一般質問報告3-水産業の復興、小名浜地区の公共施設再編とまちづくり、中山間地域
2020年 06月 10日
最終回は、「いわき市の再生と地域課題の解決」の「水産業の復興」と「小名浜地区における公共施設再編と連携したまちづくり」、「中山間地域の振興」、です。
1 いのちを守る、新型コロナウイルス感染症対策について(第1回)
(1)検査と医療提供体制の充実等について
(2)介護・福祉の現場への支援について
(3)個人と企業等に対する本市独自の支援策について (第2回)
2 いのちを守る、防災・災害に強いまちづくりについて
(1)令和元年東日本台風における災害対応の検証と今後の改善について
3 いわき市の再生と地域課題の解決について(第3回)
(1)水産業の復興について
(2)小名浜地区における公共施設再編と連携したまちづくりについて
(3)中山間地域の振興について
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大きな第三点は、いわき市の再生と地域課題の解決について、です。
1点目は、水産業の復興について、です。
本市においては、本議会の提案により、水産業の発展及び魚食文化の振興に寄与することを目的に「いわき市魚食の推進に関する条例」がスタートし、昨日は魚の日でした。漁業者は、地元の海と海洋に育まれた魚介類を漁獲することを生業としています。令和元年度の漁獲高は、震災前の14%に留まっていますが、本年2月に出荷制限が解除され、震災・原発事故以来9年で若い漁業者の参入が進んだと聞いています。
⑨まず、本市の水産業の現状について、漁協別漁船隻数、主要魚種別水揚状況、回船別水揚状況など、震災前と比較して、本市水産業の現状はどうか、お尋ねします。
—答弁(農林水産部長)
本市水産業の現状についてでありますが、震災前の平成22年と比較して、漁協別漁船隻数については、令和元年12月末時点で、沿岸漁業を担ういわき市漁業協同組合の漁船数は224隻で、156隻の減、沖合漁業を担う小名浜機船底曳網漁業協同組合など5団体の漁船数は58隻で、9隻の減となっております。
次に、主要魚種別水揚状況については、暫定値となりますが、令和元年の沿岸漁業の水揚量は試験操業中のため、861トンで83.6%の減、令和元年の沖合漁業の水揚量は、イワシについては2,740トンで64%の増となった一方で、主要魚種であるカツオ、サンマが海水温の上昇等により漁獲量が低迷しており、カツオは495トンで90.5%の減、サンマは489トンで90.2%の減となり、沖合漁業全体では、5,912トンで60.2%の減となっております。
また、平成30年の回船別水揚状況については、カツオやサンマの漁獲量の低迷により、回船による水揚量全体では、726トンで92.5%の減となっており、本市の水産業は、震災前と比較し、依然として厳しい状況が続いております。
⑩次に、いわき市水産振興協議会の協議について、協議の進捗状況はどうか、お尋ねします。
—答弁(農林水産部長)
市水産業振興協議会は、水揚量の向上や販路の回復、漁業担い手の育成、消費者への魚食普及など、本市水産業が抱える課題の解決に向け、生産、流通、消費に関わる関係者が相互に連携して取り組むため、令和元年5月に、市内の水産関係団体や観光関係団体等の委員18名及びアドバイザー2名を構成員として設置したところであります。
当協議会には、下部組織として流通・PR促進検討部会及び担い手育成検討部会の2つの部会を置き、これらの部会で検討を重ね、昨年11月に開催した
第2回協議会において、各部会で協議された本市漁業の特徴を活かした販売戦略や観光産業との連携強化、さらには魚食普及や担い手確保及び後継者の育成など、本市水産業が取り組むべき施策の方向性について、テーマごとに中間報告を取りまとめ、令和2年度における浜の名産発掘事業や学校給食魚食普及推進事業など新規事業の予算化につなげたところであります。
⑪次に、いわき市水産業振興プランの改定について、本年度までの第二期いわき市水産業振興プラン(3重点項目、7部門41施策)の成果と課題を踏まえ、来年度からの新たな水産業振興プランをどう改定するのか、お尋致します。
—答弁(市長)
第二期市水産業振興プランの推進にあたりましては、「震災や原子力災害を乗り越え、次世代につながる水産業を目指す」を基本目標に掲げ、これまで各種施策を展開してきたところであります。
その主な成果といたしましては、震災により大きな被害を受けた小名浜魚市場について、冷凍荷捌き施設を併設した新たな魚市場として再整備するとともに、回船誘致や魚市場活性化対策事業により、本市への水産物の水揚げ、流通機能の回復に取り組みました。
