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汚染水の取り扱いに関する質問への国の回答

 いわき市議会は、国側からの意向を受けて、「多核種除去設備等処理水の取扱いについて」をテーマに、4月24日、全員協議会を開催して、国側の説明を受け質疑、意見交換を行う予定でした。
 このため、いわき市議会は、4月中旬に各会派からの質問項目を取りまとめ、事前質問書を提出していました。いわき市議会創世会の事前質問項目に対する、4月24日付けの経済産業省資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室の回答をご紹介します。
 なお、回答について、未回答であるもの、直接質問に答えていないもの、不十分なものが多いため、再質問を行いました。次回でご報告します。

*質問は、廃炉・汚染水対策チーム事務局の資料目次に対応
1、1 汚染水はどのように発生し処理しているの?
①燃料デブリの水冷から空冷への切り替えはいつになるのか。
回答12
原子炉への注水量を減らすためには、その際の格納容器内の温度変化等の影響を注水停止試験により確認することが重要ですが、安定した冷却状態を維持するため、試験は少しずつ慎重に進めていく必要があります。このため、2019 年度に 1~3 号機で注水停止試験を行い、温度変化等に関する情報を取得し、現在追加の試験内容や実施時期等の検討を進めているところです。今後も更なる注水停止試験を行い、その結果等も踏まえ、原子炉への注水量を減らす検討を進めていきます。

2、2 ALPS処理水はどうなっているの?  
①直近のタンク貯蔵汚染水の放射性核種毎の貯蔵量と濃度はいくらか。
回答13
参考資料をご参照いただけますようお願いいたします。
(参考資料)
・タンク群毎の放射能濃度推定値 ・多核種除去設備等処理水の告示濃度比総和別(推定)貯蔵量

②直近のタンク貯蔵以外の建屋滞留水等の放射性核種毎の量と濃度はいくらか。
回答14
建屋滞留水中の放射性物質の濃度については、参考資料をご参照ください。また、放射性物質の量は、滞留水処理の進捗に伴い,一部の建屋において,高い放射能濃度が 検出されており、濃度の不均一性を考慮して算出する必要があるため、評価が困難です。

3、3 ALPS処理水の取り扱いについて、政府の検討は?
①コンクリートやモルタル固化の技術的検討と評価はどうなっているか。
回答15
ALPS 小委員会の報告書において、
1 地下埋設については、固化による発熱があるため、水分の蒸発(トリチウムの水蒸気放出)を伴うほか、新たな規制の設定が必要となる可能性があり、処分場の確保が課題となる。
2 こうした課題をクリアするために必要な期間を見通すことは難しく、時間的な制約もお考慮する必要がある。このために、トリチウムの処分において前例のない選択肢は、規制的、技術的、時間的な観点からより現実的な選択肢としては課題が多い。 とされております。

4、5 論点②トリチウムはどのような物質なの?
①国内外の原子力発電所からの排出の事例で、健康影響は確認されていないというが、泊原発や玄海原発周辺、カナダピッカリング原発周辺での影響事例はないのか。
回答16
ALPS 小委員会の報告書においては、
1 トリチウムを排出している原子力施設周辺で共通にみられるトリチウムが原因と考えられる影響の例はみつかっていない
2 これまでの動物実験や疫学研究から「トリチウムが他の放射線や各種と比べて特別に生体影響が大きい」という事実は認められていない。
とされております。 なお、カナダのオンタリオ州にあるピッカリング原発からのトリチウム放出量と原発の立地するピッカリング町の新生児死亡率の関係について、1991年にカナダ原子力管理委員会(AECB)がレポートを公表しております。このレポートによると、ピッカリング原発からのト リチウム放出量によりピッカリング町の新生児死亡率が増加したという仮説は、統計的に有意な相関関係がないことから支持できない、とされており、因果関係が認められたことはないと承知しております。

②有機結合型トリチウムの生物濃縮はないというが、英国政府RIFEレポート2002「環境中よりも生物濃度が高い」とのレポートは無視しているのか。
③トリチウム水の植物プランクトンやムール貝、イガイ等への生物濃縮報告はどう認識しているのか。
回答17
トリチウム水は、水と同じ性質を持つため、人や特定の生物への濃縮は確認されておりません。数千倍のトリチウムの濃縮が確認されたという事例について、英国政府機関 「Centre for Environment, Fisheries and Aquaculture Science」の所属研究者による 2010年の論文によると、当該地域において二枚貝等の体内で高濃度のトリチウムが確認された事象の原因は、近隣プラントからの排水に含まれる人工由来のトリチウムを含んだ有機 化合物であり、トリチウム水が濃縮したわけではない、とされております。

