いわき市議会は、5月21日に開催した、令和3年5月臨時会で「トリチウム等を含む処理水の処分方法について再検討を求める意見書」(下記に掲載)を全会一致で可決しました。
これは、政府が4月13日、廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議において、東京電力福島第一原発事故によるトリチウム等タンク貯蔵汚染水の海洋放出処分を決定したことに対するもので、意見書では、「処分方法については、漁業関係者など関係する全ての方の理解を受けた上で、改めて決定すること」「当面、陸上保管を継続し、諸課題の解決に取り組むこと」などを、内閣総理大臣はじめ政府関係閣僚に求めています。
いわき市議会は、昨年6月、市民からの請願を採択するとともに、「多核種除去設備等処理水の処分決定に関する意見書」を政府関係閣僚に提出。その中で、「各産業関係者や県民からの丁寧な意見聴取を行うこと、また、新たな風評を生じさせないよう、広く国民に向け、多核種除去設備等処理水の安全に関わる情報発信を行った上で、風評対策の拡充・強化を併せて示すこと、関係者及び国民の理解と合意を広げること、それまでは多核種除去設備等処理水の陸上保管を継続すること」を求めてきました。
また、4月14日、由良内閣府審議官・原子力災害現地対策副本部長がいわき市議会正副議長に決定の説明に訪れた際には、議長から「我々、意見書を提出させていただきましたが、その後、説明等もあまりなく、ここに来て国民の理解が得られない中での海洋放出決定ということで、これは我々としても大変遺憾であり、これは納得できるものではありません」「我々としても市民に対する説明責任がありますので、今後、全員協議会を開催した中で、その説明をお願いしたい」と要請しています。
5月臨時会では、急施案件として、「トリチウム等を含む処理水の処分方法について再検討を求める意見書」が、議会運営委員会を経て提出され、全会一致で可決されました。今後、いわき市議会として、海洋放出処分決定に関する説明を政府から議会全員協議会で受けるとともに、「処分方法については、漁業関係者など関係する全ての方の理解を受けた上で、改めて決定すること」「当面、陸上保管を継続し、諸課題の解決に取り組むこと」などを、引き続き政府に強く要望していくことになります。
トリチウム等を含む処理水の処分方法について再検討を求める意見書
政府は、本年4月13日に開催した廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議において、東京電力福島第一原子力発電所の構内に保管されている放射性物質トリチウム等を含む処理水について、海洋放出とする方針を正式決定した。これまで県内外の漁業者をはじめ、多くの福島県民から、海洋放出への反対や慎重な対応を求める声が寄せられており、いわき市議会においても漁業関係者をはじめとした関係者等との意見交換を十分に行う中で、慎重な対応方針の検討を強く求めてきたところである。
2015年、政府及び東京電力が福島県漁業協同組合連合会に対し、文書で「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と約束しているにもかかわらず、相互の理解がなされていない現状において、処分方針が決定されることは極めて遺憾である。
また、本県の沿岸漁業が本年3月でようやく試験操業を終え、数年後の本格操業への移行に向けた準備を始めようとした矢先に政府が海洋放出の正式決定を行ったことは、漁業関係者の10年に及ぶ努力と、ようやく芽生え始めた希望に冷や水を浴びせかける、最悪のタイミングと言わざるを得ない。本県及び本市の復興に対する政府の姿勢に大きな疑念を抱かせ、信頼関係のさらなる悪化を招くものである。
原子力政策及び東京電力福島第一原子力発電所事故からの復興は、国及び東京電力の責任でなすべきものである。そのためには、強い信頼関係の構築に向け、福島県民と丁寧な対話を行い、国民的な理解を得るため、政府及び東京電力が説明責任を果たしていくことが求められている。
処理水の処分を進めるにあたり、本市、本県の復興の円滑な進捗を阻害する問題の発生や新たな風評を助長するようなことがあってはならない。
よって、政府においては、次の事項について対策を講ずるよう強く要望する。
1 処理水の処分方法については、漁業関係者など関係する全ての方の理解を受けた上で、改めて決定すること。
2 処理水は当面、陸上保管を継続し、諸課題の解決に取り組むこと。
3 政府及び東京電力は、福島県民との信頼回復を図るため、関係者とこれまで以上にリスクコミュニケーションを徹底し、関係修復を図るための最大限の努力をすること。
以上、地方自治法第99条の規定に基づき、意見書を提出する。
令和3年5月21日
内閣総理大臣 菅 義 偉 様
農林水産大臣 野 上 浩太郎 様
経済産業大臣 梶 山 弘 志 様
環境 大臣 小 泉 進次郎 様
復興 大臣 平 沢 勝 栄 様
原子力規制委員会委員長 更 田 豊 志 様
いわき市議会議長 大 峯 英 之