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「全漁業者の意見をきいて」海洋放出に県漁連、森林組合が反対

 4月6日午後、経済産業省による「第1回多核種除去設備等処理水の取扱いに係る『関係者の御意見を伺う場』が福島市で開催されました。
 これは、経済産業省資源エネルギー庁の汚染水処理対策委員会「トリチウム水タスクフォース」による「希釈後海洋放出」が最も短期間・低コストで処分できるとの処分方法報告書をを受け設置された「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(ALPS小委員会)が本年2月提出した「海洋放出の方がより確実に実施できる」とする報告書に対する意見を伺うというもので、「今後、政府としてALPS処理水の取扱い方針を決定するため、地元自治体や農林水産業者を始めとした幅広い関係者の御意見を伺う場」とされています。
 そもそも、「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」(ALPS小委員会)は、2018年の公聴会での「海洋放出されれば、福島県漁業が壊滅的打撃を受ける」という漁業者の声や多数の意見であった敷地内でのタンク貯蔵を継続する等の陸上保管の声を切り捨て、敷地不足を理由に陸上保管の継続に難色を示す東京電力の説明のまま、「地元の生活を犠牲にして廃炉を進めるのは論理が破綻している」「風評に大きな影響を与えないと判断される時期までの貯蔵が必要ではないか」等の委員の意見も無視して、本年2月に「海洋放出の方がより確実に実施できる」とする報告書を提出したのです。
 こうした経過から、経済産業省が「関係者」として何の基準や根拠も示さず恣意的に選んだと思われる自治体や産業界の代表者による意見表明という会になりました。「意思決定まで時間をかけるいとまはそれほどなく、できる限り速やかに処分方針を決定したい」」という、安倍総理大臣の3月10日の新聞発言に沿って、7月ごろまでにタンク貯蔵汚染水の海洋放出決定というスケジュールありき、「はじめに結論ありき」のセレモニーという状況がにじみ出ています。
 意見表明者は、福島県、福島県旅館ホテル生活衛生同業組合、福島県商工会議所連合会、福島県森林組合連合会、福島県漁業協同組合連合会、福島県町村会、相馬地方市町村会(相馬市長、南相馬市長、新地町長、飯舘村村長)でした。
 この中で、海洋放出に明確に反対したのは、福島森林組合連合会、福島県漁連です。
 福島県漁連の野崎会長は、要旨、次のように述べました。
 「ALPS小委員会の提言、すべて理解できた内容ではない。われわれとしては、なんでこのようなことが起きたんだ、ということに立ち返えってしまう。やはり原子力災害だ。われわれ福島県の漁業者は、地元の海を利用して、その海洋に育まれた魚介類を漁獲することを生業としてきた。震災後、地元で土着しながら生活を再建するということを第一に考えている。その観点から海洋放出を反対するものという考えに至らざるを得ない。国の廃炉に向けて進めてきた汚染水の総量を減らすため、地下水バイパス、サブドレンの排出に苦渋の想いで協力してきた。トリチウムを含んだ水については、関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない、というご回答をいただいている。それ抜きに信頼関係は成り立たない。沿岸漁業では、1魚種1検体の抽出検査を行い、試験操業を実施していきている。令和元年度の漁獲高は、震災前の14%。本年2月に出荷制限が解除され、今後、増産に向けて舵を切ろうとしている。9年で若い漁業者の参入が進んだ。今後彼らに将来を約束していくためにも、海洋放出に反対する。また、海洋に県境はない。意図的に海洋にトリチウムを放出することは、福島県の漁業者だけで判断することはできない。全漁業者の意見をきいてもらいたい。」
 また、他の5者のうち賛成は旅館ホテル生活衛生同業組合でしたが、「海洋放出は風評被害ではなく実害なので、処分終了まで補償が必要」としました。他は、概ね、「国が責任をもって判断すべき」「トリチウムの安全性について、国民の理解が高まるように十分な発信を」「十分な風評被害対策を」「補償を」というものでした。
 経済産業省は、『関係者の御意見を伺う場』の開催について、新型コロナウィルスの感染拡大により収束を待って開催するよう求める声を無視して、市民の傍聴を排除し報道関係の入場制限を行ってまで、開催を強行しています。第2回は、4月13日午前に福島市で、午後富岡町で、福島県商工会連合会、ヨークベニマル、福島県農業協同組合中央会、いわき市、双葉地方町村会なのど意見表明を予定しています。
 また、「書面での意見公募」を4月6日から5月15日まで受け付けるとしています。
 書面での意見公募要領は、以下参照ください。https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/opinion_point.pdf

以下は、FoE Japanの満田さんの発言概要メモです。

内堀県知事:
トリチウムの安全性を国がしっかり発信し、風評被害対策をとるべき

福島県旅館ホテル生活衛生同業組合:
放射性物質をまきちらすことは実害。残念だが、他県に持っていくことは信義に反する。水蒸気放出、海洋放出の2択であれば、海洋放出。しかし、これは実害なので、補償が必要である。
→意見書:https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/pdf/0406_01_03d.pdf

