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福島県知事に海洋放出反対の表明を要請

 4月21日午後、これ以上海を汚すな!市民会議の代表6名は、福島県庁で、内堀雅雄福島県知事宛の要請書「福島第一原発事故によるトリチウム等タンク貯蔵汚染水の処分について」を県危機管理部原子力安全対策課の伊藤課長に提出し、次の3点を要請しました。
1、福島県漁業協同組合連合会、福島県森林組合連合会、福島県農業協同組合中央会など福島県内農林水産業の代表的組織が反対している、タンク貯蔵汚染水の大気及び海洋放出処分案について、本県として反対の意思を表明すること。
2、トリチウム分離技術の開発実用化、タンク貯蔵汚染水の大型タンク保管やモルタル固化保管など陸上保管の具体的検討について、国と東電に求めること。
3、事故炉の汚染水の処理について、国際関係に配慮し、国権の最高機関である国会での議論、全国各地での公聴会の実施など国民的議論と国民的合意のもとで、処分方針を決めるよう国に求めること。
 この要請に対し、伊藤課長は、「県としては、国が責任を持って判断してほしい。その際関係者の意見を聞いて慎重に対応してほしい」「国が疑問に答え、具体的な風評被害対策を示してほしい」と答えました。これに対し、市民会議は、改めて、『原発事故被災県の県民代表として、国に海洋放出は反対であるとの意思表示を明確に示して欲しい』と求めました。
 要請には、古市三久県会議員に同行頂きました。

 以下は、要請書です。

要 請 書
(福島第一原発事故によるトリチウム等タンク貯蔵汚染水の処分について)


福島県知事  内堀 雅雄 様            2020年4月21日

(要旨)
1、福島県漁業協同組合連合会、福島県森林組合連合会、福島県農業協同組合中央会など福島県内農林水産業の代表的組織が反対している、タンク貯蔵汚染水の大気及び海洋放出処分案について、本県として反対の意思を表明すること。
2、トリチウム分離技術の開発実用化、タンク貯蔵汚染水の大型タンク保管やモルタル固化保管など陸上保管の具体的検討について、国と東電に求めること。
3、事故炉の汚染水の処理について、国際関係に配慮し、国権の最高機関である国会での議論、全国各地での公聴会の実施など国民的議論と国民的合意のもとで、処分方針を決めるよう国に求めること。


