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ロンドン条約・国連海洋法条約に違反の汚染水海洋放出を許すな!

若狭ネットから、「トリチウム汚染水の海洋投棄反対」の号外が届きました。

「トリチウム汚染水の海洋放出反対」に関する若狭ネット号外(2020/5/27)。(下記に転載)
http://wakasa-net.sakura.ne.jp/pre/news/extra20200527.pdf

ロンドン条約・議定書および国連海洋法条約に違反する 高濃度トリチウム汚染水の500倍希釈・海洋放出を許すな!

東京電力と政府・経済産業省は、高濃度トリチウム汚染水119万m3(2020年3月12日時点)、860兆Bq (ベクレル)を海水で約500倍に薄めて海洋放出しよう としています。これが強行されれば、5.8億m3の希釈された汚染水が30年以上にわたって、毎日5万m3、 1,000m3タンク50基分相当の海洋放出が毎日続くのです。このような暴挙は断じて許せません。私たちは、 次の5つの観点からトリチウム汚染水の海洋放出に断固反対し、福島の運動と連帯してきました。
1 これ以上の被ばく強要は許されない
 2 トリチウム汚染水の海洋放出は法令(告示)違反
3 32万m3を固化埋設し、残りはタンク保管を
4 東電と政府は事故責任と対策破綻の責任をとれ
5 ロンドン条約と国連海洋法条約を厳守せよ
の5つです。
 以下では、これらを概括しますので、福島から提起された「トリチウム汚染水の海洋放出反対」署名の拡大にご活用ください。また、経産省等は、2018年8月説明・公聴会で出された意見への2020年4月3日回答、脱原発福島県民会議やヒバク反対キャンペーンなど8団体からの質問への2020年5月13日回答、 福島県いわき市議会からの再質問への2020年5月18日回答を出しており、これらに対する反論も付け加えています。その中でも、特に、ロンドン条約や国連海洋法条約に違反するとの私たちの指摘への回答の内容そのものが、条約の無理解と曲解による国際法違反であることを示したいと思います。

1 これ以上の被ばく強要は許されない
 福島県民は、福島第一原発事故で原子力災害に見舞われた原子力被災者であり、事故直後には約8万人が強制的に避難させられ、約400万人が放射線管理区域(外部放射線量が1.3mSv/3ヶ月(0.6μ Sv/h)超または表面密度でα核種4kBq/m2超、その他 40kBq/m2超)に相当する汚染地での生活を余儀なく され、「一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年」を超えて被ばくさせられました。その影響はまだ続いています。被災前の自然放射線量率0.04μSv/hを基準と して、これを超える追加被ばく線量が1mSv/年(空間線量率0.19μSv/h相当)を超えないように、徹底した対策を講じることこそが、東京電力と政府の第一の義務であるはずです。「緊急時被ばく状況」(参考レ ベルとして20~100mSv/年を強要)や「現存被ばく状況」(1~20mSv/年の下方部分を参考レベルとし、長期的 に1mSv/年を目指す)など現行法令にないものを根拠にして、「一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年」を超える被ばくを強要することは許されません。
 地下水バイパスやサブドレン・地下水ドレンの排水濃度の運用基準を準用してトリチウム汚染水の海洋放出を強行するのは、「希釈を行わない」との運用基準に違反し、「ALPS処理水は海洋放出しない」 との約束に違反します。さらに、被災前の自然放射線量率0.04μSv/hを基準として追加される被ばく線量を規制し「一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年」 を担保する法令(告示)の趣旨にも違反します。

