行政視察ー浜松市風力発電施設に関するガイドライン
2019年 04月 19日
調査事項は、「浜松市風力発電施設に関するガイドライン」について、です。
いわき市における陸上風力発電事業は、平成31年3月末現在において、1事業・13基の風力発電機が稼働中で、7事業・最大154基の風力発電機の設置が計画されています。計画中の事業の環境影響評価法に基づく手続状況は、計画段階環境配慮書の段階が1事業、方法書の段階が3事業、準備書の段階が3事業となっており、市は事業者や県に対して、周辺住民の理解の醸成、環境全般への影響の回避・低減の上で、環境保全に十分配慮しながら進めるよう意見をしています。
いわき市は、産業振興策として、県内・市内の風力発電施設の整備計画を踏まえ、風力メンテナンス業務等の風力関連産業を本市の基幹産業の1つとして育成するとして、福島イノベーション・コースト構想を進める国・県と連携を図り、連携協定を締結した国立大学法人東京大学先端科学技術研究センターや風力関連中核的企業のネットワークを生かし、市内企業の風力関連産業参入に向けた技術力・人材力を高める取り組みを進めています。
こうした中で、建設工事による、大規模な自然環境の改変、土地の改変による雨水への影響、土砂の流出や周辺中小河川での土石流の発生、生活用水への影響のほか、山岳縦走ルートの登山道と景観の改変、長期間の工事による騒音等、隣接地域の生活環境への影響、希少野鳥の繁殖活動の阻害や動植物全般への影響等が考えられるため、市民の間では、計画地の周辺住民や自然保護団体、山岳愛好団体などから、周辺住環境の保全と災害の未然防止、クマタカなどの国内希少野生動植物種や生態系の保護、山岳登山ルートの確保、環境全般への影響の回避を求めて、風力発電事業計画の見直しの要望や反対の声が上がり、運動も進められています。
浜通りには、陸上風力200基という集中立地の環境負荷が大きく、住民との紛争に発展する可能性もあり、導入促進エリアと環境保全エリアのゾーニングが必要です。
このため、先進事例に学び、環境と地域に配慮した合意形成のために、いわき市でも早急に風力発電事業に関するゾーニング計画等に着手すべきとの視点から、平成18年に「浜松市風力発電施設に関するガイドライン」を策定し、ゾーニング(法的規制・生態系等の環境面、地域理解等の社会面、施工環境等の事業性を総合的に評価して、環境保全を優先すべきエリア、風力発電導入が可能なエリア等に分けるもの)をまとめた「浜松市風力発電ゾーニング計画書」と「風力発電ゾーニングマップ」を平成31年3月に公表した、浜松市を調査したものです。
浜松市産業部エネルギー政策課の江馬正信課長補佐から、ご説明いただきました。
以下は、その概要です。
⑴浜松市のエネルギー政策
⒈浜松市の概要
①市の概要ー人口約80万人、平成17年に12市町村合併、平成19年に政令指定都市。
②課題ー人口減少・少子高齢化、膨大なインフラ資産の更新経費、社会保障費の増加、ものづくり産業の停滞
⒉浜松市のエネルギー政策
・自動車産業ー電力消費量
・新エネルギー推進事業本部ー2012年4月設置
・2013年3月浜松市エネルギービジョン策定
ー再生可能エネルギーの導入、省エネ推進、電力自給率目標 2030年度:20.3%
・太陽光発電の導入推進、実績は導入日本一
・課題と対策
ー太陽光発電施設設置に関するガイドラインの整備、法制化後のメンテナンス事業
ー土砂崩れ等による住民反対、地域合意の必要性
・太陽光発電に続く再エネの可能性
ー風力発電:ゾーニング調査(環境省委託)、陸上と洋上
・木質バイオマス発電、小水力発電
⒊株式会社浜松新電力
・再生可能エネルギーの地産地消
・総合エネルギーサービス事業、太陽光メンテナンス事業
⒋浜松市スマートシティ推進協議会
・スマートコミュニティ
ー中区エリアプロジェクト、浜北区エリアー区役所跡地利用・スマートマンション、天竜区エリア
⑵浜松市風力発電ゾーニング計画
⒈はじめに
①ゾーニング計画策定の背景と目的
ー平成29年度から環境省の委託により、地域とのトラブルの回避、風力発電に適さない土地への事業計画を事前に防ぐこと等を目的。
風力発電は、立地にあたって、 地域住民や関係団体との合意形成、適地の抽出や環境への配慮等事業実施にあたっての課題は少なくない。
現在、風力発電を円滑に導入するための手法として、環境面だけでなく経済面、社会面も統合的に評価して再生可能エネルギー導入が可能なエリア、環境保全を優先するエリアの設定を行うゾーニングが国内外において、注目されている。
