汚染水、創世会の再質問と国の回答
2020年 05月 22日
これに対して、4月24日付けで経済産業省資源エネルギー庁原子力発電所事故収束対応室が文書回答しましたが、回答内容が、未回答であるもの、直接質問に答えていないもの、不十分なものが多く、5月7日再質問を行いました。
これに、同対応室が5月18日付で再度、文書回答しました。以下、創世会の再質問と国の回答を紹介します。
多核種除去設備等処理水の取扱いについて資源エネルギー庁の回答への質問
2020.5.7 いわき市議会創世会
1、連番17:「燃料デブリの水冷から空冷への切り替えはいつになるのか」
・回答12は、注水停止試験により格納容器内の温度変化等の影響を見るとして、時期が明らかにされていない、改めて時期の見通しを示されたい。
回答
燃料デブリへの注水量を減らすためには、注水停止試験を繰り返し行い、安全上の影響を見極めていく必要があります。現時点で、空冷への切り替えの時期の見通しをお示しすることは困難ですが、今後、更なる注水停止試験を実施し、その結果も踏まえ検討を進めていきます。
2、連番18:「直近のタンク貯蔵汚染水の放射性核種毎の貯蔵量と濃度はいくらか」
・回答13は、参考資料参照だが、参考資料から放射性核種毎の貯蔵量は読み取れない、改めて放射性核種毎の貯蔵量の数値を示されたい。
回答
タンク内のトリチウムの貯蔵量の総計は、参考資料 P1 のとおり、約860兆ベクレル (2019 年 10 月時点)です。その他の個別の核種毎の貯蔵量の総計は、算出していません。
なお、ALPS 処理水を環境中に放出する場合には、希釈前の段階で二次処理を行い、 トリチウム以外の放射性物質について、放出する際の基準を満たし、さらに、トリチウムについても、処分する際に十分に希釈することにより、放出する際の基準を満たす方針です。
(参考資料) ・ALPS処理水の貯蔵・処分の時間軸 P1
3、連番19:「直近のタンク貯蔵以外の建屋滞留水等の放射性核種毎の貯蔵量と濃度はいくらか」
・回答14は、参考資料参照だが、参考資料から放射性核種毎の貯蔵量と濃度は読み取れない、改めて放射性核種毎の貯蔵量と濃度の数値を示されたい。
回答
タンク貯蔵以外の放射性物質の量は、各建屋の場所毎で、放射能濃度にばらつきがあることから、評価が困難です。そのため、前回の回答において、建屋の場所毎の放射能濃度をお示ししました。
例えば、プロセス主建屋における建屋内滞留中の、2020 年4月のセシウム134の濃度は 1.41×106ベクレル/L、セシウム137の濃度は 2.45×107ベクレル/L、ストロンチウ ム90は 8.53×106ベクレル/L、トリチウムは 6.98×105ベクレル/L です。
4、連番20:「コンクリートやモルタル固化の技術的検討と評価はどうなっているか」
・回答15は、ALPS小委員会の報告書を引き、地下埋設について、「新たな規制の設定」と「処分場の確保が課題」というが、新規制の内容や処分場の必要面積を示されたい。同じく、「トリチウムの処分において前例のない選択肢」としているが、海外の核施設、米国サバンナ・リバー・サイトにおけるトリチウム処分の前例について、どのような検討を行ったのか。
回答
地下埋設に関する新たな規制の可能性については、トリチウム水タスクフォース報告書において、
・トリチウム水をセメント混練し固化されたものを、「核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の第二種廃棄物埋設の事業に関する規則」における「コンクリート等廃棄物」と整理できる場合、トリチウム水をコンクリート固化したものをピット処分した事例はないため、別途、新たな基準の策定が必要となる可能性がある。
とされています。必要面積については、トリチウム水タスクフォースにおいて、各処分方法を技術的に比較するため、処分量等を仮定して評価した結果、800,000m3のALPS 処理水を処分する場合には、285,000m2の面積が必要と評価されています。
また、「米国サバンナ・リバー・サイトにおけるトリチウム処分の前例」について、個別の事例を挙げた検討は行っていませんが、ALPS小委員会の報告書においては、コンクリート固化による地下埋設について、1固化による発熱があるため、水分の蒸発(トリチウムの水蒸気放出)を伴う、2新たな規制の設定が必要となる可能性があり、処分場の確保が課題となる、とされています。
5、連番2>:「国内外の原子力発電所からの排出の事例で、健康影響は確認されていないというが、泊原発や玄海原発周辺、カナダピッカリング原発周辺での影響事例はないのか」