また、風評払拭に向け、水揚げされた魚介類の放射性物質に係る検査体制を充実するとともに、地域ブランド「常磐もの」をキーワードに、その品質やおいしさの魅力等を市内外にPRし、本市水産物の安全性の発信や「常磐もの」の認知度向上、さらには消費拡大にも努めてきたところであります。
新たな水産業振興プランの策定に向けましては、昨年度から市水産業振興協議会におきまして、これまでの取組みの成果や本市水産業の課題を踏まえた見直しに着手し、今後、現行のプランに位置付けた施策体系等の点検作業とともに、協議会でまとめた新たな施策の位置付けや数値目標の設定等について検討を行った上で、プランの素案を作成し、パブリックコメントを経て、年内のプラン策定を目指して取り組んで参りたいと考えております。
⑫次に、旧小名浜魚市場跡地の活用の検討について、これまでの関係機関の協議、現時点における検討状況を踏まえ、本市としては今後どう対応するのか、お尋ねします。
—答弁(農林水産部長)
旧小名浜魚市場敷地につきましては、平成28年度から跡地の利用計画が決定するまでの一定期間、乗組員や流通業者等の暫定駐車場として、関係団体3者に無償貸付しているところであります。
跡地利用にあたりましては、福島県漁業協同組合連合会及び小名浜水産業加工協同組合など関係4者と定期的に意見交換会を行ってきたところであり、その中で、小名浜港が本市漁業の一大拠点として水揚量を回復し競争力を高めていくためには、水揚げから加工、流通までの機能集約と衛生管理の整った施設が必要であるとの観点から、現在、老朽化が著しい西魚市場の代替施設として、小名浜魚市場の隣接地に新たな水産加工施設を整備してはどうかとの意見が示されております。
こうした中、跡地の有効利用を図るためには、事業主体や計画内容、整備手法などの詳細な検討を行う必要がありますことから、市といたしましては、引き続き、県や関係団体との協議を進めて参りたいと考えております。
⑬次に、東電福島原発の汚染水について、水産業の復興を阻害する「多核種除去設備等処理水」の海洋放出処分計画がありますが、本市として陸上保管を実現すべくどう対応するのか、お尋ねします。
—答弁(危機管理監)
市といたしましては、多核種除去設備等処理水、いわゆるアルプス処理水の取扱いにつきましては、廃炉作業を含め、被災地の復興との両立のもと、着実な推進と、確実な安全確保により進められることが基本であると考えております。
このため、国が去る4月13日に開催した「関係者の御意見を伺う場」において、市長自ら、「一般の方々を含めて幅広く意見を伺い、具体的な風評対策を示し、理解を得ながら方針を検討すること」に併せ、本市における農林水産業や観光業等の復興状況について具体的に伝えるとともに、「国が被災地の復興の現状を正確に把握し」、「将来に禍根を遺さないためにも拙速に結論を出さず、あらゆる可能性を検討すること」等について、強く求めたところであります。
現在、国におきましては、地元自治体や関係者の意見を聴くとともに、浜通り地域の市町村議会へ説明するほか、書面にて一般の方々からの意見も募集しており、今後もこうした幅広い関係者から意見を聴いた上で、方針を決定するとしていることから、市といたしましては、今後の国の動向を注視するとともに、引き続き、国が責任をもって前面に立ち、本市を含めた幅広い関係者や一般の方々からの意見を真摯に受け止め、具体的な風評対策を示し、理解を得ながら、方針を検討するよう、機会を捉えて、強く求めて参りたいと考えております。
最大の風評対策は、汚染水を流さないこと、これに尽きると思います。そういう意味では、陸上保管の継続を多くの人々が願っており、市民の間でもそういう声が多数でありますので、引き続き陸上保管の継続を求めて頂きたい。本市の基幹産業の一つである水産業の本格的復興を目指す本市としては、海洋放出に反対して、漁業者を守っていく、という強い決意が必要であります。市民の願いでもある水産業復興の実現に向けた、本市の着実な施策展開を要望します。
2点目は、小名浜地区における公共施設再編と連携したまちづくりについて、です。
小名浜まちづくり市民会議では、20年かけて、貨物ヤードだった港湾背後地を賑わい空間としての再生を、市民・各行政機関と連携して図ってきました。また、新たな小名浜のグランドデザインをまとめ、アクションプログラムに取り組んでいます。
⑳まず、いわき市立地適正化計画に基づく小名浜地区のまちづくりについて、公共施設再編と連携した市街地再生整備の推進に関する庁内検討委員会における事業実施可能性の検証作業の進捗状況はどうか、お尋ねします。
—答弁(都市建設部長)