2 トリチウム汚染水の海洋放出は法令(告示)違反
 トリチウム汚染水には、トリチウム以外の核種が告示濃度限度の2万倍もの高濃度で含まれたままですが、いわき市議会からの再質問への5月18日回答で、経産省は「まずは2,000m3程度の処理を行い、二次処理の性能を確認するが、さらなる二次処理は空きタンクの確保等の検討を行う必要があるため、現時点で回答困難です。」とごまかし、「希釈前の段階で二次処理を行ない、放出する際の基準を満たす方針です。」としています。しかし、「基準」が告示濃度限度と同じである可能性が高く、形だけの二次処理でお茶を濁し、告示濃度限度まで海水で希釈して放出する可能性も否定できません。現に、更田原子力規制委員長は、二次処理は「告示濃度制限が守られる限り、絶対に必要なものという認識はない。」 「科学的には、再浄化と(より多くの水と混ぜることで)希釈率を上げるのに大きな違いはない。」(10.5 記者会見、福島民友新聞2018.10.6)と発言しています。 告示濃度限度の2万倍でも2万倍に薄めればよいというのは暴論であり、法令(告示)違反です。
 告示では、福島第一原発の敷地境界から外部へ放出される放射線、液体、気体のすべてによる被ばく線量が「一般公衆の被ばく線量限度1mSv/年」を超えないことが条件として定められています。福島第一原発では、敷地外部への放射線が0.7mSv/年程度になるため、地下水バイパス・サブドレンの運用基準を決める際、0.22mSv/年を超えないこととされていて、これを超えると告示違反になるのです。
 その判断基準として、液体や気体に含まれる放射性核種のそれぞれについて「告示濃度限度」が定められています。たとえば、「水中における告示濃度限度」は、「放出口における当該濃度の水を生まれてから70歳になるまで毎日約2L(成人では約2.6L) 飲み続けた場合に、70年間の累計で70mSv、年平均で1mSv/年に達する濃度」として定められていま す。複数の核種が含まれる場合には、核種ごとに含有濃度を告示濃度限度で割った比(毎日約2L飲み続 けた場合の年平均被ばく線量に相当)を求め、この「告示濃度比」の総和が0.22未満であれば「0.22mSv/年」未満の条件を見たすと判断するのです。
 しかも、この告示は「一般公衆の年被ばく線量が 1mSvを超えない」ことを担保するための法令であり、 この趣旨からすれば、敷地外への過去の放射能放出の影響が残っていれば、その分を差し引く必要があります。福島第一原発の敷地境界では、事故時に放出されたセシウムの影響で、今でも1mSv/年を超える線量がモニタリングされていますので、トリチウム汚染水の海洋放出の余地など全くないはずです。

3 32万m3を固化埋設し、残りはタンク保管を
 トリチウム汚染水は、タンク貯蔵と米サバンナリバーで実績のあるグラウト固化埋設の併用等で陸上保管すべきです。トリチウムの告示濃度比が20倍(120 万Bq/L)以上のタンク貯留水は約32万m3で、そこに約520兆Bqが含まれますので、トリチウム以外の核 種濃度を極限にまで減らした上で、これを敷地北側の土捨場を利用して固化埋設すれば、数百年後にはほぼ無害になります。32万m3分の空きタンクも利用可能になります。残りのタンク水86万トンに含まれるトリチウムは340兆Bq、平均40万Bq/Lであり、100年経てば、1.2兆Bqに下がり、その濃度も地下水バ イパス運用目標の1,500Bq/L未満へ低下します。その頃には、セシウムによる汚染も今より1桁程度低く なり、廃炉・汚染水対策も大きく変わっているでしょう から、その時点で残された汚染水をどうするかを決めても遅くはありません。ところが、いわき市議会から米サバンナリバーの実例について検討したのかとの再質問に、経産省は5月18日、「個別の事例を挙げた検討は行っていません」と回答し、「今後検討す る」姿勢すら見せず、不真面目です。
 東電は、福島第一原発敷地を町境で分割し、北 (双葉町)側を「廃棄物処理・保管エリア」、南(大熊町)側を「汚染水タンク・使用済燃料・燃料デブリ保管エリア」と人為的に分け、南側は満杯だとし、北側の土捨場等の空地はタンク増設や固化埋設には使わないと恣意的に設定しています。「土捨場の汚染土は敷地外へ持ち出せない」とか「空地には他の用途が計画されている」とかは「できない理由」を無理に挙げたすぎません。この前提を取り去れば、「2022 年6月の恣意的な期限」もなくなるのです。その意味では、タンク増設の余地はあり、真剣に考慮していないだけだと言えます。
 2019年12月23日の東電シミュレーションでは、海洋放出しなければ2035年には183万m3に達し、トリチウム汚染水が発生しなくなる2048年頃まで100m3/日の割合で増え続けると試算しています。事故発生か ら10年以上経てば、溶融燃料の発熱量は2kW/tHM へ下がり、炉内構造物やコンクリートと混合した燃料 デブリでは1kW/t程度と推定され、冷却水注入方式から自然空冷方式への移行を検討し、燃料デブリと接触して生じる汚染水や地下水の建屋流入量の抜本的抑制を図るべきです。東電シミュレーションはこれを全く考慮していません。   
 「不都合な想定」はモデル化せず、海洋放出ありきで問答無用の傲慢な態度なのです。

