「海洋放出など二者択一に反対」、県農協中央会
2020年 04月 13日
新型コロナウィルス感染症の拡大の中、国会議員や市民団体が、収束まで開催の延期などを求めたにもかかわらず、経済産業省は、関係省庁の副大臣らの福島出張を取りやめ、テレビ会議によって第2回開催を強行しました。今回も、市民の傍聴を排し報道関係も制限しています。
「意思決定まで時間をかけるいとまはそれほどなく、できる限り速やかに処分方針を決定したい」という、安倍総理大臣の3月10日の発言に沿って、7月ごろまでにタンク貯蔵汚染水の海洋放出決定というスケジュールありき、「はじめに結論ありき」のセレモニーという状況が続いています。
今回も、経済産業省が「関係者」としての基準や根拠も示さず恣意的に選んだ自治体や産業界の代表者による意見表明という会になりました。
意見表明者は、福島県商工会連合会、ヨークベニマル、福島県農業協同組合中央会、 いわき市、双葉地方町村会(双葉町、富岡町、広野町、葛尾村、楢葉町、川内村、大熊町、浪江町)でした。
この中で、海洋放出に明確に反対したのは、福島県農業協同組合中央会です。
福島県農業協同組合中央会の菅野孝志会長は、要旨、次のように述べました。
「水蒸気放出と海洋放出の2つの方法が提案されたのは遺憾である。原発の廃炉に向けて、処理水を処分するのは理解。しかし農業者が懸念するのは、小委員会の議論と同様、安全性の担保と新たな風評被害の発生防止。
水蒸気放出と海洋放出の2つの方法に絞り込み、二者択一であるという考えには反対する。廃炉処理水の費用削減がベースにあるのではないか。安全性の担保や風評被害の未然防止に関して、国が前面にでて、十分かつ丁寧な説明を行うべき。IAEAの評価を得て実施すると思うが、それについて全国では取り上げられていない。風評被害が未だに継続しているのは、国民に対する情報提供不足。放射能の正しい理解について、さらなるPRが必要である。」
経済産業省は、新型コロナウィルス感染症による緊急事態宣言下、東京でも意見を聞くとしていますが、時期は公表されていません。さらに、出された意見を処分方法の決定にどう反映させるかなども不明確です。このような時期に闇雲に処分方針を決定しようとする、政府の強行な進め方に対し、批判の声が漁業者はじめ地元のサーフアーなどからも出ています。第2回で意見を述べた自治体首長からも「国民的議論に発展するのか。」と疑問を投げかけられ、 ALPS小委員会の委員を務めた、小山福島大学教授は、「最初は各組織の代表でもいいが、いろんな世代やこれから何十年もこの場で働く人、消費地で生活している人、近隣の諸外国などからも事前に意見を聞いていておかないと、政治判断をするための材料として足らないのではないか」と指摘しています。
「書面での意見公募」は4月6日から5月15日まで受け付けるとしています。
書面での意見公募要領は、以下参照ください。https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/takakushu_iken/opinion_point.pdf
以下は、FoE Japanの満田さんらの発言概要メモです。
〇福島県商工会連合会
避難指示区域すべて商工会区域だ。福島県全体が風評被害に遭っている。未だに4万人を超える県民が避難生活を送っている。元に戻って商売したくても、地元に人が戻ってこないので環境が整わず、商売することができない。
タンクが飽和状態と言われている。染水については専門家の説明を聞くと、安全性は担保されていると言われているが、県民の理解は難しい。
直接被害地の団体からは、仕方がないとも、とんでもないとも聞かれるが、タンクをあのままにしておくことはできない。何をしても風評につながる。いずれは処分しなければならない。
海洋放出か蒸気放出かだが、受けとる人次第だからどちらにしても風評はいつまでも続く。タンクが残る限り風評は続く。
事故収束も風評も、東電任せにしないで政府が責任をもって行ってほしい。あの汚染水を無くして風評被害を無くしてほしい。
〇ヨークベニマル
震災以来、風評払拭の取り組みと、放射能測定調査結果を客に返し続けて、9年という時間と地道な取り組みで県産品の安全性が浸透した。
県内の漁獲高は震災前に比べて15%まで激減したが、水産物は震災前の状態に戻ると確信している。それには風評被害の払拭が唯一かつ最大の条件。
処理水の放出には以下2点の担保が必要。
