いう。)事故の一刻も早い収束と福島第二原子力発電所(以下「福島第二原発」という。)の廃炉を強く求めてきたところであり、また、数十年に及ぶ廃炉作業においては、市民生活への影響が無いよう廃炉作業を安全かつ確実に進めることが大前提であることから、併せて「確実な安全対策の実施」についても申し入れを行ってきたところであります。
 しかしながら、汚染水対策の重要な一角である凍土方式の陸側遮水壁、いわゆる凍土遮水壁においては、これまで東京電力自らが、建屋内の汚染水が外部へ漏れないよう地下水の水位と建屋内の水位は絶対に逆転させてはな らないと説明していたにもかかわらず、本年8月には水位の逆転事象が発生し、また、そもそも水位計自体に設定のミスがあるなど、自らの説明内容と安全管理体制に大きな乖離があったことは、東京電力の説明内容に対する信頼性を大きく失墜する事象であり、大変遺憾であります。
 また、本年9月には「福島第一原発の廃炉措置等に向けた中長期ロードマ ップ」(以下「中長期ロードマップ」という。)が改訂され、使用済燃料プールから燃料を取出す時期が遅れることが示されました。安全第一に廃炉作業を進めることは何よりも優先しなければならないことですが、廃炉作業が遅れることは市民に大きな不安を与え、東京電力による福島第一原発事故からの本市の復興の妨げとなるとともに、風評被害の長期化や、市外で生活されている方々の帰還に大きな影響を及ぼすものであります。
 東京電力においては、改めて事故の当事者であることの責任を再認識し、 今一度、安全管理体制を徹底して見直すとともに、廃炉に向けた中長期ロー ドマップに基づく取り組みをしっかりと進めるための十分な安全確保に向け、特に次の4項目について取り組むよう強く申し入れます。

(1) 福島県内全ての原子力発電所の廃炉方針の決定と確実な安全対策
 経済産業大臣や復興大臣による福島第二原発の廃炉に理解を示す発言や、廃炉については事業者が判断するべきこととする政府の見解などを踏まえ、福島第二原発を廃炉とする方針を早急に決定するとともに、今月、福島県議会議長からも要請があったように、廃炉工程を明確にするなど具体的なアクションを起こすこと。
 また、数十年に及ぶ廃炉作業期間中、多くの市民が不安を抱えた生活を強いられることから、東京電力及び国の責任において、確実な安全対策を講じること。

(2) 福島第一原発に係る確実な汚染水等対策の実施
 汚染水対策を重層的に講じるとともに、海洋モニタリングを適切に実施すること。
また、多核種除去設備(ALPS)において大部分の放射性物質を除去した水、いわゆるALPS処理水の処分方法については、国の小委員会で検討が進められているところであるが、東京電力自らが風評などの社会的影響を十分に考慮した処分方法について検討すること。

(3) 作業員の安全管理の徹底
 防護装備着用エリアを作業環境により区分けするなど、作業環境に改善がみられるが、今後は燃料取出し作業など、高線量下での作業が増えると予想されることから、労災事故の防止や作業員の安全管理に万全を期すことは勿論、作業場の放射線量を低減するなど作業員の被ばく低減に向けた取り組みを含め、適正な作業管理を実施すること。

(4) 迅速かつ丁寧な情報発信と市民への説明責任の遂行
 市民が安心して日常生活を送るためには、福島第一原発の状況を正し く把握することが必要であることから、トラブル時は勿論、日々の状況についても、事故を発生させた当事者である東京電力が迅速かつ丁寧に市民への説明責任を果たすこと。

2 福島第一原子力発電所事故に関する適正な賠償の実施について

 本市の市民や事業者は、事故が収束していない状況の中、不安を抱えな がら生活や事業活動を行っており、その精神的な苦痛や風評被害などの間接被害に伴う営業損害は計り知れないものがあります。
 一方で、放射線への不安などから、自主的に市外に避難し、心ならずも 家族が離れ離れに生活せざるを得ない家庭が少なくありません。
 このような、被害者である全ての市民や事業者に対して、迅速かつ適正な賠償が実施されるとともに、本市にとって切実な課題に対して責任をも って対応されますよう、次の2項目について強く申し入れます。

(1) 事業者等に対する適正な賠償の実施
 ア 福島第一原発事故に伴う商工業者等に対する営業損害については、 平成27 年6月に、将来的な減収分として直近の減収にもとづく年間逸失利益の2倍相当額を一括賠償するとともに、国が集中的な自立支援策を展開するとの方針が出されており、市内の一部の事業所では業績の改善はみられるものの、業種によってばらつきがあり、特に農林水産業及び加工業、観光業において、依然として風評被害が継続してお ります。
 これらのことから、今後においても、風評被害をはじめとする個別具体的な事情による損害について、事業者等の意見や要望を真摯にくみ取り、事業者の再建に結び付くよう、適正な賠償を実施することを強く申 し入れます。
 イ 農林業に係る損害賠償については、昨年12 月に、平成29年1月以降、年間逸失利益の3倍相当額を一括賠償する案が示されましたが、 風評被害をはじめとした損害については、今後も長期にわたって、本市農林業へ重大な影響を及ぼすことが懸念されることから、今後においても、農林業者や関係団体の意向を十分に踏まえ、確実に賠償を実施するよう強く申し入れます。

(2) 地方公共団体に対する迅速かつ適正な賠償
 本市一般会計、特別会計及び企業会計の一部のうち、政府指示の有無に関わらず事故との因果関係が明らかな費用について東京電力に対し、 それぞれ賠償請求を行っておりますが、本市の請求額、約61億円に対し、これまで約14億円と24%しか支払われておりません。
 ついては、迅速かつ適正な賠償を実施するとともに、今後本市が福島第一原発事故に伴って実施する様々な業務・事業についても、最後まで確実に賠償対象とするよう、責任をもって対応されることを強く申し入 れます。

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by kazu1206k | 2017-11-27 14:26 | 脱原発 | Comments(0)