第4回公判、東電が津波高15.7m「小さくできないか」依頼

 2月28日、福島原発事故の責任を問う、東電3被告の刑事裁判(業務上過失致死傷罪)の第4回公判が開かれました。
 東京地裁前には、今回も傍聴希望者は多く、希望者187人に傍聴できたのは62人でした。
 東京地裁前のアピール行動ののち、東京地裁刑事第4部永渕健一裁判長あての『厳正な判決を求める署名』の第3回提出分2,026筆(合計は6,619筆)を集約して、9時に代表団が提出しました。
 9時、傍聴券の抽選が機器の故障により手間取るなか、相変わらず異例の「厳重チェック体制」が続きます。筆記用具以外は持ち込み禁止。一人一人携帯品を全部取り出ささせ、体を金属探知機でチェックした上に、過剰警備を思わせる、衛士によるボディタッチのチェック後の入廷です。
 裁判官3名と検察官役の指定弁護士5名、被害者参加制度により委託を受けた弁護士4名、被告弁護士8名が着席。冒頭のテレビ撮影が行われた後に、東電旧経営陣の勝俣、武黒、武藤の3被告が入廷。

 第4回公判の証人尋問は、双方請求の証人で、東京電力の100%子会社である東電設計の社員久保賀也氏。東電設計は企画・調査から設計・監理まで行う土木、建築、電気・通信等に関するコンサルティング会社。久保氏は、同社の土木本部構造耐震グループに所属し、事故の3年前の平成20年に福島第一原発の津波想定を15.7mの津波高とまとめた津波計算などの技術責任者を務めていました。
 
 双方請求の証人尋問の流れは、まず、検察官役の指定弁護士、石田弁護士による主尋問。
 次に、これに対する、被告弁護人の宮村啓太弁護士の反対尋問。
 そして、被告弁護人の宮村啓太弁護士による弁護側主尋問。
 次に、これに対して、検察官役の指定弁護士の石田弁護士が反対尋問。
 最後に、永渕健一裁判長、今井裁判官ら3人の裁判官による尋問、の順に休廷をはさんで行われました。

 まず、検察官役の指定弁護士の石田省三郎弁護士による主尋問

 「何の仕事をしていたか」の問いに「耐震バックチェックの一環で地震の随伴事象である津波の検討、1Fと2Fの津波評価を業務委託を東京電力から依頼された」。「最初の依頼はいつ頃か」の問いに「平成19年(2007)11月に業務委託の打診があり、協議の都度文書で確認し、契約仕様書(発注書)をつくった」、その際のカウンターパートナーは、東京電力原子力設備部の金戸氏で業務委託依頼もこの金戸氏で、協議の場に必ずいたこと。成果物は「黒ファイル」にして東京電力に提出したこと、などを証言しました。

 石田弁護士は、書証の「白ファイル」と呼ばれる「業務品質文書管理台帳」「設計管理表」などに記録された出席者名や協議内容の全記録、メールなどを示して、これらの経緯を詳しく尋ねました。
 久保氏は、管理職として他の2人と3人で、15.7mの津波高シミュレーションを行い、平成20年(2008)3月、最大で15.7mを超える可能性がある速報値を金戸氏や高尾氏らに面会して手渡したこと。この際「東京電力には津波対策などの問題は残ると言われたが、結果は受領され、今後の検討については別途指示があるまで保留することになった」と証言しました。 また、同年4月、10m盤の上に10mの防潮堤を作る鉛直壁でどこまで津波高が来るかの試算依頼に対して、試算を金戸氏らに手渡したことを証言しました。

 弁護側が疑問を呈する平成14年(2002年)の文部科学省地震調査研究推進本部による地震活動の長期評価についても、平成19年(2007)11月時点で、「長期評価、新しい知見として取入れることが決まった訳ですね」との問いに、「そうです」と証言しました。

