経済産業省に公聴会開催を要請
2020年 09月 04日
経済産業大臣 梶山弘志様
要 請 文
経済産業省の「多核種除去設備等処理水の取り扱いに関する小委員会」がまとめた報告書において、東京電力が福島第一原発敷地内に貯留しているALPS処理汚染水について、「大気または海洋放出が現実的な選択肢であり、海洋放出の方がより確実に実施できる」との方針を示し、それを受けて「関係者の御意見を伺う場」での意見聴取、「パブリックコメント」の募集などを行い、また、福島県内の首長や各団体などを訪れ説明をするなど、着々と海洋放出の方針を決定しようとしています。
しかし、私たち福島県民にとって、未だ解消されない多くの疑問があります。
例えば、東電や経産省は貯留タンク内に残留している放射性核種は62核種と説明していましたが、後になって炭素14が含まれていたことが明らかになりました。更に他には無いのでしょうか。また、残留核種の総量はどのくらいあるのでしょうか。今年9月から二次処理の試験をするとされていますが、結果が明らかになっていない段階で、処分方法を決定しようとするのはおかしいのではないでしょうか。処理しようとしているALPS処理汚染水は、2022年夏頃までのタンク貯留容量としている約134万㎥だけなのでしょうか。建屋内に滞留する高濃度の汚染水は含まないのでしょうか。
また、経産省 廃炉・汚染水対策官の奥田修司氏は廃炉と同時に汚染水のタンクをすべて撤去したいといっていますが、廃炉とはいったいどのような形態を意味するのでしょうか。多くの福島県民がイメージしているように原発に関わるすべてのものが撤去され更地になるという意味なのでしょうか。
2015年(平成27年)8月11日、東電から新たな汚染水対策であるサブドレンの地下水排出を提示された福島県漁業協同組合連合会は「苦渋の決断」として受け入れました。受け入れにあたり同会が提出した要望書の中の「建屋内の水は多核種除去設備等で処理した後も、発電所内のタンクにて責任を持って厳重に保管管理を行い、漁業者、国民の理解を得られない海洋放出は絶対に行わない事」に対して東電は以下のように回答しています。「・建屋内の汚染水を多核種除去設備等で処理した後に残るトリチウムを含む水については、現在、国(汚染水処理対策委員会トリチウム水タスクフォース)において、その取り扱いに係る様々な技術的な選択肢、及び効果等が検証されております。また、トリチウム分離技術の実証試験も実施中です。・検証等の結果については、漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、このようなプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備等で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留いたします。」
一方、政府の中長期ロードマップにおいて、「『液体廃棄物については、地元関係者の御理解を得ながら対策を実施することとし、海洋への安易な放出は行わない。海洋への放出は、関係省庁の了解なくしては行わないものとする。』という現行の方針は堅持。」とあります。いったいどちらの意見が正しいのでしょうか。
海洋の汚染を防止することを目的としたロンドン条約では、投棄禁止対象物質に放射性物質が含まれています。沖合いではなく陸地から流すので条約違反とはならないという考えは、海の汚染をなくしていこうとする世界の潮流に逆行するし、条約の精神に反する脱法行為と考えられるのではないでしょうか。
このように、私たちはALPS処理汚染水の処分方法を決定する前に、説明してほしいこと、意見を聞いてほしいことが数多くあります。他にも疑問を抱いたまま決定されることを懸念している県民は大勢います。海はつながっています。貴省におかれましては、処分方法の拙速な決定をせずに、経産省が選んだ関係者だけではなく、一般市民が参加できる公聴会を県内各地はもちろん県外でも開催し、全国民による民主的な合意形成を行うよう強く要望し、以下を要請いたします。なお、9月25日まで書面でのご回答をお願いいたします。
要 請 事 項
1、福島県内各地、及び県外において、一般市民向けの公聴会を数多く開くこと。
2、原発事故により発生した放射性物質を含むALPS処理汚染水を環境に放出せず、
放射線が十分に無害となるまで減衰するか、残留するすべての放射性物質の
分離技術が確立するまで海洋放出しないこと。
共同代表 織田千代 佐藤和良
〒972-8317 いわき市常磐下湯長谷町道下53-2
電話 0246-44-5224