若者が未来に希望を抱く社会の実現へ、日弁連の決議

 日本弁護士連合会は、10月5日、「若者が未来に希望を抱くことができる社会の実現を求める決議」を人権擁護大会で採択しました。
 日本弁護士連合会は、「一人ひとりの若者が自分の人生や生き方を自己決定できる機会を保障し、若者が希望をもって今を生き、自由な再チャレンジが保障されることで未来にも明るい希望を抱ける社会の実現に向けて、国及び地方公共団体に対し、次の施策の実施を求める」として、  「1 普遍主義の社会保障・人間らしい労働と公正な分配」「2 連帯による財源の確保と税制の改善」を示しています。以下に、ご紹介します。

若者が未来に希望を抱くことができる社会の実現を求める決議

若者の時期は、子どもから大人へと成長し、アイデンティティを見出し、より高度な教育を受け、職業を選択するなど、多様な個性を持ちつつ試行錯誤をしながら数多くの人生の選択をするかけがえのない時期である。また、民主主義の担い手として社会に参加を始める時期でもある。  

ところが、日本では、家庭の所得と学歴との相関性が高く、「生まれた家庭」の経済力によって受けられる教育が左右されており、高等教育における学費の高騰等により進学できない若者も少なくない。また、規制緩和が進められた労働市場においては、試行錯誤や再チャレンジをしながら自分らしい職業を選択することは容易ではなく、賃金が低く雇用の継続性においても不安定な非正規雇用で働く若者も多い。これらの若者は職業訓練を受ける機会も乏しく、不安定な雇用から抜け出すことも容易ではない。住宅にかかる費用が高額なため、親元を離れ、独立した生計を営むことができない若者も増えている。結婚して子どもを持つことは、子育て支援も乏しく、若者にとってリスクのある選択となっている。日本の教育機関に対する公的支出の対GDP比はOECD加盟国中最低レベルにあり、家族関係社会支出(各国が家族手当、出産・育児休業給付、保育・就学前教育、その他の現金・現物給付のために行った支出)もイギリス、フランス等の3分の1程度でしかないなど、若者の支援は限定的である。若者がひとしく自ら人生を選択し自己を実現することができる社会構造とはなっておらず、自己の参加によって、生きづらいとされる社会の変革に立ち向かう意欲も持ち得なくなっているとさえ指摘されている。  

国の調査によれば、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン、韓国、日本の7か国の中で、職場や自分自身に満足していない若者や憂鬱だと感じている若者が最も多いのが日本であり、自己の社会参加により社会を変えられると思う若者が最も少ないのが日本である。そして、将来について、「希望がある」と答えたのは、主な国が4割~5割であるのに対し、日本の若者は約1割にすぎない。  

このような若者が置かれている状況に影響を及ぼしている背景の一つとして、「自己責任」という政策動向が考えられる。日本の社会保障制度において、近年、「自助」、「共助」が強調され、社会保障費を削減する動きが強まっている。また、労働分野では規制緩和が進み、自由競争が強まっている。

こうした傾向が強まった日本の社会において、多くの若者が生きづらさや将来の不安を「自己責任」の中に押し込めてしまい、何も変わらないと感じているとさえ思われる。  

しかし、こうした現状は、個人の尊厳原理に立脚し幸福追求権について最大の尊重を求めている憲法13条、生存権を保障する憲法25条等に照らし到底看過することはできない。また、民主主義社会の危機である。  

そこで、当連合会は、一人ひとりの若者が自分の人生や生き方を自己決定できる機会を保障し、若者が希望をもって今を生き、自由な再チャレンジが保障されることで未来にも明るい希望を抱ける社会の実現に向けて、国及び地方公共団体に対し、次の施策の実施を求める。

1 普遍主義の社会保障・人間らしい労働と公正な分配
 (1) 若者が置かれた現状を改善するものとして、全ての若者が、「生まれた家庭」の経済力や性別など自ら選択できない条件に左右されることなく、試行錯誤をしながら、学び、就労し、生活基盤を構築できる公平な条件を整備するため、①就学前教育・保育から高等教育までの全ての教育の無償化、②出産・育児休業、家族給付などの給付の拡充、③尊厳ある生活を保障する水準の最低賃金、同一価値労働同一賃金の実現、④失業時の所得保障及び職業訓練制度の抜本的充実、⑤低所得者層のみの利用にとどまらない公営住宅の増設と家賃補助制度の新設をすべきである。
 (2) 若者が現在及び未来に希望を抱くことができるような制度、殊に保険料、一部負担金が納められないことにより、各種サービスや保障制度を利用できないことがないよう、①窓口負担のない税方式による医療・介護・障害福祉サービス、②尊厳を保障する水準の税方式による最低保障年金制度を構築すべきである。

2 連帯による財源の確保と税制の改善  
これらの若者の尊厳を支える労働環境及び社会保障制度は、若者だけでなく同時に全世代を支える意味合いを持ち、その実現には安定した財源の確保が不可欠である。そのためには、「生まれた家庭」の経済力や性別など自ら選択できない条件に左右されることがないように社会保障制度を充実させることにより、互いに租税を負担し連帯して支え合うことへの国民的合意を形成した上で、次の施策を実施することが必要である。
 (1) 所得税及び法人税については、税と社会保障による所得再分配機能の重要性及び応能負担原則に基づく実質的平等の確保の観点から、大企業及び投資家などに適用される種々の優遇税制を見直し、租税負担の公平性を高めるべきである。他方、生活費控除原則を徹底した課税最低限を設定すべきである。
 (2) 消費税については、低所得者の負担が重い逆進的な性格を有することから、税収構成及び予算配分において逆進性の弊害を低減するようにすべきである。
 (3) 保険主義の偏重を是正し、社会保障制度の税財源を強化すべきである。
 (4) 税収の流失を止め安定した財源を確保するため、実効的なタックス・ヘイブン(租税回避地)対策が必要不可欠であり、他国との連携により対策を強化すべきである。  

当連合会は、税制、社会保障制度、労働法制等を審議する政策形成に際して、若者が当事者、主権者として意見を述べて社会に参加し、社会に影響力を及ぼし得る環境、場が確保できるよう努めるとともに、若者が現在、そして未来に希望を抱くことができる社会が築けるように、社会保障制度及びこれを実現する予算配分とその財源の在り方に関するグランドデザインを作成し、広く市民の議論に供し、その実現に向けて国に対する提言等を行うこと、並びに実現に向けた過程において、関連する各分野の行政手続に弁護士が積極的に関与していくことを決意する。  

以上のとおり決議する。


2018年(平成30年)10月5日
日本弁護士連合会
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by kazu1206k | 2018-10-09 12:38 | 議会 | Comments(0)