連番26:「トリチウムが原因での健康影響は見つかっていないというが、カナダ型原発ではトリチウム放出量が多く、下流域での白血病や小児白血病、ダウン症、新生児死亡などの増加が報告されており、どう評価しているか」
・回答16は、「トリチウムが原因と考えられる影響の例は見つかっていない」と繰り返すが、泊原発や玄海原発周辺での白血病やガン死亡率の増加、カナダピッカリング原発周辺でのダウン症や新生児死亡率等の増加について、原因を含め評価が専門家の間で分かれている現状では、影響なしと断定してトリチウムを処分することは将来に禍根を残さないか。
回答
ALPS小委員会では、再現性のあるデータに基づいた研究論文及び適正な査読システムを有する学術論文誌に発表されている情報に基づいて議論が行われています。その結果、報告書においては、
1 トリチウムを排出している原子力施設周辺で共通にみられるトリチウムが原因と考えられる影響の例はみつかっていない
とされているのみならず、
2 これまでの動物実験や疫学研究から「トリチウムが他の放射線や各種と比べて特別
に生体影響が大きい」という事実は認められていない。 とされています。
6、連番22:「有機結合型トリチウムの生物濃縮はないというが、英国政府RIFEレポート2002「環境中よりも生物濃度が高い」とのレポートは無視しているのか」
連番23:「トリチウム水の植物プランクトンやムール貝、イガイ等への生物濃縮報告はどう認識しているのか」
・回答17は、「生物への濃縮は確認されていない」と繰り返すが、生物濃縮のレポートを無視できるのか。
回答
ALPS小委員会(第 11 回)において委員より発言があったとおりで、生物への濃縮は確認されていないものと認識しています。
(参考資料)
・ALPS小委員会(第11回)議事録 P32(抜粋)
〇田内委員: (略)環境中の魚などで、水より、海水中よりも高いというようなデータがございますけれども、実はそういうものは、年々追跡すれば減っていくんですね。何かといいます と、例えばイギリスのセラフィールド湾のデータで、ある時点ではかったときに、海水中の濃度よりも魚の中の有機結合型トリチウムの濃度のほうが高いというのがありま す。ただ、それは、実はそれ以前に非常に濃いトリチウム水が海洋に放出されているんですね。それが取り込まれたときのOBTが、当然、水より半減期が長いので残っているんです。そのデータは、年を追っていきますと、海水中の濃度がほとんど検出されない状況下では、どんどん有機結合型も減っていくということですので、これは決して生物濃縮とは申し上げるべきものではないということです。生物濃縮というのは環境中の物質が、生体にどんどん蓄積して濃くなるということですから、トリチウムでそういうことは起こらないということで、ご理解いただければと思います。
7、連番24:「炭素や微生物が確認される貯蔵タンク内のトリチウムは、有機結合型になっている可能性があるのか」
・回答18は、「一部は有機結合型トリチウムとなっている可能性は否定できません」
」としたが、自由水型と比較してどの程度の量と評価しているか。
回答
貯蔵タンクから有機結合型トリチウムを抽出し、測定することが難しいことから、一概に申し上げることは困難ですが、大半は自由水型トリチウムとして存在していると考えていま す。
8、連番25:「トリチウムのヘリウム崩壊で DNAに損傷があっても修復されるというが、放射性ガンの主たる原因とされるDNAの二本鎖切断の可能性があり100%完全修復ができるのか」
・回答19は、ALPS小委員会の報告書を引用するのみで、質問に答えておらず、100%完全修復ができるのか回答されたい。
回答
一般論として、人体の修復能力には個人差があることから、紫外線等により DNA が損傷した場合も含め、100%完全修復することを立証することは困難と考えています。いずれ にしても、ALPS 処理水の取扱いに当たっては、法令を遵守しながら対応すべきであると 認識しています。
9、連番28:「タンク増設余地は限定的というが、燃料デブリの取りだしの見通しがない現状では、当面、廃棄物貯蔵施設・減容施設の予定地、新旧土捨場やフランジタンク解体跡地も活用すべきではないか」
・回答21は、当面の廃棄物貯蔵施設・減容施設の予定地、新旧土捨場やフランジタンク解体跡地の活用について、回答されたい。
回答
今後の敷地利用の可能性については、参考資料 P4 において、
