憲法改正手続法の抜本的な改正を求める日弁連声明
2018年 06月 27日
これを受けて、日本弁護士連合会は、6月27日、テレビ、ラジオの有料意見広告規制及び最低投票率制度など、「提出された憲法改正手続法改正案には、見直すべき重要な課題が取り上げられていない。改めて憲法改正手続法の抜本的な改正を求める」との「憲法改正手続法改正案の国会提出に当たり、憲法改正手続法の抜本的な改正を求める会長声明」を公表しました。
憲法改正手続法改正案の国会提出に当たり、憲法改正手続法の抜本的な改正を求める会長声明
本日、日本国憲法の改正手続に関する法律の一部を改正する法律案(以下「憲法改正手続法改正案」という。)が国会に提出された。憲法改正手続法改正案は、駅や商業施設に共通投票所を設置するなど、2016年の公職選挙法の改正に伴い導入された投票環境向上のための7項目にわたる規定の整備である。
当初、この7項目に加え、憲法改正手続法改正案では、今国会に提出される予定の公職選挙法改正案の郵便投票の対象拡大も検討するとされていたが、この提案は見送られている。投票環境向上のための方策として、郵便投票の対象拡大も十分に検討されるべきである。
当連合会は、憲法改正手続法に関して、以下の8項目の見直しを求めている(2009年11月18日付け「憲法改正手続法の見直しを求める意見書」、2018年5月25日定期総会「憲法9条の改正議論に対し、立憲主義を堅持し、恒久平和主義の尊重を求める立場から課題ないしは問題を提起するとともに、憲法改正手続法の見直しを求める決議」)。①原則として各項ごと(場合によっては条文ごと)の個別投票方式とすること、②公務員・教育者に対する運動規制は削除されるべきであること、③組織的多数人買収・利害誘導罪の設置は削除されるべきであること、④広報協議会は賛成派と反対派の委員を同人数とすべきであること、公費による意見広告は幅広い団体が利用できる制度にすべきであること、有料意見広告については、賛成派と反対派の意見について実質的な公平性が確保されるよう、慎重な配慮が必要であること及び広告禁止が国民投票の期日前14日となることが適切であるか十分に検討されるべきであること、⑤発議後国民投票までの期間は最低でも1年間は必要であること、⑥最低投票率の規定は必要不可欠であり、また、無効票を含めた総投票数を基礎として過半数を算定すべきであること、⑦国民投票無効訴訟の提起期間の「30日以内」は短期にすぎ、また少なくとも全国の各高等裁判所を管轄裁判所とすべきであること、⑧合同審査会や両議院の議決が異なった場合に開くことのできる両院協議会は各議院の独立性に反するので国会法の改正部分は削除されるべきであること。
以上の8項目のうち、とりわけ憲法改正手続法成立時の参議院の附帯決議において、施行までに必要な検討を加えることが求められている、テレビ、ラジオの有料意見広告規制及び最低投票率制度については、上記のような見直しが早急に必要である。
憲法9条の改正など、憲法改正に向けた議論が始まりつつある中、今般提出された憲法改正手続法改正案には、見直すべき重要な課題が取り上げられていない。よって、当連合会は、改めて憲法改正手続法の抜本的な改正を求めるものである。
2018年(平成30年)6月27日
日本弁護士連合会
会長 菊地 裕太郎