福島原発刑事裁判が結審、指定弁護士が見解
2019年 03月 13日
3月12日、福島原発事故の責任を問う東電元経営陣3被告の刑事裁判は、第37回公判の被告人最終弁論を迎え、2017年6月30日の第1回公判以来、1年8ヶ月ぶりに結審しました。被告弁護人による最終弁論は、約4時間にわたって行われ、欺瞞的で事実とはかけ離れた展開となりました。
国の地震本部の長期評価は具体的根拠の信頼性と成熟性がない、「計算結果の根拠は信頼できるものではなく、土木学会に再度検討を依頼して、その見解に従うことが適正な手順で、問題の先送りではない。事故を予測できる可能性はなく、事故を防ぐこともできなかった」「想定できない地震によって津波が襲来した。事故を防止できる可能性はなかった」と、改めて無罪を主張しました。
傍聴席の遺族を無視して、聞こえない声で早口の弁護人に「聞こえない!」の声が上がり、最後に3被告が「何もありません」というに及んで「勝俣、責任とれ」「恥を知りなさい」との声も飛びました。
あまりの最終弁論に、検察官役の指定弁護士は、異例の「弁護人の弁論に対する指定弁護士の見解」を公表しました。(末尾に掲載)
また、福島刑事訴訟支援団弁護団の海渡雄一弁護士は、早速『弁護人ら弁論共通主張に対する反論』を公表。「櫛の歯防潮堤を作る計画など、どこにもなかった」「山下中越沖地震対策センター長が、2008年2月16日の御前会議で津波対策について説明し、了承を得た事実はないという大ウソ」とし、「弁護人の弁論は、ひと言で言えば、自分に都合の悪い証拠は全部無視して見ないことにし、都合の良い証拠と証言だけを抜き出して論じたものだといえる。そして、その内容はこれまでの公判をみてきた者には到底納得できない荒唐無稽なものである。そして、推本の長期評価、東電設計の計算結果、そして御前会議での説明と了承と津波対策が必要とされる状況が積み重なりながら、2011年3月11日まで、被告人らは、何の津波対策も講じなかったのである。土木グループの高尾氏らが必死になって対策を実現しようと努力しながら、結局何も具体化できなかったのは、被告人らが、原発という潜在的に極めて大きな危険を内包する技術を運用していた会社の経営者としての責務を自覚し、安全を第一する規範に基づいて行動していなかったからである。被告人らは、有罪である。そして、その責任は極めて重い。この期に及んで、責任を否定し続ける被告人らの無反省な態度に対して、裁判所は厳しい有罪判決で鉄槌を下すべきである。」と結論づけしました。
9月19日の東京地裁判決を有罪で勝ち取るために、各地での報告会や地域・街頭で、厳正な判決を求める署名を拡大し、厳正判決を求める世論を盛り上げましょう。
4月21日午後は、福島県郡山市の郡山市労働福祉会館で「厳正判決を求める福島県集会」が開催されます。多くの皆様のご来場を呼びかけます。
「弁護人の弁論に対する指定弁護士の見解」
2019/3/12
弁護人の主張は、要するに東側正面から本件津波が襲来することを予見できず、仮に東電設計の試算結果に基づいて津波対策を講じていたからといって、本件事故は、防ぐことはできなかったのだから、被告人らには、本件事故に関して何らの責任はないという点につきています。
しかし、被告人らは、東電設計の計算結果があるにもかかわらず、これに対して何らの措置も講じていません。土木学会に検討を委ねたといいながら、その後、何らの関心すら注いでいません。
何らかの措置を講じていればともかく、何もしないで、このような弁解をすること自体、原子力発電所といういったん事故が起きれば甚大な被害が発生する危険を内包する施設の運転・保全を行う電気事業者の最高経営層に属する者として、あるまじき態度と言うほかありません。
弁護人は、「長年にわたって積み重ねられてきた判例学説によって画される犯罪の成立範囲の外延を踏まえ」ると、「業務上過失致死傷罪が成立しない」と主張していますが、本件のような原子力発電所事故に適用される「犯罪の成立範囲の外延」とは何かということが、まさしく問われているのです。
