事故炉の安全対策と中長期ロードマップ見直し要請、東電交渉

　4月7日午後、脱原発福島ネットワークなど県内10市民団体による東電交渉（再開第59回）が開かれました。

　冒頭、「福島第一原発事故炉の安全対策と中長期ロードマップの見直しを求める要請書」（下記参照）を読み上げて提出。

　要請内容は、以下の４項目です。

　１、2月13日の福島県沖地震による事故炉の原子炉格納容器の損傷を点検し、原子炉格納容器の水位及び圧力低下への対策及び地震に対する事故炉の安全対策を明らかにすること。

　２、3号機の故障地震計を放置した責任の所在と管理体制の是正策を明らかにすること。

　３、２・３号機の原子炉格納容器上蓋のシールドプラグ及び1・2号機排気筒基部の高濃度汚染等への対応策を明らかにすること。

　４、被曝低減の最大化を前提に、廃止措置等の中長期ロードマップの見直しを図ること。

　その後、これまで質問事項への再回答と質疑が行われました。やりとりの概要は以下の通りです。

⑴　これまで質問事項への再回答と質疑

　①　米と黒毛和牛の未回復と賠償

ー市民：賠償の案件は寄せられているのか？

ー東電：現在も風評被害により損害が発生している方には、ご請求をいただいて適切に賠償させていただいている。具体的な品名や件数の回答は差し控えさせていただく。請求は個別内容で個人特定につながるので。

ー市民：東電の事業としてやっている事案はあるのか？

ー東電：社員有志での共同購入や社員食堂での利用、社内マルシェなどで福島県産品の購入を実施。2018年1月31日、これまで以上に取り組むべく風評被害に対する行動計画を策定。その実行組織として、ふくしま流通促進室を設置。以降、首都圏を中心にスーパー等での販促会や飲食店でのフェアなどを継続。昨年から地元スーパーでも販売会を開催。至近では。2021年3月7日の魚食の日にも協力。

　③　汚染水の貯蔵管理及び処理費用

ー市民：10年間の実績、令和2年度の汚染水対策プログラムは約506億円の内訳はどうか。

ー東電：汚染水対策プログラム別での予算管理は、2018年の廃炉等積立金の実施以降。2018年668億円、2019年408億円、2020年506億円。汚染水対策プログラム費用の内訳の回答は、個別契約に関わり回答を差し控える。

　⑤Jヴレッジの原状回復工事

ー市民：指定廃棄物の残土を福島県は了承したのか。福島県の了解はどうなっているか？

ー東電：Jヴレッジの返還にあたり、環境省、福島県電源地域振興財団と協議の上、事故収束の拠点として利用したエリア（ピッチ・スタジアム・町営駐車場）について、除染と同等以上の原状回復工事を実施。8,000ベクレル/kg超の廃棄物の保管については、福島県電源地域振興財団と情報を共有していた。50,000ベクレル/kg超の町営駐車場等のものは、土囊袋等で第２原発構内で保管している。

ー市民：福島県は了承したのか。

ー東電：情報を共有していた。

ー市民：町営駐車場脇の高濃度汚染土を放置したまま、昨年オリンピックに対応したのか？

ー東電：Jヴレッジの返還にあたり、東電利用エリアの外だったので工事してなかった。気付く余地があったので反省している。

ー市民：廃棄物は、楢葉町波倉の土地においたのではないか？工事関係者は？

ー東電：次回、回答。

⑵　「トリチウム等タンク貯蔵汚染水の海洋放出に反対し陸上保管を求める要請書」（20年7月8日提出）に対する東電回答への質疑

１、福島第一原発事故のトリチウム等タンク貯蔵汚染水の海洋放出等は実施しないこと。

①「国からの方針を踏まえて丁寧なプロセスを踏みながら適切に対応していく」というが、丁寧なプロセス、適切な対応とは具体的に何か？

ー東電：白濁は調査中。次回、回答する。

ー市民：2次処理止めたほうがいいのではないか。スラリーが出る、状況はどうなるのか。2次処理性能試験の結果の説明を。

ー東電：2次処理性能確認試験の結果は、昨年12月の中長期ロードマップの進捗状況で報告。2020年9月15日、J1C群、J1G群各々約1,000立方メートル処理。トリチウムを除く、告示濃度総和が１未満を確認。62核種プラス炭素14の総和。本試験では、社内試験・分析でトリチウムを除く、告示濃度総和が１未満を確認。今後、第三者機関で課題抽出する。

②炭素14について、規制庁の指摘、（特定原子力施設監視・評価検討会）第72回と第79回議事録と不整合では？

ー市民：ALPS、セシウム吸着設備、淡水化装置、等の設備を示して欲しい。

ー東電：別紙、資料で説明。

ー市民：HICの中の脱水化装置の現状は？

ー東電：「スラリー安定化処理の設計に向けて」を説明。HIC収納、ポリ容器をステンレスで補強。スラリーを入れると表面線量14msv。スラリー脱水処理設備の基本方針、実施計画変更許可申請中。