福島県商工会議所連合会:
原発事故の影響はいまだに甚大。国が先頭に立って、正しい情報発信をしなければならない。今朝のトリチウム水を放出したときの影響範囲のニュースについても懸念している。(海洋放出の是非についてははっきり言っていませんでした)

福島県森林組合連合会:
海洋放出には反対。森林除染については人家周辺のみ。森林内の放射性物質についての不安の声がある。森林所有者の経営意欲の低下などにより適正な森林管理が実施できない。多くの組合員はセシウム、トリチウムなどではなく、放射性物質として理解している。新たな放射性物質の放出は、やっと構築した信頼関係がなくなる。
質問(横山復興副大臣):いずれについても反対? 大気放出について反対?
福島県森林組合連合会:
私の事務所は富岡町。帰れない。まず働く人がいない。放出ということになれば、住民が帰れない、という不安がある。住民が帰れるような体制をとってほしい。大気放出も海洋放出も反対。

福島県漁業協同組合連合会(野崎会長):
ALPS小委員会の報告をすべて理解したわけではない。われわれとしては、なんでこのようなことが起きたのか、ということに立ち返らざるをえない。原子力災害だ。
福島県の漁業者は、地元の海洋に育まれた魚介類をとることを生業としている。海洋放出は反対せざるを得ない。
国の廃炉に向けて進めてきた汚染水の総量を減らすため、地下水バイパス、サブドレンの排出に苦渋の想いで協力してきた。トリチウムを含んだ水については、関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない、というご回答をいただいている。今後の信頼関係を維持するために重要。
沿岸漁業では、1魚種1検体の抽出検査を行い、試験操業を実施していきている。令和元年度の漁獲高は、震災前の14%。本年2月に出荷制限が解除され、今後、増産に向けて舵を切ろうとしている。9年で若い後継者の参入が進んだ。今後彼らに将来を約束していくためにも、海洋放出に反対する。
また、海洋には県境もなく、意図的に海洋にトリチウムを放出することは、福島県の漁業者だけで判断することはできない。全漁業者の意見をきいてほしい。

福島県町村会(小椋会長、北塩原村)
水蒸気・海洋放出、いずれにしても国が責任をもって方針を決定してほしい。
トリチウムとはどういうものなのか、処分方法の安全性について、国民に周知されているとは思えない。風評被害を拡大させないために、大人から子どもまで広く理解が得られるように情報伝達をお願いしたい。処分の決定は、スケジュールありき、福島ありきで議論をすすめてはいけない。ALPS処理水が安全であるのであれば、県外の処分も検討すべき。福島県内のみで今日のような会を開催するのであれば、福島県が前提のように思えてしまう。全国各地で開いてほしい。福島県から処分がはじまれば、風評被害が起こるは必至。実効性のある風評被害対策をお願いしたい。

相馬地方市町村会
相馬市長:
相馬市は漁業の拠点があるので、風評被害がある。(タンク水の貯蔵について)物理的に限界がある。科学的な根拠に基づき、国が適切に判断すべき。利害関係者の意見をきき、彼らの合意のもとに決めるべき。

南相馬市長:
市議会で国が責任ある方針を示し、国民にわかりやすい説明と理解を求めるべき、と答弁。議員からは、安全性の説明と理解が不十分、風評被害への対応の具体策がみえない、という意見が多く出されている。安全性の理解がえられる一層の努力をお願いする。時間がかかるので、タンク増設も検討するなど期限ありきでは
ない対応をお願いする。

新地町長:
安全性、風評被害の大きさを十分検討して行うようにしてほしい。処理方法の決断は、国が責任をもって行うことを求めたい。処理方法の決断については、漁業関係者の理解を得た上での決断をお願いしたい。
方法によっては、農家、観光、林業などより広い。トリチウム以外の放射性物質以外の除去を行い、告示濃度比1未満にすることを絶対的に守ってほしい。関係者に十分に説明し、理解を得るようにしてほしい。それまではタンクによる全量保管が必要だと考える。
処理にあたってはIAEAの立ち合いのもとに行い、透明性を確保してほしい。トリチウムはベータ線のエネルギーが小さいとか、自然界にもあるとかと思うが、最低限でもWHOの飲料水のガイドライン(1万Bq/L以下)を守ってほしい。処理にあたっては風評対策を同時に実施してほしい。補償も考えなければならない。漁業者支援として、地元漁業の振興策を講じてほしい。

飯舘村長:
諸外国は海に流している。国が一つの方向を示さない限り、いくらみなさんの意見をきいても結論はでない。報道では、判断にぎりぎりのところにきている、ということだ。多くの人たちが心配し、たいへんな想いをしている。国はそのための安全性の確保、賠償、補償を、腹をきめてきちんと出し、頭を下げてやるということが大切ではないか。

※経済産業省:多核種除去設備等処理水の取扱いに係る「関係者の御意見を伺う場」
https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200330003/20200330003.html

※多核種除去設備等処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場 書面による御意見の募集について
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/index.html

※多核種除去設備等処理水の取扱いに関する書面での意見公募要領
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/opinion_point.pdf

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by kazu1206k | 2020-04-06 23:50 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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