エネルギー基本計画に対する日弁連の意見書
2018年 06月 18日
第5次エネルギー基本計画は、「基本計画が描く将来像は内外の潮流から大きくずれており、変革期の道標たりえない。まず目標自体を見直すべきだ。原発の比率を大幅に引き下げ、再エネは逆に引き上げる必要がある」(朝日新聞社説)と批判されるように、福島第一原発事故の収束すらおぼつかないにもかかわらず、2030年の電源構成を原発20-22%、再生可能エネルギー22-24%と従来の目標を維持し、停止中の原発を再稼働させるという方針であり、看過し難いものです。
●意見書の趣旨
第5次エネルギー基本計画は、2050年までに温室効果ガスの排出量を80%削減するという我が国の長期目標に向けて、以下の点を明確にし、パリ協定の目的と整合したものとすべきである。
1 福島第一原発事故の経験から、原子力発電所の稼働、新増設を前提とするのではなく、原子力からの脱却を前提とする計画とすべきである。
2 脱炭素を実現するため、石炭火力発電からの脱却を明確に位置付けるべきである。
3 速やかに再生可能エネルギーの主力電源化を実現するために、2030年の電力供給に占める再生可能エネルギーの割合を30%以上に引き上げるべきである。また、その拡大に当たっては、太陽光・風力について蓄電池や水素等と組み合わせた「再生可能エネルギー・電力貯蔵系システム」をコスト検証の対象とするのではなく、再生可能エネルギーの送電網への優先接続、既存送電網の活用及び地域分散型電源に対応した送電網の拡充など、地域分散型のエネルギー需給システム構築のための政策を積極的に推進するべきである。
4 省エネ対策の一層の強化及び脱炭素化を促進する野心的な炭素の価格付け政策を早急に導入するべきである。
5 エネルギー基本計画は、国民への十分な情報開示と、国民の意見が政策の立案・策定において実質的に反映されるプロセスの下で策定されるべきである。