① 処理水の放出が沿岸の水産物に及ぼす影響と、安全性に対する科学的根拠を、国内外はもとよりIAEAなどグローバルな第三者機関のエビデンスをあらゆるメディアを投じて広く情報を提供し、県内国内外だけでなくグローバルなコンセンサスにしてほしい。
②安全性に対する科学的な根拠が明確になっても、目に見えない放射性物質に対する不安と恐怖は払拭できない。これを払しょくするには、国、地方自治体、生産者、市場、小売り、客のサプライチェーンがワンチームとなり、福島県の水産物の安全性を理解してもらうことが絶対条件。このチームの足並みが揃わないまま、処理水を放出すると、取り戻すのに長い時間がかかる。充分に時間を取り、各ステークホルダーの同意を得て、風評被害の事前防止プログラムが必要。
〇福島県農業協同組合中央会
水蒸気放出と海洋放出の2つの方法が提案されたのは遺憾である。
原発の廃炉に向けて、処理水を処分するのは理解。
しかし農業者が懸念するのは、小委員会の議論と同様、安全性の担保と新たな風評被害の発生防止。
水蒸気放出と海洋放出の2つの方法に絞り込み、二者択一であるという考えには反対する。
廃炉処理水の費用削減がベースにあるのではないか。
安全性の担保や風評被害の未然防止に関して、国が前面にでて、十分かつ丁寧な説明を行うべき。
IAEAの評価を得て実施すると思うが、それについて全国では取り上げられていない。
風評被害が未だに継続しているのは、国民に対する情報提供不足。放射能の正しい理解について、さらなるPRが必要である。
〇いわき市長
国が責任をもって対応する必要がある、と意見を言ってきた。
廃炉作業は被災地の復興と両立。ALPS処理水の処分が復興の足かせにあってはならない。
敷地を拡大して保管を継続するのか、処分するのか、その場所や方法は、福島ありきではなく、国として検討しているときいているが、国が責任をもって前面にたって検討すべき。
その上で、ALPS処理水を環境中に放出する場合は、人に対しても、環境に対しても安全であることが大前提。事故前もトリチウムを放出しており、その周囲では、健康への影響が生じていないことを、広く周知すべきである。
世界中でトリチウムが放出しているが、その周辺では、健康影響がないと国は言っている。
小児白血病が発生していること、カナダのピッカリング原発周辺での疾病が発生していると発言している専門家もいる。
そういう専門家に、真っ向から議論をかわし、国民全体で共通認識を作り上げていくということも重要。
生物多様性にも影響を与えないように、環境影響評価やモニタリングを継続すべきである。
社会的影響について。
国内外の原発からトリチウムが放出されていることが、全国で認識されなければ、風評被害が生じてしまう。
それでは復興のさまたげとなる。
現在、福島沿岸の魚種の出荷制限はすべて解除となった。
本市としては風評被害を払拭するために、いろいろ努力している。
処分方法を決定するとき、また、その後、実際に処分を行うとき、風評が発生する。
東電は風評被害がでれば賠償すると言っているが、東電の賠償は十分とはいえず、真摯に対応する必要がある。
賠償すればよい、という問題ではない。
たとえば、「基金」を創設するなど、風評対策を必ず実施するということを示してほしい。
時期ありきではなく、被災地の状況をふまえ、丁寧に説明しながら、前面にたってほしい。
県民世論は、「海洋放出に反対」という意見が「賛成」を上回っている。
幅広いステークホルダーから丁寧に意見をききとってほしい。
説明公聴会では、タンクでの保管や、遠洋に運んでの投棄などの意見も出た。これらはいずれも困難ということになった。
あらゆることを考えて、タンクが足りなくなるようなことはないようにしてほしい。
〇双葉町長
国内外での放出実績がある。過酷事故を起こした原発から、いったんは燃料に触れた水である。
地域住民の安心にはつながらない。
理解を得られるように丁寧に伝え、処理水をめぐる情報発信や風評被害対策を発信することが重要。
タンク容量がひっ迫する。
今後、燃料デブリの取り出しと、より困難な作業がひかえている。
30年とも40年ともいわれる廃炉作業を着実に進めることが必要。
いずれにしても国がしっかりとやってほしい。
「水蒸気放出」「海洋放出」で一番被害を受けるのは双葉地方の住民であることを確認していただきたい。
〇富岡町長
全員協議会が開催され、木野参事官より、ALPS小委員会の報告書の説明を受けた。
議員から出た意見。
・1F構内のタンクの設置場所が2022年夏には満杯になる。1F敷地内やその周辺の土地にタンクを設置できないということであれば、処理水を放出せざるをえないということになるので、はじめから結論ありきで、議論にならない。
