3月17日、今年も「福島はオリンピックどごでねぇ」アクションが、双葉郡楢葉町のサッカーナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」周辺で、原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)と脱原発福島ネットワークの呼びかけで、行われました。
東京電力福島第一原発事故から10年。コロナ禍の中で、3月25日、東京五輪の聖火リレーがJヴィレッジから始まろうとしていますが、未だに原子力緊急事態宣言が発令中です。現在も、デブリ取り出しの見通しも立たない困難な事故収束作業が続いています。2月13日の福島県沖地震による原子炉格納容器の破損拡大による水位・圧力の低下や故障した地震計の放置など、東京電力の危機管理や通報連絡、情報公開に重大問題が露見しており、事故原発の状況はコントロールできないままです。
政府は、復興五輪と銘打ち、五輪招致が決められた2013年、アンダーコントロールという嘘でオリンピックを招致しました。しかし、汚染水はアンダーコントロールどころか依然として124万トンもタンクに溜まり続け、タンク貯蔵汚染水の海洋放出の企てにも、漁業者は海を守るために陸上保管を求め、多くの福島県民が海洋放出に反対しています。
また、政府は帰還困難区域の避難指示解除を進めていますが、避難者はじめ原発事故の被害者・被災者は、「誰のためのオリンピックなのか」と、政府の被害者・被災者切り捨てに危機感を募らせています。
福島県では、昨年の聖火リレーが直前で中止になり2億5千万円が支払われ、今年も同程度の予算が組まれる一方、新たな住まいが見つからない国家公務員宿舎の原発避難者には2倍の家賃を請求し、提訴してまで追出しにかかっています。
新型コロナウイルス感染症が拡大し、福島県の即応病床使用率が90%近くにひっ迫する事態となってる現状、昨年同時期に比べれはるかに危機的状況のなかで、「新型コロナウイルスを克服した証としての五輪」、聖火リレーを決行するのでしょうか?国民世論の多数が東京五輪の中止などを求め、福島県民ももろ手を挙げて賛成しているわけでもない状況で、国も福島県もオリンピック以前に、被害回復のためにやるべきことがたくさんあります。
こうした現実を踏まえ、福島第一原発事故のすべての被災者が人として生きる権利を求めて、今年も「福島はオリンピックどごでねぇ」アクションが行われ、福島県内はじめ東京や神奈川の避難者、被害者団体メンバー、オリンピック災害お断り連絡会の皆さんなど約30人が参加。原発事故被害の体験、それぞれが闘っている裁判の現状などを訴え、「アスリートも住民も被ばくさせないで」と、スタンディングなどでアピール。Jヴィレッジ周辺で、「福島はオリンピックどごでねぇ」「世界も福島も日本もオリンピックどごでねぇ」などと英語やフランス語、韓国語など計8カ国語で書かれた横断幕やプラカードが掲げられました。
以下に、アピール文を紹介します。
「2021年も福島はオリンピックどごでねぇ」
昨年も私たちはこの場所で「福島はオリンピックどごでねぇ」と、声を上げました。
また今年、このようなアクションをしなければならないことを本当に残念に思います。
どうして反省ができず、教訓を生かすことができない国なのでしょうか。
今も、新型コロナは収束せず、再度感染拡大の兆しも見えています。
コロナにより打撃を受けたお店や会社も多々あり、職を失い経済的に追い詰められた人々がホームレスとなったり、自殺をする方もいます。
アルバイトで学業を続ける学生たちも日々の食事を切り詰め、生理用品も買えない状況が報じられています。
福島県は昨年中止になった聖火リレーの事業に2億5000万円を支払い、今年も同程度の予算が組まれています。
今、お金を使うべきところはどこなのでしょうか。誰に対してなのでしょうか。
森喜朗元会長の恥ずべき発言もあり、多くの人が聖火リレーやボランティアを辞退し、今オリンピックを開くべきではないとの意見の方が国民には多いのです。
福島も、日本も、世界中がオリンピックどころではないはずなのに、3月25日には、聖火リレーが福島のこのJヴィレッジからスタートする予定です。
Jヴィレッジはかつて、福島第一原発7・8号機の増設を福島県に認めてもらうために東電が寄付したと言われています。
事故後に収束作業の拠点として東電に貸し出され、十分な除染をしないまま県に返却され、放射性廃棄物を密かに敷地内に保管していながら聖火リレーを行おうとしていました。
なにより、原発事故はまだ収束していません。先月の3.11の余震の影響で、原子炉格納容器の水位が下がるなど、まだ事故は続いています。
「アンダーコントロール」という安倍前首相の嘘から始まり、復興五輪という嘘を塗り重ね、新型コロナ克服のおまけまでつけられた茶番に、私たちは再び声を上げます。
「福島はオリンピックどごでねえ!」
2021年3月17日
原発事故被害者団体連絡会
脱原発福島ネットワーク