④炭素や微生物が確認される貯蔵タンク内のトリチウムは、有機結合型になっている可能性があるのか。
回答18
汚染水は建屋に流入する地下水が燃料デブリに触れた水と混ざること等により発生することから、汚染水にも自然界に含まれる微量の有機物と同様のものが含まれておりま す。したがって、一部は有機結合型トリチウムとなっている可能性は否定できませんが、いずれにしても、大半は自由水型トリチウムとして存在していると考えております。

⑤トリチウムのヘリウム崩壊で DNAに損傷があっても修復されるというが、放射性ガンの主たる原因とされるDNAの二本鎖切断の可能性があり100%完全修復ができるのか。
回答19
ALPS 小委員会の報告書において、
1 放射線は DNAに損傷を与えるが、細胞には DNA損傷を修復する仕組みが備わっている。
2 DNAは普段から様々な原因で損傷が入っていて、その大半は速やかに修復される。放射線による損傷がごくわずかであれば、自然の事象との違いは見えない。
3 「トリチウムは他の放射線や各種に比べて健康影響が大きい」という事実は認められていない とされております。

⑥トリチウムが原因での健康影響は見つかっていないというが、カナダ型原発ではトリチウム放出量が多く、下流域での白血病や小児白血病、ダウン症、新生児死亡などの増加が報告されており、どう評価しているか。
回答16
ALPS 小委員会の報告書においては、
1 トリチウムを排出している原子力施設周辺で共通にみられるトリチウムが原因と考えられる影響の例はみつかっていない
2 これまでの動物実験や疫学研究から「トリチウムが他の放射線や各種と比べて特別に生体影響が大きい」という事実は認められていない。
とされております。 なお、カナダのオンタリオ州にあるピッカリング原発からのトリチウム放出量と原発の立地するピッカリング町の新生児死亡率の関係について、1991年にカナダ原子力管理委員会(AECB)がレポートを公表しております。このレポートによると、ピッカリング原発からのト リチウム放出量によりピッカリング町の新生児死亡率が増加したという仮説は、統計的に有意な相関関係がないことから支持できない、とされており、因果関係が認められたことはないと承知しております。

5、5 論点③トリチウムは国内外の原子力施設から排出されているの?

①液体廃棄物として海洋に排出されているというが、1F同様に核燃料から溶出して一次冷却水として排出されている原子力施設はあるのか。
回答20
国内外の原子力発電所において、事故前の福島第一原発と同様、そのメンテナンス時に生じる液体廃棄物内に含まれるトリチウムが排出されているものと承知しております。なお、当該液体廃棄物には、現在ALPS 処理水に含まれるトリチウムと同様、核分裂により生成されたトリチウムが含まれております。

6、5 論点④敷地内にため続ければよいのでは?
①タンク増設余地は限定的というが、燃料デブリの取りだしの見通しがない現状では、当面、廃棄物貯蔵施設・減容施設の予定地、新旧土捨場やフランジタンク解体跡地も活用すべきではないか。
問題21
燃料デブリの取り出しについては、昨年12月に改訂した中長期ロードマップに基づいて準備を進めております。
ALPS小委員会の報告書でも、敷地内において、貯水タンクエリアの効率化(フランジタンク解体跡地の活用)等により、空き地が出来る可能性がある一方で、今後廃炉作業に必要と考えられる施設が必要となることが指摘されております。

7、5 論点④敷地の外にため続ければよいのでは?
①第2原発に搬出し保管する場合、事前調整の内容並びに所用時間はどの程度か。
回答2
敷地外へのALPS 処理水の持ち出しにつきましては、ALPS 小委員会の報告書において、
1ALPS処理水の処分施設を設置する自治体や関係者等の御理解や、原子力規制委員会による設置許可、
2運搬時の漏洩対策を含む運搬方法の検討や運搬ルートの自治体の理解を得ることが必要となる とされており、こうした課題を踏まえて、関係者の御意見もお伺いしながら、ALPS 処理水の取扱いを検討していきたいと考えております。