いわき市立地適正化計画に基づく市街地再生整備につきましては、計画に位置付けた8つの都市機能誘導区域のうち、市街地の再生が急務である、常磐、四倉及び小名浜の3地区を対象として、昨年7月に設置した「市街地再生整備検討委員会」において、公共施設再編と連携した事業実施の可能性について、検討を行っているところであります。
そのうち、小名浜地区の進捗状況といたしましては、公共施設の再編に係る対象施設の抽出や、施設規模等の検討をはじめ、集約・複合化の候補地選定や配置の検討、さらには、道路・公園等の施設管理者との事前相談など、基礎的な調査・検討を進めているところであります。
21、次に、支所・市民会館・公民館・図書館・保育所などの公共施設再編と連携したまちづくりについて、市街地中心部に位置する横町公園などを活用した施設の集約・複合化に関する見通しはどうか、お尋ねします。
—答弁(都市建設部長)
小名浜地区における市街地再生整備につきましては、現在、横町公園周辺や市民会館周辺を対象として、公共施設の集約・複合化に関する検討を進めているところであります。
このうち、横町公園周辺につきましては、既存公園の廃止に伴う代替機能の確保や、公園敷地の一部を使用した施設配置など、都市公園法等の取り扱いについて、また、市民会館周辺につきましては、市民プールの廃止に伴う跡地等を活用した施設再編や、交通アクセスの確保などについて、それぞれ検討を進めているところであり、現時点におきましては、候補地の選定に至っていない状況にあります。
今後におきましても、「市街地再生整備検討委員会」において、道路・公園等の基盤整備の導入や建設コストの検討、さらには、民間活力の導入や防災性の確保など、多角的な視点による事業実施の可能性について、検討を行ってまいりたいと考えております。
22、次に、地域交通の確保について、グリーンスローモビリティの効果的導入実証事業に関する令和元年度の利用実績、利用者の傾向、利用者の声などを踏まえて効果を検証し、地域循環型のバスの運行など、将来の地域交通の確保をどう進めるのか、お尋ねします。
—答弁(都市建設部長)
よろしくご検討をお願いいたします。
3点目は、中山間地域の振興について、です。
23、まず、中山間地域等直接支払制度について、今後どう対応していくのか、お尋ねします。
—答弁(農林水産部長)
中山間地域等直接支払制度につきましては、高齢化により地域の共同作業に取り組むことが困難である、あるいは、事務手続きが複雑で負担が大きいといった意見が寄せられております。
このため、市といたしましては、これまで集落に対する事業説明会を開催する中で、提出書類の作成を支援するなど、集落の事務負担の軽減を図る取り組みを行ってきたところでありますが、制度の円滑な活用を図るには、更なる取り組みが必要であると認識しておりますことから、今後におきましては、複数の集落と締結してきた協定を一つの協定として束ねる、広域化を推進することにより、高齢者の共同作業の負担軽減や事務負担の軽減を図って参りたいと考えております。
また、国におきましては、行政手続きなどの事務に関し、デジタル技術の活用により徹底した行政手続きの簡素化を促進する方針を示しておりますことから、国や県に対して、提出書類や手続きの簡略化などの事務負担の軽減について要望を行うなど、集落による取り組みが容易となるよう意を用いて参りたいと考えております。
24、次に、中山間地域への支援事業について、これまでの実績、あるいは課題などを踏まえ、今後どう対応していくのか、お尋ねします。
—答弁(市民協働部長)
本市における中山間地域集落支援員につきましては、平成23年度から、また、地域おこし協力隊につきましては、平成27年度から順次配置しており、各地域において互いに連携して暮らしの支援と特色ある魅力的な資源を活用した地域活性化に取り組んでおります。
これらの取組みにより、遠野地区では遠野和紙の継承、三和地区ではいわき伝統野菜「むすめきたか」を活用した農業の6次産業化、田人地区では子どもから高齢者まで誰もが集える「コミュニティハウス」の企画・運営による憩いの場の創出、川前地区では高齢者の見守り活動や駅前屋台の開設による集落の維持・活性化、小川地区では集落支援員による地域の食材を活かした料理教室の開催による地域内交流の促進などが図られてきたところであります。
一方、集落支援員につきましては高齢化や限られた人員で多くの地域課題に対応していること、また、地域おこし協力隊につきましては任期終了後の定住実績がないことなど、それぞれに課題がありますので、集落支援員の配置体制の拡充の検討や、地域おこし協力隊の定住・定着に向けた起業支援等を行うなど、それぞれが地域で活躍できる環境づくりを支援しながら、引き続き、中山間地域の暮らしの支援と活性化に取り組んで参りたいと考えております。
