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(仮称)遠野風力発電事業で要望書提出

7月23日午後、日本野鳥の会いわき支部は、(仮称)遠野風力発電事業について、いわき市長宛の要望書を提出しました。
同支部は、風車設置計画の入遠野地区周辺に、「種の保存法」で国内希少野生動植物種に指定され、環境省と福島県レッドリストで絶滅危惧ⅠBに指定、国内で1,800羽程度の生息とされるクマタカの繁殖状況および営巣木が、風車27基の最南端の風車からは2.83kmしかないことを確認していました。
繁殖期・非繁殖期に係らず、極めて局地的な行動圏での生息が裏付けられるため、風車設置におけるバードストライクを危惧し、事業計画の撤回を求め平成30年7月3日、事業者であるアカシア・リニューアブルズ株式会社に対して意見書を提出。また環境大臣には7月12日、福島県知事には7月13日、それぞれ要望書を提出しています。
今回、いわき市には、クマタカ繁殖地がいわき市にとっても貴重な環境であることから、いわき市として出来る限りの措置を講じるよう求め、福島県に対して、国内希少野生動植物種に指定されているクマタカ生息地の保護について、「種の保存法」に基づき必要な措置を講じるよう求めて頂くとともに、事業者に対して事業計画の撤回、もしくは立地計画の見直しを求めるよう要望したものです。
要望書は、渡辺副市長が受け取り、私も同席しました。以下に、要望書を掲載します。

(仮称)遠野風力発電事業に対する要望書

平成30年7月23日

いわき市長
清水 敏男 様

日本野鳥の会いわき支部
支部長 川俣 浩文

 日本野鳥の会いわき支部は、(仮称)遠野風力発電事業における環境影響評価についての専門家ヒアリングを平成29年10月17日、環境影響評価を受け持つ国際航業技術本部、および配慮書作成を受け持つ東洋設計新エネルギー部から受けました。

 その中で当支部は、風車設置が計画されている入遠野周辺に生息する鳥類リストを提示するとともに、環境省ならびに福島県レッドリストにおいても絶滅危惧ⅠBに指定される、クマタカの繁殖状況および営巣木についても具体的な情報を提示し、出現記録や餌運び行動などの現地調査を当支部と連携して実施するよう提案していましたが、明確な回答がないまま現在にいたっています。

 そこで当支部は、当該事業における風車の具体的な配置計画を把握するため、平成30年6月7日、いわき市役所1Fロビーで、(仮称)遠野風力発電事業の方法書を縦覧し、クマタカが営巣する位置から風車27基の距離をGoogle Earthの定規機能を用いて計測したところ、最南端の風車からは2.83kmしかないという、極めて近距離での繁殖であることを確認いたしました。

 当支部における当該事業計画地域に近接して繁殖するクマタカの調査は、平成28年から平成30年にかけて実施しており、平成28年と平成30年のいずれにおいても同じ営巣木の巣を使って抱卵・育雛を行っていました。また、平成30年6月4日の調査では、日齢15日程度の巣内雛も確認しました。=参考資料1,2

 クマタカは、環境省ホームページの報道発表資料 「平成16年8月31日掲示の希少猛禽類調査(イヌワシ・クマタカ)の結果について」では、国内に1,800羽程度が生息するとされる極めて希少な猛禽類で、環境省では絶滅危惧ⅠB類(EN)に、ふくしまレッドリスト2017年度版においても絶滅危惧ⅠB類に指定されています。また、「種の保存法」で国内希少野生動植物種に指定されているタカ科8種の中の1種でもあります。

 このように希少な猛禽類のクマタカは、一腹卵数が1個、かつ一年おきの繁殖であり、また極めて繁殖率が低く、繁殖成功率は33.2%(クマタカの繁殖成功率とそれに係わる環境要因:日本鳥学会2015田悟、鈴木、白井、山岸ら)とのデータもあります。

 これらの事から平成29年10月13日付の同省ホームページでは、当該事業に対する環境大臣意見として、「風力発電設備への衝突事故や移動経路の阻害等によるクマタカ及びイヌワシ等鳥類への影響を回避又は極力低減すること等を求めている」このように求め、経済産業大臣に提出したとありました。=参考資料3
 また平成29年10月13日付の環境省ホームページには、「別表 希少猛禽類調査(イヌワシ・クマタカ)の生態等に関する結果概要」=参考資料4=で、クマタカペアの行動圏や亜成鳥行動圏についても詳細に記述されています。

 この情報をもとに当該事業での風車設置配置計画にクマタカ営巣木との位置関係を当てはめてみると、事業計画地と極めて近い位置に営巣=参考資料5「繁殖期におけるクマタカペアの行動圏」=していることが確認でき、計画通りに事業が進められた場合、風車が稼働している限り、成鳥はもとより巣立ち後の幼鳥に対してもバードストライクなどの深刻な事案の発生が危惧されます。

 そこで当支部は、同地におけるクマタカが、1年おきに同じ営巣木を使って繁殖している実態が確認できていることや、非繁殖期においても同地での飛翔が頻繁に見られる事から、繁殖期・非繁殖期に係らず、極めて局地的な行動圏での生息が裏付けられるものとして、風車設置におけるバードストライクを危惧し、事業計画の撤回を求め平成30年7月3日、事業者であるアカシア・リニューアブルズ株式会社に対して意見書を提出。また環境大臣には7月12日、福島県知事には7月13日、それぞれ要望書を提出したところであります。

 いわき市へは、以下の理由により次の事を要望いたします。




【いわき市への要望】

 いわき市は、当支部による計画区域周辺のクマタカ繁殖調査結果を重要な情報として認識され、クマタカ繁殖地がいわき市にとっても貴重な環境であることを考慮の上、いわき市として出来る限りの措置を講じるよう求めます。また、福島県に対し、国内希少野生動植物種に指定されているクマタカ生息地の保護について、「種の保存法」に基づき必要な措置を講じるよう求めて頂くとともに、事業者に対して事業計画の撤回、もしくは立地計画の見直しを求めるよう要望して頂きたい。

【理由】

 (仮称)遠野風力発電事業計画区域(以下、計画区域)に近接する場所で、環境省及び、ふくしまレッドリスト2017年度版においては絶滅危惧ⅠB類に、また国内希少野生動植物種に指定されているタカ科8種の中の1種であるクマタカが、同じ営巣木を使って一年おきに繁殖している実態が確認できていること。及び、以下の1から2の理由においても、守るべき周辺環境であることは明白であると考えます。

1.計画区域周辺では、環境省および福島県レッドリストにおいても絶滅危惧Ⅰ類に指定されているブッポウソウが、また環境省では絶滅危惧Ⅱ類で福島県レッドリストにおいては準絶滅危惧に指定されるサシバなど、絶滅が危惧される野鳥だけでも16種が確認されています。計画区域周辺が渡り鳥の貴重な繁殖地であり、かつ渡りの中継地としても重要な環境にあること。
2.計画区域一帯は、クマタカをはじめ、サシバ、ハチクマ、オオタカ、ハイタカ、ツミ、ミサゴなど絶滅危惧の猛禽類が飛翔するエリアであり、もし設置が計画通り進められた場合、バードストライクの危険性が極めて高いと考えられること。 
以上
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by kazu1206k | 2018-07-23 23:16 | 環境保護 | Comments(0)