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防潮堤「不可能ではなく可能」、第2回公判で東電社員証言

 1月26日、福島原発事故の責任を問う、東電3被告の刑事裁判(業務上過失致死傷罪)の第2回公判が開かれました。
 1月26日午前7時30分、冷え込んだ厳寒の東京地裁前に到着。まだ係員もおらず正門は閉まっていました。午前10時からの開廷に向け、傍聴券の抽選のための傍聴整理券の交付指定場所を確認。今回、傍聴整理券の配布時間は8時20分から9時までになり、97席の傍聴席のうち報道関係者用などを除いた、63の一般傍聴席のため約250人の方が並びました。

 8時30分、東京地裁前のアピール行動がはじまり、東京地裁刑事第4部永淵健一裁判長あての『厳正な判決を求める署名』の第1回提出分3,127筆を集約を確認、9時に代表団が提出しました。
 9時、傍聴券の抽選結果をうけて、地裁104号法廷へ。筆記用具以外は持ち込み禁止、前回同様、一人一人携帯品を全部取り出ささせ、体を金属探知機と衛士によるボディタッチという、最高裁判所並みと言われる異例のボディチェックが今回も実行され、ようやく入廷しました。
 裁判官3名と検察官役の指定弁護士5名、被害者参加制度により委託を受けた弁護士5名、被告弁護人7名が着席していました。東電旧経営陣の勝俣、武黒、武藤の3被告は、何と、裁判長の指示で冒頭のテレビ撮影が行われた後に、入廷してきました。勝俣被告は眼光鋭く、武藤被告共々元気そうです。

 10時、永渕健一裁判長が開廷を宣言。
 まず、裁判長が「証拠・審理計画の全ては決まらずとも、当面の日程は一致した」として、「期日間打合せの概要」を報告しました。その内容は、「主要な争点の確認ー福島第一原発事故の予見可能性とその概要、被害者1名の死亡の因果関係」「証拠として書証300余、物証1、証人20人を採用」「期日は17回まで指定。秋まで、証人20人、被告人尋問まで終える」というものでした。

 その後、検察官役の指定弁護士と被告弁護人の双方から、提出書証の短い説明がありました。
 
 証人尋問に入り、証言したのは東京電力の社員。
 証人は、専門は機械系のメンテナンス。土木系、津波は専門外。事故前は、主に自治体対応の窓口業務をし、事故当時は、原子力設備管理部の部長代理。その後、東京電力の事故報告書を作成しています。
 まず、検察官役の指定弁護士、山内久光弁護士の主尋問。
 証人の供述調書のポイントをまず尋問。福島第一原発各号機の設置基盤高、非常用デーゼル発電機などの設置場所などを確認。資料を示しながら、原子力発電、原子炉、燃料集合体、放射線と放射性物質、多重防護、炉心冷却装置などの基本的説明を求めました。
 その後、証人らが作成した東電事故報告書の図を示して、被水して事故が起こるまでの経緯の説明を求めました。さらに、「事故防止のためあらかじめ必要だったこと、講ずるべき対策」を尋ねると、証人は「防潮堤、防潮壁、重要機器の水密化、冷却設備」をあげ、それに伴う柏崎刈羽原発での対策実施を写真で確認しました。

 午前11時47分に休廷。
 午後1時15分に再開して、検察官役の指定弁護士の主尋問を続行。
 山内弁護士は、柏崎刈羽原発で実施した津波被水対策を福島第一原発で対策した場合を資料を示しながら、水密扉や防潮壁をどのようにつくるかを尋ねました。
 証人は、「ハード的には、事故を防げた可能性はある」「防潮堤は、10m盤に10mの防潮堤をつくれば事故を防げた」「津波の波力と漂流物を考え、基礎をしっかり作らねばならないので、工事中はプラントを停止する必要がある」などと証言、山内弁護士が「今回の事故前5〜6日前に停止していれば事故は防げたか」と尋ねると、証人は「工事の前提条件が揃っていれば可能だった」「(事故後)注水だけに注力すれば良いことになる。ああいう事故の過程にならなかったと思う」と証言しました。
 これに対して被告弁護人の宮村啓太弁護士が反対尋問
 原子炉停止による事故の防止について尋ねると、証人は「今回の事故を経て、停止しておけば事故には至らなかったということ」「プラントメ–カーの人手も集める必要がある」と証言。
 検察官役の指定弁護士の石田省三郎弁護士は、「3.11以前に10m盤を超える津波想定と対策はなかった」という証人に対して、平成22年、中越沖地震対策センター所長であった「ヒジカタカツイチロウさんを知っているか」と尋ね、やり取りの結果つめられ、証人は「バックチェックの時期、議論はしていたと思う」「東電設計の計算結果は知っている」「福島地点津波対策ワーキングは知っています」と証言するに至りました。