 4 東電と政府は事故責任と対策破綻の責任をとれ
 東京電力と政府は、福島第一原発で炉心溶融事故を招いた責任をとらず、成否不明の凍土遮水壁を中心とする汚染水対策が破綻した責任をとらず、 汚染水対策として福島県民に苦渋の決断を強いた地下水バイパスやサブドレン等で「希釈は行わない」とする運用基準を踏みにじり、「トリチウム汚染水 (ALPS処理水)は海洋放出しない」との約束さえ反故にするものであり、絶対に許せません。
 そもそも、今日の危機を招いたのは東電と政府です。福島第一原発1~3号炉心溶融事故を引き起こした責任は東電と政府にあり、廃炉・汚染水対策の責任も東電と政府にあります。事故直後の汚染水対策として、「地下水の流れを抜本的に変える大規模な土木工事の場合は東電救済になるから資金援助できないが、成功するかどうかわからない凍土遮水壁工事なら研究開発予算を出せる」として、役に立たない凍土壁を作って汚染水を累々と貯め続けてきたのは東電と政府です。汚染水貯蔵タンクの容量は 当初の80万 m3(2013.5)か ら 90万 m3(2014.7)、 120万 m3(2016.8)、 135万 m3(2016.9)、 136.5万 m3(2019.2)と な し崩し的に増やされてきました。「それが満杯になるから海洋放出以外にない」というのは自らの失策と 無能を棚上げにして居直り、福島県民に一層の犠牲を強いて逃げるものです。
 まずは、福島事故を招いた責任を認め、汚染水対策破綻の責任を認め、放射能放出で福島県民にこれ以上犠牲を転嫁しないため、海洋放出回避策に全力で真剣に取り組むのが政府の最低限の責任です。原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を拒否し、事故処理能力もなく、申し訳ないという反 省のかけらもない東電には退場してもらう以外にあり ません。