ー市民：炭素14も取りきれないというべきだ。放出推定値の総量はいくらか。

ー東電：炭素14の全量の数値は、現在データがない。濃度は、満水タンクで順次測定。ポータルサイトで公開。

２、トリチウム等タンク貯蔵汚染水の処分について、市民説明会を実施すること。

①フランジタンク解体後のタンク敷地の利用はどのくらい可能か？

ー市民：C区域、G5 、H9の３区域は？敷地利用計画は？

ー東電：第一原発の廃炉汚染水対策を着実に進めるためには、今後敷地内で必要とされる施設を計画的に建設していく必要がある。従って、敷地の制約があることから、敷地を有効活用する。デブリ保管施設など廃炉に必要。敷地全体の活用計画を検討しているところ、具体的な計画が立った段階で必要に応じて説明する。

＊文書「2020.11.16 組織再編後の組織状況、放射線管理の課題」の説明

ー東電：次回

（３）その他

ー市民：排気筒基部の高濃度汚染は？

ー東電：1・2号機は、2〜4000msv.。3・4号機は、2〜3000msv.。

ー市民：排気筒、どうして設計と違う構造か？

ー東電：設計変更の経緯は不明。水素爆発の水素流入の経緯は調査中。

ー市民：昨年度の作業員の被曝線量、社員の被曝問題は？

ー東電：HPに公表している。

福島第一原発事故炉の安全対策と中長期ロードマップの見直しを求める要請書

東京電力ホールデングス（株）代表執行役社長　小早川　智明　様　　　

2021年4月7日

　東京電力福島第一原発事故は、未だ、政府の原子力緊急事態宣言が解除されず、住民避難が続いています。

　2月13日23時7分発生の福島県沖地震（Ｍ7.3、最大震度６強）の東京電力福島第一原子力発電所への影響について、19日以降、貴社は1・3号機の原子炉格納容器水位が低下傾向にあると公表。1号機は遅くとも15日から、3号機は遅くとも17日から格納容器底部の水位が低下したとされ、10年前の事故による損傷箇所である、1号炉の真空破壊弁ベローズとサンドクッションドレン配管からの漏洩、3号炉の主蒸気配管伸縮継手からの漏洩が損傷拡大により広がり、原子炉への注水量を増やしました。しかし、その後も水位低下が続くところから、新たな損傷箇所が発生している可能性もあります。原子炉建屋内部の損傷やコンクリート等の劣化の進行と地震による倒壊を防止する安全対策が急務です。

　21日には、1号機で、原子炉格納容器の圧力低下が判明。これも10年前の事故による損傷部分が水位低下で露出して気体が漏出し圧力低下した可能性があるとされています。

　22日には、3号機に去年設置した地震計2台を故障したまま放置したため地震データが記録できなかったことも発覚。貴社の安全管理の酷い実態がまたも明らかになりました。25日までに、汚染水タンク53基の位置ズレも報告されています。

　貴社においては、柏崎刈羽原発での中央制御室へのID不正入室事件や福島第二原発でのID紛失事件など核防護管理上、重大な逸脱が頻発しており、事態を放置してきた経営責任と管理体制が厳しく問われています。原子力事業者として著しく適格性に欠けています。

　また、原子力規制委員会の事故分析検討会中間とりまとめにおける、２・３号機の原子炉格納容器上蓋のシールドプラグや1・2号機排気筒基部の高濃度汚染などの現状から、被曝低減を前提に、事故収束作業と廃炉工程の大幅見直しが必要です。　

　30〜40年で廃炉という貴社の中長期ロードマップの杜撰さは明らかであり、廃炉完了とはどういう状態なのか、廃炉のあり方を、今こそ根本的に議論をする時です。

　この際、わたしたちは、下記の通り要請し、速やかな回答を求めます。

記

１、2月13日の福島県沖地震による事故炉の原子炉格納容器の損傷を点検し、原子炉格納容器の水位及び圧力低下への対策及び地震に対する事故炉の安全対策を明らかにすること。

２、3号機の故障地震計を放置した責任の所在と管理体制の是正策を明らかにすること。

３、２・３号機の原子炉格納容器上蓋のシールドプラグ及び1・2号機排気筒基部の高濃度汚染等への対応策を明らかにすること。

４、被曝低減の最大化を前提に、廃止措置等の中長期ロードマップの見直しを図ること。

命を守る三春の会　　風下の会福島　　　脱原発の日実行委員会福島　　脱原発福島ネットワーク

脱原発緑ネット　ハイロアクション福島　　福島原発３０キロひとの会　　双葉地方原発反対同盟　

フクシマ原発労働者相談センター　　ふくしまＷＡＷＡＷＡ―環・話・和―の会