8、5 論点④中間貯蔵施設にため続ければよいのでは?
①中間貯蔵施設以外の用途で使用する場合、事前調整の内容並びに所用時間などはどのようなものか。
回答22
敷地外への ALPS 処理水の持ち出しにつきましては、ALPS 小委員会の報告書において、
1 ALPS処理水の処分施設を設置する自治体や関係者等の御理解や、原子力規制委員会による設置許可、
2 運搬時の漏洩対策を含む運搬方法の検討や運搬ルートの自治体の理解を得ることが必要となるとされております。
また、中間貯蔵施設予定地については、
1 中間貯蔵開始後30年以内に、福島県外での最終処分を完了するための必要な措置を講ずることを前提に、国が地元(県・立地二町)に説明の上、福島の復興のため受け入れていただき、用地を取得し、整備を進めている。
2 その際、地権者の皆様に、中間貯蔵施設のために利用させていただくため、土地の提供(地上権の設定を含む)をお願いしている。現在、福島県内の除去土壌等の搬入・処理・中間貯蔵のための用地取得と施設整備を進めているところであるが、特定復興再生拠点区域で発生する除去土壌等も含めて確実に貯蔵ができるよう、今後も用地取得・施設整備を進めていく必要がある。
3 このため、福島第一原発の敷地の外側にある中間貯蔵施設予定地を、中間貯蔵施設以外の用途で使用し、福島第一原発の敷地を拡大することは難しいと考えられる。 とされております。以上を踏まえて、関係者の御意見もお伺いしながら、ALPS 処理水の取扱いについて、政府として結論を出していきます。

9、6 ALPS 小委員会 報告書のポイント①(基本的考え方)
①ALPS処理水の処分も廃炉の一環として廃止措置終了までの処分というが、中長期ロードマップもままならない不透明な状況で、汚染水を福島県沖に海洋放出するのは、漁業者はじめ原発事故被災者にさらなる負担と苦悩を強いる、「福島差別」ではないか。
回答6
「海洋放出ありき」ではなく、ALPS小委員会の報告書を踏まえ、まずは関係者の御意見を丁寧にお伺いすることが重要だと考えております。その上で、政府としての方針を決定してまいります。

②併せて講ずるべき風評被害対策について取りまとめられるべきというが、何ら示されていないのは如何なものか。
回答23
ALPS処理水の取扱いにつきましては、ALPS小委員会の報告書を踏まえ、関係者の御意見を丁寧にお伺いした上で、風評被害も含め、政府として結論を出していきます。

10、6 ALPS 小委員会報告書のポイント③(風評対策)
①「廃炉と復興の両立」が大原則というが、液体放射性廃棄物は、事故の発生者で加害者である東京電力が責任を持って管理保管しなければならず、経済産業省と原子力規制委員会は管理監督しリスクコントロールする義務があるにもかかわらず、海洋投棄の実行を推奨することは、あってはならないことではないか。
回答24
原子炉等規制法において規定されている廃止措置の一環である「核燃料物質によつて汚染されたものの廃棄」にALPS処理水の処分も該当いたします。大原則として、福島の復興と廃炉を両輪として進めていくことが重要であり、廃止措置が終了する際には、ALPS処理水についても、廃炉作業の一環として処分を終えていることが必要であると考えてお ります。
なお、ALPS 処理水の取扱いにつきましては、ALPS 小委員会の報告書を踏まえ、関係者の御意見を丁寧にお伺いした上で、政府として結論を出していきます。

11、7 ALPS 小委員会の提言を踏まえて、今後どのように?
①地元をはじめとした幅広い関係者のご意見をお伺いし、その結果を踏まえて、政府の方針決定というが、現在の意見聴取は地元の一部関係者のみにとどまっており、先般の「ご意見を伺う場」でも自治体関係や漁業関係者から、全国での説明公聴会や全漁業者から意見を聞いて欲しいとの声が上がっていたが、新型コロナウィルス感染症の収束を待って、全国の関係者から幅広く意見を伺うべきではないか。
回答25
少しでも丁寧に関係者の御意見をお伺いすべきとの考えから、ウェブ会議での開催等、 感染防止対策をとった上で意見を伺う場を重ねているものです。
また、4月6日及び13日に開催した「関係者の御意見を伺う場」においては、まずは福島の関係自治体・団体から御意見を伺ったところです。第3回については、福島県外の関 係者からも御意見を伺うことを考えております。

②2022年の2年前の今夏に処分方法を決定するというスケジュールありき、海洋放出ありきの対応はやめ、立ち止まって対応を見直すべきではないか。
回答26
ALPS小委員会の報告書においても確認されているように、発電所の敷地には限りが あり、追加的にタンクを設置する余地は限定的であるため、こうした状況を踏まえれば、政府としては、いつまでも時間をかけて検討するものではないと考えております。
他方で、スケジュールありきで進めるものではないと考えており、幅広い関係者の御意見をお伺いした上で、結論を出していきます。
by kazu1206k | 2020-05-21 09:16 | 議会 | Comments(0)