本計画では、浜松市全域 における陸上風力発電及び浜松市地先の海域における洋上風力に係るゾーニングを行い、地域住民の理解の上で、立地を避けるべきエリア、導入が見込まれるエリアとその課題を明確にし、浜松市における地域共生の上にたった風力発電の適正な導入を促進することを目的。
⒉ゾーニングマップの活用
・ゾーニング計画の位置づけ
ー個別事業の実施に先立ち市が地域との調整を行いながらゾーニングを行うことで、次の点に期待。
1事業者は具体的な見通しを持って、円滑に事業を実施できる。
2地元住民は早期段階から地域における風力発電の在り方の検討に関与できる。
3これらを踏まえ、地方公共団体は環境に配慮した形での再生可能エネルギーの導入促進とそれによる地域の活性化などを図ることができる。
⒊検討の流れ・地域意見の反映
ーヒアリング
・検討は、既存資料の収集・解析結果より、各エリアの設定条件を検討。 ゾーニング計画の各検討段階で、専門家や地域のステークホルダーの意見を聴取する協議会、分科会を設置、意見聴取及び討議を実施。
・現地調査・関係機関との協議・有識者や地域へのヒアリングの実施、 各エリア設定条件の精査、各エリアの条件設定見直し及び各エリア抽出を行い、ゾーニング素案は、地域説明・勉強会や意見聴取を通じて、広く市民のご意見を取り入れ、頂いたご意見を反映してゾーニング計画を策定した。
・陸上ー水源、過去の崩落
・海上ーしらす漁
⒋陸上風力ゾーニング
・検討のため、事業性(風況、傾斜、道路、電気設備系統など)、 土地利用状況(法令などによる指定地、建物等)、地形・地質、動植物、景観、文化財など既存資料を収集・整理、ゾーニングマップ及び各地区のカルテを作成。 協議会・有識者ヒアリング・地域ヒアリング等を実施し、関係者からの意見聴取。 景観や地すべり等・水源に関しては補足的に現地調査を実施した。
・ゾーニングマップの作成
ー19エリア、エリア分け
ー白地:現状の技術レベルでは、風力発電事業の実施が困難と想定されるエリア(想定される風況 5.5m/s 未満、最大傾斜角 20度以上、地上開度 90度未満)、
Aエリア:法規制や社会条件などにより立地が困難なエリア(風致地区、地すべり防止区域、建物からの離隔 850m圏内など)、
Bエリア:立地には課題があり、地元などとの調整が必要であるが、課題をクリアできれば、立地が可能となり得るエリア、
Cエリア:現時点で、立地に重大な課題は認められず、地元調整等に大きな支障が見込まれないエリア
⒌洋上風力ゾーニング
・検討のため、事業性(風況)、自然環境(水深、アカウミガメ 産卵地、生物多様性の観点から重要な海域、眺望点)、社会環境(港湾、海上交通、海上イ ンフラ、漁場利用、魚礁など)に関する既存資料を収集・整理し、ゾーニングマップ及び各地区のカルテを作成。協議会・有識者ヒアリング・地域ヒアリング等を実施し、関係者からの意見聴取を実施。アカウミガメ産卵地・漁場実態・海面利用状況は補足的に現地調査を実施した。
・漁協は、調査も反対。
⑶浜松市風力発電施設に関するガイドライン
①ガイドラインの目的
ー風力発電の施設及び施設建設に伴う送電線等の付帯設備の建設を行う事業者が遵守すべき事項や調整手順を明らかにする。
②対象
ー本市において風力発電施設等の新設、増設、又は大規模な改修を行う場合を対象とする。発電設備容量が100kW未満の風力発電施設等については対象外とする。
③建設等にあたっての調整手順
(1)市の窓口
(2)建設等に係る届出
(3)法規制に係る協議
(4)自治会の住民等への説明
ー事業者は、建設等に当たり、事前に近隣住民等に対し十分な説明を行うものとする。なお、発電設備容量が1,000kW以上で環境影響評価の対象事業になる場合には、自治会の同意を書面で得るものとする。
(5)専門家等の意見聴取
(6)浜松市風力発電施設等の建設等に関する庁内連絡会議への説明
(7)浜松市土地利用対策庁内委員会における審議
④建設等にあたっての基準
⑤建設等の工事中及び工事完了後においての調査
⑥設置後の維持管理等
⑦その他
・北区引佐(いなさ)の事例ー住民協定。
ーガイドライン策定は、引佐の事例に対応するため。
・ゾーニング計画策定は、2年間環境省事業でマップ作成。
ー北部は事業困難。希少生物イヌワシ、オオタカ。保安林の解除。水源涵養保安林は解除可能。
・風力発電については、ここ2年で、「導入促進」から「適正導入」に転換した。