・敷地南側:1~4号機に近いため、貯留水タンクエリアの効率化(フランジタンク解体跡地の活用)による敷地の確保等により、必要なタンクの増設や使用済燃料及びデブリ関連施設等、1~4号機の廃炉・汚染水対策のためのエリアとして活用していきたい。
・敷地北側:廃棄物置場が空き地となるのは早くても 2020年代半ば以降であり、将来的にも廃炉作業に伴い追加的に発生する廃棄物を処理・保管するエリアとして活用していきたい。
とされています。
また、今後の廃炉作業に必要な施設については、参考資料P3において「今後具体化を検討する施設」が例示されております。加えて、「今後、廃炉作業の進捗に従って必要な施設を検討する」とされており、現時点で敷地面積が十分かお答えすることは困難です。
(参考資料) ・廃炉事業に必要と考えられる施設と敷地 P3-4
10、連番29:「第2原発に搬出し保管する場合、事前調整の内容並びに所用時間はどの程度か」
・回答2は、ALPS小委員会の報告書を引用するばかりで質問に答えておらず、事前調整の内容並びに所用時間はどの程度か示されたい。
回答
ALPS処理水を福島第二原発に搬出して保管すると仮定した場合調整を要する関係者が多岐にわたることから、お答えすることは困難です。
なお、敷地外へのALPS処理水の持ち出しについては、ALPS 小委員会の報告書にお いて、
1ALPS 処理水の処分施設を設置する自治体や関係者等の御理解や、原子力規制委員会による設置許可、
2運搬時の漏洩対策を含む運搬方法の検討や運搬ルートの自治体の理解を得ることが必要となる
とされており、こうした課題を踏まえて、関係者の御意見もお伺いしながら、ALPS 処理水の取扱いを検討していきたいと考えています。
11、連番30:「中間貯蔵施設以外の用途で使用する場合、事前調整の内容並びに所用時間などはどのようなものか」
・回答22は、ALPS小委員会の報告書を引用するばかりで質問に答えておらず、事前調整の内容並びに所用時間などを示されたい。
回答
中間貯蔵施設を、中間貯蔵施設以外の用途で使用すると仮定した場合調整を要する関係者が多岐にわたることから、お答えすることは困難です。
なお、中間貯蔵施設予定地については、
1 中間貯蔵開始後 30 年以内に、福島県外での最終処分を完了するための必要な措置を講ずることを前提に、国が地元(県・立地二町)に説明の上、福島の復興のため受け入れていただき、用地を取得し、整備を進めている。
2 その際、地権者の皆様に、中間貯蔵施設のために利用させていただくため、土地の提供(地上権の設定を含む)をお願いしている。現在、福島県内の除去土壌等の搬入・処理・中間貯蔵のための用地取得と施設整備を進めているところであるが、特定復興再生拠点区域で発生する除去土壌等も含めて確実に貯蔵ができるよう、今後も 用地取得・施設整備を進めていく必要がある。
3 このため、福島第一原発の敷地の外側にある中間貯蔵施設予定地を、中間貯蔵施設以外の用途で使用し、福島第一原発の敷地を拡大することは難しいと考えられる。
とされています。以上を踏まえて、関係者の御意見もお伺いしながら、ALPS 処理水の取扱いについて、政府として結論を出していきます。
12、連番31:「ALPS処理水の処分も廃炉の一環として廃止措置終了までの処分というが、中長期ロードマップもままならない不透明な状況で、汚染水を福島県沖に海洋放出するのは、漁業者はじめ原発事故被災者にさらなる負担と苦悩を強いる、「福島差別」ではないか」
・回答2は、ALPS小委員会の報告書を引用するばかりで質問に答えておらず、漁業者はじめ原発事故被災者にさらなる負担と苦悩を強いる「福島差別」ではないか、回答を示されたい。
回答
ALPS処理水の取扱いについては、ALPS 小委員会の報告書を踏まえて、地元自治体や農林水産業者を始めとした幅広い関係者の御意見を伺っているところです。いただいた御意見をしっかりと受け止めながら、引き続き検討していきたいと考えています。
13、連番32:「併せて講ずるべき風評被害対策について取りまとめられるべきというが、何ら示されていないのは如何なものか」
・回答23は、質問に答えておらず、講ずるべき風評被害対策を示されたい。
回答
講ずるべき風評被害対策については、大変重要なものと考えており、関係者の御意見を丁寧にお伺いしながら検討していきます。なお、ALPS 小委員会の報告書においては、
・処分方法の工夫により風評への影響を抑えるべき
・風評被害を最小限に抑えるべく、消費者の懸念や不安の解消のため、情報を正確に伝えるリスクコミュニケーションの取組を行うべき