(理由)
 未曾有の被害をもたらした、東京電力福島第一原発事故は、未だ、政府の原子力緊急事態宣言も解除されておらず、多くの住民が避難生活を強いられている。
 事故によるトリチウム等タンク貯蔵汚染水の処分については、経済産業省資源エネルギー庁の汚染水処理対策委員会「トリチウム水タスクフォース」が「希釈後海洋放出」が最も短期間・低コストで処分できるとの報告書を2016年6月に公表、同年11月「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」が設置され、本年2月、「はじめに結論ありき」のごとく、「海洋放出の方がより確実に実施できる」とする報告書が提出された。
 この間、2018年8月の「説明・公聴会」では、「海洋放出されれば、福島県漁業が壊滅的打撃を受ける」という漁業者をはじめ多数の発言者が海洋放出に反対し、敷地内でのタンク貯蔵を継続する等の陸上保管の意見を述べたが、敷地不足を理由に陸上保管の継続に難色を示す東京電力の説明が通り、「地元の生活を犠牲にして廃炉を進めるのは論理が破綻している」「風評に大きな影響を与えないと判断される時期までの貯蔵が必要ではないか」「敷地拡大が可能なのではないか」等の小委員会委員の意見も無視された。
 東京電力は本年3月、「検討素案」として処分方法を公表、「トリチウム以外の放射性物質の量を可能な限り低減(二次処理の実施)、トリチウムの濃度を可能な限り低く」「地下水バイパス及びサブドレンの運用基準1ℓ当り1,500ベクレルを参考に検討」し、福島県沖への海洋放出を年間22兆から100兆ベクレルで最長30年かけ放出する拡散シミュレーションを示した。また、同月24日の会見で東京電力は、記者からの質問に1,209兆ベクレルにも及ぶ建屋内滞留水のトリチウムの放出可能性についても示唆した。
 言うまでもなく、タンク貯蔵汚染水は、液体放射性廃棄物である。タンクに貯蔵されているのはトリチウムだけでなく他の放射性物質が含まれ、東京電力によればタンク群の72%に基準値超えの放射性物質が含まれている。海洋放出されれば、こうした放射性物質も同時に放出され、東京電力は放出前に二次処理するというものの、完全に取り除けるわけではない。1月時点で総量860兆ベクレルとされるタンク貯蔵トリチウムが海洋放出されれば、こうした放射性物質も同時に放出されるが、原子力施設から排出されたトリチウムなどは、生物濃縮や健康影響の懸念が払拭されていない。
 翻って、タンク貯蔵汚染水は、東京電力福島第一原発事故に発生原因がある。液体放射性廃棄物であるタンク貯蔵汚染水は、東京電力が発生者責任の原則のもと、厳重に管理し処分しなければならない。国・原子力規制委員会は、東京電力福島第一原発について、原子炉等規制法により特定原子力施設に指定している以上、関係諸法令に基づき、液体放射性廃棄物を適切な方法により安全管理を講じさせなければならない義務があり、国民の生命・財産を守るため、高度な注意義務を果たすことが求められている。仮にも液体放射性廃棄物の処理によって健康影響や社会的被害を起こしてはならないのである。
 タンク貯蔵汚染水=液体放射性廃棄物は、放出に関する環境アセスと総量規制も実施しないままに海洋放出することは許されず、予防原則に立って、タンク保管やモルタル固化保管等安全な陸上保管を進めることが現実的であり、被災者である福島県民はじめ国民の生命・財産を守るための賢明な選択である。
 コストを優先してタンク貯蔵汚染水=液体放射性廃棄物を海洋放出することは、東日本大震災と原発事故から再生途上にある漁業者に打撃を与え、水産業はじめ地域の社会経済への影響は甚大である。これは、「人間の復興」に逆行する行為で許されるものではない。
  安倍首相は「意思決定まで時間をかけるいとまはそれほどなく、できる限り速やかに処分方針を決定したい」として、本年夏までの政府決定に向けて走り出している。経済産業省が福島県内関係自治体や15市町村議会、関係者のヒアリングを開始しているが、地元福島県の報道機関は「『時間切れ』許されない」という社説を出し、浪江町議会が海洋放出反対決議を行っている。
 4月6日開催の「関係者の意見を伺う場」で福島県漁連の野崎会長は、「われわれとしては、なんでこのようなことが起きたんだ、ということに立ち返ってしまう。やはり原子力災害だ。われわれ福島県の漁業者は、地元の海を利用して、その海洋に育まれた魚介類を漁獲することを生業としてきた。震災後、地元で土着しながら生活を再建するということを第一に考えている。その観点から海洋放出を反対するものという考えに至らざるを得ない。国の廃炉に向けて進めてきた汚染水の総量を減らすため、地下水バイパス、サブドレンの排出に苦渋の想いで協力してきた。トリチウムを含んだ水については、関係者の理解なしに、いかなる処分も行わない、というご回答をいただいている。それ抜きに信頼関係は成り立たない。沿岸漁業では、1魚種1検体の抽出検査を行い、試験操業を実施していきている。令和元年度の漁獲高は、震災前の14%。本年2月に出荷制限が解除され、今後、増産に向けて舵を切ろうとしている。9年で若い漁業者の参入が進んだ。今後彼らに将来を約束していくためにも、海洋放出に反対する。また、海洋に県境はない。意図的に海洋にトリチウムを放出することは、福島県の漁業者だけで判断することはできない。全漁業者の意見をきいてもらいたい。」と訴えた。
 これと軌を一にして、福島県森林組合連合会、福島県農業協同組合中央会など福島県内の農林水産業の代表的組織がタンク貯蔵汚染水の大気及び海洋放出処分案に反対を表明したことは重く受け止めねばならない。トリチウム等放射性物質の海洋投棄等は、原発事故後の復興をめざす福島県民と県内の農林水産業=第一次産業に深刻な打撃を与えることが否定できない。
 この際、貴職におかれては、被災県民の代表として、国に対しトリチウム等タンク貯蔵汚染水の海洋放出をやめ、陸上保管による恒久的対策をめざすこと等を求めていただきたい。

以上

<要請団体>
      これ以上海を汚すな市民会議
                 共同代表  織田千代 佐藤和良

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by kazu1206k | 2020-04-21 22:05 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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