 午後2時18分に休廷し、同2時45分に再開して、被告弁護人の宮村啓太弁護士による弁護側主尋問に入りました。
 まず、水密化について。3.11の際、1号機の大物搬入口が開いていたことなどから、「完全な事故防止は難しい。敷地浸水を防ぐことが大事」などと証言しました。
 被告弁護人は、防潮堤工事の困難さを示すためか、証人に復水器の取水配管と放水配管の位置を地図上で示すよう、2色のマーカーで長時間、着色することを求めました。
 また、被告弁護人は、敷地南側だけに防潮壁を作ることを示唆する、敷地南側の前面で水位が高い、敷地内の津波水位分布などのカラー図版の資料を示して、証人の説明を求めています。
 さらに、平成20年6月10日の武藤被告に15.7mの津波高が報告された会合について、証人は「平成20年6月10日の打合わせに参加しました。席上、土木調査グループの酒井さん、高尾さんが津波高の話しをして、地震本部の見解で計算した結果をどう扱うか。計算は15.7mを超える結果が示され、違和感を覚え、極端な数字に驚いた」「今のまま運転したら危険と話した人はいない。バックチェックの不足のあるところを対応する」「具体的な対策の中身はなかった。壁の設置もなかった」とし、打合せ後、「高尾さんと試算にどの程度の精度があるのかと話し、違和感が取り除かれていない」と証言しました。

 これに対して、検察官役の指定弁護士の山内久光弁護士が反対尋問
 まず、水密化について、「水密化することと扉の開閉は関係ない」と、プラントの停止については、「対応によって、今回のようにならない」と証言。平成20年6月10日の会合での違和感については、「計算に問題があると思ったのか」との問いに「なぜ出て来たか」と答え、「バックチェックのことは話題になっていたが、細かい記憶はない」としました。
 また、防潮堤について、配管が多数で工事がしにくいという話しとし「不可能ではなく可能である。つくるためには、干渉する建物の移設など大掛かりな工事になる」と証言しました。

 今井裁判官は、平成20年6月10日の打合せについて、武藤被告から何らかの指示があったか、と尋ね、証人は「武藤さんからもう一度整理してと話しがあった」とし、さらに酒井さんらから15mを超える津波対策の相談があったか、と問われ、「先送り。結果、土木学会の専門家意見でまとめてもらうことになった」と答えました。
 永淵裁判長が、敷地内の津波水位分布などのカラー図版の資料について訊くと「カラフルな資料の記憶。バックチェックの対応が大きなテーマだった。この資料の説明は覚えていない。地震本部の評価だとこんなに大きくなる。どう対応したものかということ」などと答えました。

 これに対して、検察官役の指定弁護士の石田弁護士が、平成20年6月10日の打合せの資料は何枚あったか、文字資料は何枚あったかと訊ね、証人が「当時の記憶は不明。現在の記憶では、白黒の資料はあったと思う。工程の記憶が6月10日か不明」と答えたため、証拠で資料の全体を示すと「調査の段階では見た」と証言するに至りました。

 最後に、裁判長が「次回期日2月8日」ということで閉廷しました。

 午前10時から午後4時40分近くまでの公判終了後、記者会見と公判報告会も開かれました。
 以下は、公判報告会での発言の一部の抄録です。

 佐藤和良支援団長
 平成に起こったことは平成のうちに、ということで天皇退位の前に判決が出るのでは。福島の現状は厳しい。県民健康調査の小児甲状腺がん検診は学校検診をやめると言っている。この国が国民を守るということがない。被害者が地獄、加害者が天国、がずっと続いている。手を取って足を引っ張らないで進もう。

 海渡雄一弁護士
 10m盤の上に10mの防潮堤は不可能、と東電社員は印象付けたかったのだろうが、4つの対策は福島ではできなかったのか。
 6/10の会議に誰が出たのか。武藤副社長は出席。土木調査グループは津波の大きさを、実際に防潮堤を作るとした時、どこに作るのか。混乱していた。15.7mの計算はどうなっているか。
 2/28の公判には東電の設計グループ、推本の長期評価を取り入れて計算していた担当者が証人として出席。検察側証人14人 土木グループの人など、専門家。裁判官は証人20人と言っている。総論的な尋問だった。裁判長は武藤副社長は深くコミットしていたと言っていた。

 武藤類子副団長
 検察官の職務を行う弁護士に給すべき手当の額等に関する要請書。1/23に弁護士の給与をあげる要請を出した。1審が終わらないと給与が出ない。指定弁護士に直接会って援助は難しい。弁護士会、法務省に提出。

 避難者の山田さん
 対策を取っていれば事故は起こらなかった。福島の豊かな土地は何百年も戻ってこない。この裁判は見届けたい。
 
 郡山の人見さん
 津波高の計算結果。6.1mから15.7mへ。違和感。会社としての危機的問題では。こういう人たちが原発を扱っていたことに心底恐ろしく感じた。

 ●6月までの公判期日は、以下の通りです。

 2/8(木)午前のみ
 2/28(水)10:00〜17:00
 4/10(火)、4/11(水)、4/17(火)、4/24(火)、4/27(金)、
 5/8(火)、5/9(水)、5/29(火)、5/30(水)、
 6/1(金)、6/12(火)、6/13(水)、6/15(金)(全て10:00〜17:00)

防潮堤「不可能ではなく可能」、第2回公判で東電社員証言_e0068696_19586.jpg

by kazu1206k | 2018-01-27 23:46 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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