高度プロ制度創設など働き方改革法案に反対、日弁連
2018年 03月 28日
安倍内閣による、今国会での「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」の提出に反対しています。
●高度プロフェッショナル制度を創設する法案の国会提出に反対する会長声明
政府は、第196回通常国会に、企画業務型裁量労働制の拡大や特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設を含む「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案」の提出を予定していたところ、本年3月1日、安倍首相が、企画業務型裁量労働制の拡大については、今通常国会に法案を提出しないと発表した。他方、高度プロフェッショナル制度創設については、依然法案を提出予定であると述べている。
企画業務型裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度の創設は、2015年の第189回通常国会に提出された労働基準法改正案にも盛り込まれていたものの、実質審議が行われないまま廃案となったものである。当連合会は、2017年11月22日付け「働き方改革を推進するための労働基準法の一部改正案の国会提出に反対する会長声明」において、企画業務型裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度の創設について、長時間労働を助長しかねない内容を含むものであり、労働者の命と健康の保持の視点からすれば、これをそのまま法制化すべきでなく、法案が国会に提出されることに反対する声明を公表している。
政府は、企画業務型裁量労働制の拡大について、第189回通常国会以来、「厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く者の労働時間の長さは、平均的な者で比べれば、一般労働者よりも短いというデータもある」との説明により正当化してきた。しかし、今通常国会においては、政府は、このデータが不正確なものであるとして、答弁を撤回し、企画業務型裁量労働制の拡大について法案から削除するに至っている。政府が不正確であることを認めたデータは、高度プロフェッショナル制度導入の根拠としても利用されていたものである。根拠資料の不正確性が明確になった以上、労働時間規制を全面的に排斥する高度プロフェッショナル制度を創設する立法事実、正当化根拠は、疑わしい状況となっている。
当連合会は、2014年11月21日付け「労働時間法制の規制緩和に反対する意見書」においては、高度プロフェッショナル制度のような労働時間規制の適用除外制度を創設することの問題点を詳細に指摘し、労働時間規制の緩和に反対する意見を述べている。当連合会は、高度プロフェッショナル制度の危険性を改めて指摘するとともに、同制度を創設する法案を国会に提出しないことを求める。
2018年(平成30年)3月8日
日本弁護士連合会
会長 中本 和洋
●働き方改革法案の「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」部分についての意見書
2018年3月15日
日本弁護士連合会
本意見書の趣旨
政府は、2017年9月15日、労働政策審議会の「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案要綱」(以下「要綱」という。)をおおむね妥当とする意見をうけて、要綱に基づく法律案(以下「働き方改革法案」という。)を今通常国会に上程し、法律の成立を図るとしている。
要綱に基づく働き方改革法案により、有期契約労働者、短時間労働者及び派遣労働者の低い労働条件を改善するため法整備をすることは評価するものである。
しかし、当連合会のこれまでの意見にもかかわらず、要綱は、有期契約労働者、短時間労働者及び派遣労働者の労働条件を改善するため法の趣旨の明確化やその実効性を担保するための方策について、さらに慎重に審議すべき課題も少なくない。そこで、今国会における法案の審議に当たり、働き方改革法案について、改めて、以下のとおり意見を述べる。
1 働き方改革法案の通称は、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保法」とすべきである。
2 「不合理な待遇の禁止」と「均等待遇」の関係につき、労働契約法20条の均等待遇の適用が後退しないように規定を定めるべきである。
3 法的効力の問題について、以下のとおり規定すべきである。
(1) 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部改正(以下「パート労働法」という。)の「不合理な待遇の禁止」規定が私法的効力を有することを明確化し、「差別的取扱禁止」規定については労働契約の内容を補充する効力を有するか否かを条文上明確に規定すべきである。
(2) 労働者派遣法の一部改正についても、「不合理な待遇の禁止」規定が私法的効力を有することを明確化し、「正当な理由がなく不利なものとしてはならない」とする規定については労働契約の内容を補充する効力を有するか否かを条文上明確に規定するべきである。
4 派遣労働者に関する労使協定について、実効性を担保するための手続や賃金水準などを明確化すべきである。
5 司法による判断のための訴訟支援策(労働審判や日本司法支援センターの教示など)を設けるべきである。
