東京電力福島第一原発事故によるトリチウム等汚染水の海洋放出処分を決定した菅内閣は、福島県内はもとより全国で放出反対の声が広がる中で、13日から14日かけて、福島県や自治体、県魚連などを訪問して決定を伝えました。
いわき市内では、福島県漁連や双葉町長のほか、13日夕、江島経済産業副大臣・原子力災害現地対策本部長がいわき市長に、14日午前、由良内閣府審議官・原子力災害現地対策副本部長がいわき市議会正副議長に面会しています。
これは、東京電力ホールディングス(株)福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の取扱いに関する意見交換を行うためとして、「多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」のポイントをそれぞれに対し説明したものです。
説明を受けて、清水市長は、「本市の再三の要望にもかかわらず、関係者や国民の理解が得られたとは言えない状況の中、海洋放出を決定したことは誠に遺憾であり、現時点で承服できるものではありません」と反対の姿勢を明らかにしました。大峯議長も「我々、意見書を提出させていただきましたが、その後、説明等もあまりなく、ここに来て国民の理解が得られない中での海洋放出決定ということで、これは我々としても大変遺憾であり、これは納得できるものではありません」と応え、「我々としても市民に対する説明責任がありますので、今後、全員協議会を開催した中で、その説明をお願いしたい」と要請しました。(下記に要旨掲載)
●多核種除去設備等処理水の海洋放出方針決定を受けた市長コメント
多核種除去設備等処理水が環境へ放出される場合には風評被害が避けられず、本市の産業、とりわけ、今月から通常操業に移行した本県の漁業への打撃は計り知れないことから、本市は再三にわたり、科学的な根拠を示し、関係者や国民の理解を得た上で、具体的な風評対策を示し、方針を決定するよう求めて参りました 。
こうした本市の再三の要望にもかかわらず、関係者や国民の理解が得られたとは言えない状況の中、海洋放出を決定したことは誠に遺憾であり、現時点で承服できるものではありません。
海洋放出が科学的に 安全であることは大前提でありますが、その大前提が国内外に広く理解されなければ、いわき市民や市内事業者が風評被害の犠牲になることは明らかでありますことから、政府が責任をもって 、国民や関係者に対して丁寧に説明し、理解を得て、復興の妨げとなることが無いよう、全力を尽くしていただきたいと考えております。
令和3年4月13日
いわき市長 清水 敏男
●由良審議官来局時の議長コメント
我々議会といたしましても、昨年6月に意見書「多核種除去設備等処理水の処分決定に関する意見書」を提出させていただきました。その中で、政府においては、多核種除去設備等処理水を慎重に取り扱い、管理、収束に向けた努力を尽くすべきでありということで、各産業関係者や県民からの丁寧な意見聴取を行うこと、また、新たな風評を生じさせないよう、広く国民に向け、多核種除去設備等処理水の安全に関わる情報発信を行った上で、風評対策の拡充・強化を併せて示すことということで、それまでは多核種除去設備等処理水の陸上保管を継続することで、我々意見書を提出させていただきましたが、その後、説明等もあまりなく、ここに来て国民の理解が得られない中での海洋放出決定ということで、これは我々としても大変遺憾であり、これは納得できるものではありません。
また、原発事故から10年経った今でもまだ風評は払拭されていないと思います。こういう状況の中での海洋放出決定ですので、特に漁業者、今月から本格操業が始まるという中での決定ということで、大変衝撃を受けているものと思われます。
今後とも、風評被害対策をしっかりと取っていただき、各産業に対する風評被害対策を取っていただければと思います。
特に、こういった風評が長く続くとなると、いくら対策しても、後継者の問題がという関係者からの声も聞かれております。
そういった問題があると、本市の将来に向けての漁業というのがどういう風に鳴るのかなというのが、我々としても大変心配しておりますので、そういった部分にしっかりと取り組んでいただければと思います。
また、我々としても市民に対する説明責任がありますので、今後、全員協議会を開催した中で、その説明をお願いしたいと思います。
海洋放出という大きな問題なので、国としてもしっかり取り組んでいくということですが、地元の声をしっかりよく聞いて、科学的根拠を示した中で、しっかり説明していただきたいと思います。