 5 ロンドン条約と国連海洋法条約を厳守せよ
 低レベル放射性廃棄物を、陸上保管可能な代替案があるにもかかわらず、意図的に海洋放出して海を汚染するのはロンドン条約とその議定書に違反し、 国連海洋法条約にも違反します。1993年3月30日に閣議決定した平成5年度原子力開発利用基本計画の「低レベル放射性廃棄物の海洋投棄については、 関係国の懸念を無視して行わない」との方針に違反し、1993年11月2日の原子力委員会決定にある「低レベル放射性廃棄物の海洋投棄は、国際原子力機関の基準等に則って行えば、公衆の健康に特段の影響を与えるものではないと考える。しかし、・・・我が国としては、今後、低レベル放射性廃棄物の処分の方針として、海洋投棄を選択肢にしない」との方針にも違反します。
 ところが、原子力委員会は5月13日の回答で、こ の低レベル放射性廃棄物は「固体廃棄物や固化した廃棄物を海洋に投棄して処分することを指すこと から、福島第一原発トリチウム汚染水の海洋放出は、 『海洋投棄』に該当しない。」としていますが、ロンド ン条約は第三条4項で、海洋投棄が禁止される「『廃棄物その他の物』とは、あらゆる種類、形状又は性状の物質をいう。」と定義し、第四条第1項で「廃棄物その他の物の投棄(その形態及び状態のいかんを問わない。)を禁止する。」と明記しています。固体以外の液体なら除外されるという理解そのものがロ ンドン条約違反なのです。
 1993年原子力委員会決定の10日後、同年11月12日の第16回ロンドン条約締約国協議会議では、 「放射性廃棄物およびその他の放射性物質」の海洋投棄の原則禁止等が採択され、1996年11月にロ ンドン条約の議定書が採択されました。その附属書 一(投棄を検討することができる廃棄物その他の物)では、 「国際原子力機関によって定義され、かつ、締約国によって採択される僅少レベル(すなわち、免除される レベル)の濃度以上の放射能を有する」しゅんせつ物・下水汚泥・魚類残さ又は魚類の工業的加工作業から生ずる物質等8種類の物質は「投棄の対象と して検討してはならない」とされていますが、そもそも トリチウム汚染水などの放射能汚染水は「投棄を検討することができる対象」ではなく、「高度濃度放射性廃液を免除レベル未満へ海水で希釈すれば海洋投棄してもよい」という規定もないのです。 船等で投棄禁止されたものを海洋放出できるのか
 トリチウム汚染水の海洋放出法には、(a)タンクか らパイプラインで大型タンカーなどの船に積み替えて沖合で放出、(b)パイプラインを伸ばして沖の海上または海底で放出、(c)パイプラインの排出口を沿岸部に設置して放出の3つが考えられます。このうち、 (a)は明らかに海洋投棄で、ロンドン条約に違反しますが、(b)と(c)はロンドン条約・議定書による規制対象とは言え、現時点では必ずしも明確に禁止されているわけではありません。「パイプライン」がロンドン 条約第三条第1項の「船舶、航空機又はプラットフォ ームその他の人工海洋構築物」に該当するかどうかは国際海事機関IMOでも議論が続いており、今後、 一層の規制強化が図られ、議論次第で投棄の定義に繰り入れられて禁止される可能性もあります。ただし、ロンドン条約前文で「海洋汚染が投棄並びに大気、河川、河口、排水口及びパイプラインを通ずる排出等の多くの原因から生ずる」として、パイプライ ン排出と投棄が区別されていること、国際海事機関 IMO報告で「パイプラインによる鉱滓の海または河川への放出は投棄とは考えられていないが、ロンド ン条約・議定書の総合的な目的は、すべての汚染発生源から海洋環境を保護し保全することである。」 (IMO Report, International Assessment of Marine and Riverine Disposal of Mine Tailings, p.17, May 2013)と記され、ノルウェー、チリ、仏、英、ギリシア、トルコ、イ ンドネシア、パプアニューギニアでの沿岸近くの金・ 銅・鉄等の鉱山14ヶ所でのパイプラインによる30~ 4,000m海底への鉱滓放出例が海洋汚染の危惧と共に示されていることを考慮すれば、現時点では、 (b)と(c)は海洋投棄として禁止されていないと言えます。とはいえ、(a)で禁止されるトリチウム汚染水の海洋放出が、排出方法を(b)や(c)に変えただけで禁止されないというのも理が通りません。海洋汚染防止の総合的な目的から言っても、結果が同じであれば、 方法が違っても禁止すべきです。世界に先行して日本で禁止することはロンドン条約の趣旨でもあります。
 ところが、経産省は2018年説明・公聴会で「タンカ ー船や配管を引くことによる沖合での海水希釈・海洋放出」の可能性を問われ、「海上からの放射性廃棄物の海洋投棄は、ロンドン条約及び原子炉等規 制法により禁止されている。」と回答しただけで、ロン ドン条約等で海洋投棄が禁止されている放射能汚染水を、なぜ、(c)の方法でなら海洋放出しても良い のか、説明していません。別の意見に対しては「(ロ ンドン条約は)陸上からの排出を禁止していないと解される」とも回答していますが、国連海洋法条約 では(b)も(c)も海洋放出の規制対象になっています。

 陸にある発生源からの海洋汚染も規制すべき
 1982年の国連海洋法条約では、1972年ロンドン条約の「投棄」の定義をそのまま条文化し、第210条で「投棄による海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するため法令を制定」し「必要な他の措置をとる。」と定めると同時に、第207条で「陸にある発生源(河川、三角江、パイプライン及び排水口を含 む。)からの海洋環境の汚染を防止し、軽減し及び規制するための法令を制定」し「必要な他の措置 とる。」と、「投棄」と同じ表現で定め、さらに、第213 条で「第207条の規定に従って制定する自国の法令を執行するものと」すると、法令の執行まで強く求めています。
 ロンドン条約と国連海洋法条約の間に壁 はないというのが国際的な常識なのです。
 ロンドン条約・議定書と国連海洋法条約の海洋汚染防止の趣旨を踏まえるなら、海洋投棄が禁止されているものを、放出手段を変えて「投棄」するのは、 国際的な信義にもとる違反行為だと言えるのです。
 新型コロナ感染防止のための緊急事態宣言の下でも経産省は御意見を聞く会を強硬開催するなど、 今夏のトリチウム汚染水海洋放出決定に向けて動いています。福島から提起された反対署名を広げ、署名の大衆的な力で海洋放出を阻止しましょう。
by kazu1206k | 2020-05-29 22:42 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


by kazu1206k