・もっと時間が必要。
・他の核種が残っていることも、説明が不十分。
議員が疑問や不安を抱いているように、処理水に関する説明や議論がつくされたとはいえない。
直接説明された人は多くない。
処理水や検討内容について、わかりやすい説明を徹底することをお願いしたい。
このままタンクによる貯蔵を続けるとしても、海洋や大気に放出する際には、風評を絶対に発生させないという万全の対策を講じてほしい。
現在のままのタンクでは、万が一漏水したときのリスクは高い。一刻も早い対策が必要。
〇広野町長
復興で重要なのは、住民への説明を繰り返し、同意を得ること。
国民全体の問題。
(電話が入り以降聞き損ねました)
〇葛尾村長
国内外の原発で、海洋・河川・大気中に排出されており、影響を受けた例はみつかっていないが、このことを丁寧に説明しなければ、福島への風評被害は必ず発生する。
漁業関係者から反対の声があがっているときいているが、水蒸気放出はどのように拡散するか予測することが難しく、海洋方sy放出よりも多くの産業が影響を受けるのではないかと思う。
いずれにしてもすべての住民に丁寧に住民を継続し、方針を決めてほしい。
〇楢葉町長
町の全員協議会の場で説明をいただいた。処理水の取り扱いについては、国の小委員会で専門家で丁寧・慎重に協議がなされてきた。時間がかかりすぎた。このため、現在の説明が、期限や結論ありきにきこえて、結果として不信感、反発をまねきやすすくなっている。
意見を真摯に受け止め、丁寧に意見をきき、慎重に方針を決定してほしい。
きめ細やかな情報発信を行っていただくことが必要。
以前から申し上げてきたが、国や東京電力が行う説明は専門的な内容が多く、住民や一般の人たちには理解しずらい。
世間的には、「放射性物質が放出される」という事象しか伝わっていない。
生活する上で、どのような影響があるのか、人々が具体的に自分ごととして思えるような情報発信に努めてほしい。
また、透明性の確保も重要。
1)放出中、放出後のモニタリングが誰でも確認できるようにすること
2)第三者による監視が随時行われること
3)異常があったときに即時に停止すること
処理水の取り扱いはさまざまな意見があるのは当然。国が先頭にたち、水産業や観光業に風評被害を生じさせない取組を徹底的に講じていただきたい。
〇川内村長
どこかのタイミングで結論を出していかなければならない。
・トリチウムなどの放射性物質が十分に周知されているのか、正確な情報発信が必要。
・社会的な影響が大きい。風評対策。補償を具体的に
・さまざまな関係者の意見を丁寧にきいてほしい。そのプロセスも説明してほしい。
・新型コロナ対策での議論。どこまで国民的議論になるのか疑問。今後のご配慮を。
・1Fの廃炉をしっかりと安全に進めることが必要。
〇大熊町長
敷地内で保管しつづければよいという意見があるが、1Fの敷地には限りがある。
タンクを設置するスピードよりも、新たな処理水が発生するスピードが多く、早晩、タンクがいっぱいになることは明確。
海洋放出か水蒸気放出のどちらかを選びなさいといわれても、選べない。
経済的、社会的影響は解消されない。
処理方法については、ステークホルダーの意見をよくきいた上で、国が対応方針を決定していただきたい。
問題は風評被害。対策を徹底してほしいが、それでも生じる風評被害にどのように対処するのか?
報告書に書いてあることでは、具体性に欠ける。
これ以上、生業をおかされては、ふるさとでくらせないという無数の人のおもいがある。
いまなお、風評による被害を受け、完全に立ち直ることはできない。
どのような影響が想定され、どれだけの被害が生じるのか、どのような対策が有効なのか、被害を受けた方にどのように補償するのか、そういった具体策が必要である。
国は、みなさまからだされた数多くの意見を検証し、取り入れていただきたい。
〇浪江町長
農林水産業の復興なしして、浪江町の復興はない。
どのような処分方法であっても、必ず風評被害がつきまとう。
いくら安全性が科学的に立証されていても、安心が得られるものではない。
仮に海洋放出となれば、風評被害がどのくらい出てくるのかはかりしれない。
数量的に示すこともできない。
当町としては、急激な人口減少が最大の課題。
この処理水の取り扱い方針によっては、新規の移住が影響を受ける。
国の責任のもと、国が前面にたって、安全性の十分な情報発信はもとより、新たな販売拡大に取り組むべき。
慎重な判断と万全な方針を示してほしい。