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原発事故の損害賠償と健康被害を考えるシンポ開く

 9月29日午後、郡山市のビックアイで、原発被害者の救済を求める全国運動による「原発事故の損害賠償と健康被害を考えるシンポジウム」が開かれました。
 2013年8月26日にキックオフした全国運動は、被害当事者・支援団体を始め、パルシステムや生活クラブなどの生協、貧困・平和・人権などの市民団体の運動と連携し、国会請願署名や政府交渉、集会など開催してきました。国会請願はこれまで4回取り組まれ約61万筆の署名を持って、第一期の活動では損害賠償請求の消滅時効の10年延長の立法化など一定の成果をあげましたが、住宅、健康、医療、保養など原発事故被害者をとりまく状況がは改善されず、原発事故子ども・被災者支援法は空洞化されています。
 2011年3月11日の東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から、8年6ヶ月たちましたが、未だ事故被害は続き、10年の原発賠償請求権の消滅時効も迫っています。また、原発事故発災当初の初期被ばくが「なかったこと」にされてしまった問題も浮上しており、二つの問題について考え、次の行動につなげるために、シンポジウムが開催されたものです。
 講演は、それぞれテーマ毎に、「原発事故後8年経過時の損害の実態と中間指針改定,時効延長の必要性」を浜通り法律事務所の渡辺淑彦弁護士、「津島訴訟」 を原告の三瓶春江さん、「東電刑事裁判が問うもの」を福島原発刑事訴訟支援団の佐藤和良団長、「東電刑事裁判無罪判決 裁判所はなぜ誤ったのか」を被害者代理人の海渡雄一弁護士が行い、質疑応答を行いました。
 休憩を挟んで、講演を続行し、「原発事故避難をあらためてふりかえる」を菅野みずえさん(浪江から兵庫県に避難)、「『なかったこと』にされた初期被ばくと甲状腺がん」を満田夏花さん(国際環境NGOFoEJapan)
「甲状腺がん当事者、家族と集いながら見える不条理」を千葉親子さん(甲状腺がん支援グループ・あじさいの会)、「モニタリングポストは私たちの知る権利」を片岡輝美さん(モニタリングポストの継続配置を求める市民の会)さんが行い、質疑応答後に、郡山市議会議員の蛇石郁子さんがまとめを行いました。

●渡辺淑彦弁護士(福島県弁護士会)の講演「原発事故後8年の損害の実態と中間指針改定、時効延長の必要性」
・裁判外紛争解決手続き(ADR)による和解仲介について、東電が集団申し立てを中心に和解案を拒否する事態が続いている。訴訟をやるしかない状況であること。避難弱者の問題は深刻、強制避難で亡くなった人は850人、双葉郡の7つの病院で60人が亡くなった。避難そのものが死に至る。避難すると血圧があがる。脳出血と脳梗塞により日常生活阻害、関連死が検証されにくい。
家族の分離による男性の孤立、1人10万で家族はよいが 1人世帯では10万でしかない。住居損害金は建てないともらえない。後遺障害、精神疾患などが賠償に反映されていない。多くの避難者が以前とかけ離れた生活状況に置かれ、情報格差などによって損害賠償の程度に不平等が生まれている長期避難による後遺症や営業損害の終期に関する規定などがあいまいだとして、原発事故から8年余たった中で改定すべき。

●東電刑事裁判が問うもの  
佐藤和良いわき市議会議員、海渡雄一弁護士
これほどひどい判決を予想していなかった。原発再稼働したい原子力村の救済と長期評価を否定する。事故が起きてもしょうがない。病院からの避難では、線量が高くて逆に避難できなくて死亡した。立証したのに反映されなかった。死者とその遺族に対する冒とくである。原発事故を繰り返さないためには、判決をこのまま確定させてはいけない。指定弁護士には控訴をしてもらい、必ずや正義にかなった高裁判決を勝ち取りたい。永渕健一裁判長の傍聴者への異常な荷物チェックや法廷内で水分もとらせないなど含め、許さない。

●津島訴訟からの報告  三瓶春江さん(福島原発事故津島被害者原告団)
・三瓶さんの津島地区は帰還困難区域、450世帯1600人が暮らしていた。母はシベリア抑留者で戦後、500人が津島に開拓入植した。「結」の文化で津島村は受け入れてくれた。 ふるさとを返せの意味について、東電は「これだけ賠償金ももらっているよね」という。私たちは故郷を返してほしいのだ。

●原発事故避難をあらためてふりかえる  菅野みずえさん(浪江から兵庫県に避難)
・「誰かが私にならないために」と考えて活動している。地域に根差した人は逃げれなかった。凄まじい外部被ばく。犬が吐血しつぎつぎと死亡した。自分自身も甲状腺がんを発症し手術を経験した。放っておけない。私にとって返してほしい「ふるさと」とは被ばくの危険がないふるさとなのだ。自主避難はどこから逃げたの問題ではない。福島だけでない。帰還困難区域だとか区域外避難を超えてつながっていく。

●「なかったこと」にされた初期被ばくと甲状腺がん  満田夏花さん(国際環境NGO FoE Japan)
・隠された初期被ばく➡原発事故後の直後、双葉町にいた11歳の少女が甲状腺に推計100ミリシーベルト程度の被ばくをしていたこと、避難者のスクーリングは3月14日には除染基準が13,000CPMから10万CPMに引き上げられたこと、ヨウ素剤の服用指示なし、原子力現地対策本部は、3月24~30日、飯館村、川俣町、いわき市の1.080人の子どもたちの甲状腺測定を行ったが、全員が100ミリシーベルトを下回ったため、それ以上の測定は行わなかった。避難指示区域からの避難者は「被ばくをしなかった」という理由で甲状腺の測定は行わず。
・原発事故後の対応により、原発事故被害が「見えない」、「責任が問えない」状況がつくりだされている。東電による公表の遅れ、メディアによる一面的報道、政治家の無責任な発言が、冷静な公論形成を阻んでいる。被害の「見える化」と事後後の対応の検証、対策に向けた冷静な議論が必要。

●甲状腺がん当事者、家族と集いながら見える不条理   千葉親子さん(甲状腺がん支援グループ・あじさいの会)
あじさいの会では、福島県庁を訪れ、甲状腺検査などについて要望書を提出している。県民健康健康調査で甲状腺がんが見つかり、手術を受けた女性は、甲状腺検査2巡目に関する報告書(案)について、「被曝との影響がないと結論づけるのは時期尚早だ」と指摘。初期被曝のデータはわかっていないことが多いとした上で、個人線量をきちんと把握してほしいと要望している。

●モニタリングポストの継続配置を求める市民の会からの報告  片岡輝美さん(共同代表)
「市民の声が国動かした」。2018年3月の撤去方針公表後、郡山市に事務局を置く市民団体「モニタリングポストの継続配置を求める市民の会」が撤去反対運動を展開し継続を約束させた。撤去ありきの方針発表がされてから、市民の会では3回に渡る申し入れを行い、住民説明会にも可能な限り参加するなど、規制庁とは何度も意見交換を行ってきた。
・更田原子力規制委員長は、「撤去方針や見解はいまだ変わらず」であること、あくまでも、「実行に移すのは見合わせる」のだということ、私たちの歩みはまだまだ続く・・・と。「市民の声が国を動かす。」市民の会の活動は続きます。

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by kazu1206k | 2019-09-29 23:05 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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