 さらに、15.7mの津波高シミュレーション後、東京電力から東電設計に対して「なんとか津波高を解析で小さくならないか」「解析上の摩擦係数の見直しできないか」と検討依頼があり、証人は「数値は土木学会の手法に則っているので、変更はできない」と断ったこと。解析条件を変えて試算したが、数値は15mを超え変わらなかったこと、などを証言しました。
 また、当初から、東京電力との協議には、土木グループばかりでなく建築グループも参加していたこと、連絡を取りあってやってきたことも証言しました。

 次に、被告弁護人の宮村啓太弁護士による反対尋問と弁護側主尋問

 東京電力から東電設計への委託業務目的について、「最終的バックチェックでもないですよね」との問いに、証人は「津波高15.7mを上回るものがあるかもしれないので、最終的ではないです」と証言。
 平成26年(2014)に証人が作成した防潮堤のシミュレーション図3点が示され津波高シミュレーションについて、「波源モデルL67で津波はどうなるのか」など画像を使って強調。
 海抜10m以上の津波が打ちつける部分、敷地南部、北部と、中央のごく一部だけにのみ防潮壁を作り、東北地方太平洋沖地震の津波が襲来したらどうなるかを計算すると、敷地の広範囲に浸水するため、「対策をとっていても事故は避けられなかった」。さらに、東北地方太平洋沖地震の津波が全く敷地に遡上しないようにするためには、高さ何mの防潮壁が必要だったかのシミュレーションでは、最大で高さ23m以上が必要だった、被告側の主張を支えるものです。
 これらの津波高シミュレーションは、検察審査会が「起訴相当」の1回目の議決を出した2014年7月の後で、事故から3年後に東京電力が東電設計に発注し作成され、東京地検に提出されたもので、証人は、「高尾さんが東京地検に提出するために作った」とし、「平成26年(2014)11月に地検に提出されたので、その1ヶ月前か」と証言しました。

 これに対して、検察官役の指定弁護士の石田弁護士が反対尋問
 海抜10m以上の津波が打ちつける部分、敷地南部、北部と、中央のごく一部だけにのみ防潮壁を作るシミュレーションについて、「実際に、ブツッと切れる壁を、敷地の一部だけに防潮壁を作るという対策が、工学的にありうるのか」の問いに、「弱いところ」と答え、「あまり考えられないのでは」という問いに「そうですね」と証言しました。その上で、波源モデルL67のシミュレーションは、「理学屋が先頭になってつくっている」と証言しました。
 また、東北地方太平洋沖地震の津波が全く敷地に遡上しないようにするためには、高さ23m以上の防潮壁が必要となるとの主張について、それはごくわずかの区間だけであることを石田弁護士が示し、証人も、高さ10mで全周を覆っていれば「(事故防止に)一定の効果があった」と証言しました。
 
 永渕健一裁判長、今井裁判官ら3人の裁判官による尋問。
 「現実的に設置可能案の依頼はあったか」の問いには「現実的な案は別な部門でつくる」と証言。
 「平成20年の報告書は、東電の担当者以外、知らせなかったのか」と問いには、「どこから耳に入ったのか、本部長と社長からどうなっているのか訊かれ、説明したことがある」と東電設計の土木本部長と社長に説明したことを証言。「最大15.7m」の衝撃が明白になりました。
 永渕裁判長は、東京電力に提出した際の担当者とのやり取りについて、「具体的にどのような発言があったのか、反応は覚えていないか」と尋ね、証人は苦笑いして「津波対策が必要だという話題は出たが、それ以上のやりとりやどのような様子だったかはおぼえていない」と答えました。

 最後に、裁判長が「次回期日4月10日」として閉廷しました。

 ●6月までの公判期日は、以下の通りです。(全て10:00〜17:00)
 4/10(火)、4/11(水)、4/17(火)、4/24(火)、4/27(金)、
 5/8(火)、5/9(水)、5/29(火)、5/30(水)、
 6/1(金)、6/12(火)、6/13(水)、6/15(金)


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by kazu1206k | 2018-03-04 19:39 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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