・農林水産品の販路の回復を促進するため、新規販路開拓に資する地元産品の展示スペースを常設化するなど、風評被害対策を拡充・強化していくべき
・将来、現時点では想定し得ないことにより風評への影響が生じうることも見据え、継続的な対応を行っていくべき とされています。以上を踏まえて、関係者の御意見もお伺いしながら、ALPS 処理水の取扱いについて、政府として結論を出していきます。
14、連番33:「「廃炉と復興の両立」が大原則というが、液体放射性廃棄物は、事故の発生者で加害者である東京電力が責任を持って管理保管しなければならず、経済産業省と原子力規制委員会は管理監督しリスクコントロールする義務があるにもかかわらず、海洋投棄の実行を推奨することは、あってはならないことではないか」
・回答23は、質問に答えておらず、液体放射性廃棄物の海洋投棄の実行を推奨することがあってはならないことか、回答を示されたい。
回答
経済産業省は、廃炉・汚染水対策チーム事務局として、福島第一原発の廃炉・汚染水対策が、中長期ロードマップに基づき、安全かつ着実に進むよう、東京電力を監督する立場にあります。
一方、原子力規制委員会は、福島第一原発の廃炉作業が実施計画に基づき遅延なく 進められ、リスクが着実に低減されるよう、原子炉等規制法に基づき、東京電力の廃炉の実施状況を監視する立場であると認識しています。
経済産業省としては、東京電力が、法令を遵守しながら、原子力規制委員会の監視の下で、廃炉・汚染水対策を安全かつ着実に進めるために、貯蔵量の増加が続く ALPS処理水の取扱いについて、検討を進めています。今後、ALPS小委員会の報告書を踏まえ、 幅広い関係者の御意見をお伺いした上で、政府として責任を持って結論を出していきま す。
15、連番34:「地元をはじめとした幅広い関係者のご意見をお伺いし、その結果を踏まえて、政府の方針決定というが、現在の意見聴取は地元の一部関係者のみにとどまっており、先般の「ご意見を伺う場」でも自治体関係や漁業関係者から、全国での説明公聴会や全漁業者から意見を聞いて欲しいとの声が上がっていたが、新型コロナウィルス感染症の収束を待って、全国の関係者から幅広く意見を伺うべきではないか」
・回答23は、全国での説明公聴会や全漁業者から意見を聞いて欲しいとの声を踏まえ、新型コロナウィルス感染症の収束を待って、改めて全国の関係者から幅広く意見を伺うのか、回答を示されたい。
回答
5月11日に開催した御意見を伺う場(第3回)においては、緊急事態宣言が続く中ではありますが、丁寧に関係者の御意見をお伺いするため、既に参加が予定され、かつウェブ会議での参加も可能と回答された方に参加いただきました。
具体的には、
・日本経済団体連合会
・日本旅行業協会
・全国旅行業協会
・日本スーパーマーケット協会
・日本チェーンストア協会
に参加いただき、経済・観光・流通に関係する全国団体の立場から、貴重な御意見を伺いました。引き続き、幅広い関係者の御意見をしっかりとお伺いした上で、ALPS 処理水の取扱いについて、政府として責任を持って結論を出していきます。
なお、これまでの御意見を伺う場における全ての議事はインターネットによる生中継を行っており、また、一般の方から御意見を伺うための書面での意見募集も行っています。書面での意見募集については、より丁寧に御意見を伺う観点から、募集期限を当初の5月15日から6月15日まで1か月間延長いたしました。どなたでもご覧いただける環境と、どな たでも意見表明のできる環境を整え、透明性を確保しながら、幅広く御意見を伺いたいと 考えています。
16、連番35:「2022年の2年前の今夏に処分方法を決定するというスケジュールありき、海洋放出ありきの対応はやめ、立ち止まって対応を見直すべきではないか」
・回答26は、「いつまでも時間をかけて検討するものではない」といい「スケジュールありきで進めるものではない」というならば、今夏に処分方法を決定するとの結論ありきの強行をやめるのか、改めて回答を示されたい。
回答
「今夏に処分方法を決定するとの結論ありきで進めている」という事実はありません。 その上で、ALPS 小委員会の報告書においても確認されているように、発電所の敷地には限りがあり、追加的にタンクを設置する余地は限定的であるため、こうした状況を踏まえれば、政府としては、いつまでも時間をかけて検討するものではないと考えています。
他方で、スケジュールありきで進めるものではないと考えており、幅広い関係者の御意見をお伺いした上で、結論を出していきます。