6月14日、福島原発事故被害者団体連絡会(ひだんれん)は、「福島県県民健康調査」について、甲状腺検査の継続と学校での検査の継続を求め、福島県県民健康調査課の菅野達也課長に「福島県県民健康調査甲状腺検査の継続と学校での検査の継続を求める要請書」の提出しました。(下記に掲載)
また、県民健康調査課との話し合いの概要は、以下の通りです。
ひだんれんは、今後も県民健康調査検討委員会や評価部会に動きがあった場合、申し入れを行うとしてます。
Q :県としては甲状腺検査についてどう考えているのか。
県:第5回目甲状腺検査を去年から行っている。コロナの影響のため、今年、来年と3年かけて行う。甲状腺検査の第5回目は、検討委員会の中で中止や止めるという声は出ていない。県としては基本的に希望者には同意書に基づいて検査を継続する。
Q :今までも強制ではなく希望者に行っていたはずです。(検討委員会の一部の委員が学校検査の強制性を言いつのることが多かった) 甲状腺検査対象者と保護者への聞き取りについて。
県:検討委員会での参考にするため、学校でどうなっているのか生の声を聞いた。聞き取りの人数は浜通り、中通り、会津の高校生に一人ずつ3人、保護者は、浜通り、中通り、会津の中学生、高校生の親(両親ではなくどちらか一人、父親が多い)それぞれ一人ずつ6人のみ。
Q :選定の基準は?
県:教育関係団体からの推薦。
Q :教育関係団体の名前は?
県:団体の名前は公表しない。
Q :聞き取り対象が少なすぎるのでは。
県:時間がかかることから少人数にした。代表での聞き取りではなく、単なる参考である。
Q :学校検査について
県:これまでは医大から送られた同意書を提出していない児童生徒に、提出を促すことや当日の同意書回収を学校の教職員がやっていたが、今年の4月からは、医大が1か月ほど前に同意書を本人に送付し、その後提出していない児童生徒には、医大から直接再度通知して同意書の提出を促す。当日も検査担当者が同意書の回収をする。学校の行事ではないので、教職員の手を煩わせないために、事務的な部分を変更した。
Q :高校卒業後の検査について
県:卒業者には個別に通知が行くが、検査を受ける人は減るため、受けられる機関を増やすなどの工夫が必要だが、まだ具体化はしていない。
Q :星座長が内堀知事に報告したとの報道があったが、何を報告したのか。県民健康調査課も同席したのか。
県:県民健康調査課も同席した。5年前に中間とりまとめを知事に報告したが、10年目ということで途上ではあるが現在の状況を報告した。
Q :学生や保護者の生の声を聞いて星座長はどのように受け止めて知事に伝えたのか。
県:甲状腺検査の聞き取りについては、受けて良かったという印象を持ったと伝えた。
Q :甲状腺検査の実施主体は県にある。県民健康調査によって甲状腺がんの手術を受けた当事者の声を聞くなど、県民の声を検討委員会に反映してほしい。検討委員向けの要請書を送りたいが、県から届けてくれるのかどうか。
県:検討委員向けの宛名を書いたものを課に送れば委員には届ける。
福島県県民健康調査甲状腺検査の継続と学校での検査の継続を求める要請書
2021 年 6 月 14 日
県民健康調査課 課長 菅野達也 様
原発事故被害者団体連絡会
共同代表 長谷川健一・武藤類子
日頃のお働きに感謝いたします。
県民健康調査甲状腺検査の2020年6月末現在での集計では、甲状腺がんとその疑いは256 人、手術を受けた人は214 人、そのうち 213 人が甲状腺がんと診断されています。
福島県の県民健康調査は「東京電力福島第一発電所の事故による放射性物質の拡散や避難等を踏まえ、県民の被ばく線量の評価を行うとともに、県民の健康状態を把握し、疾病の予防、早期発見、早期治療につなげ、将来にわたる県民の健康の維持、増進を図る。」という目的で行われています。中でも事故当時0歳から18歳までの約38万人を対象とした甲状腺検査は「原発事故後の子どもたちの甲状腺の状態を把握し、健康を長期に見守る」ことを目的としています。
検討委員会の中で、学校での検査の強制性、学校現場への負担などの理由で学校での検査について見なおすべきという意見が出ています。学校現場での聞き取り調査や、甲状腺検査対象当事者や保護者からの意見聴取などの実態の調査などを行っておられるようですが、第41回の検討委員会での報告では、保護者からは学校検査の継続を望む声が多いと読み取れました。また、2021年5月31日に甲状腺がん子ども基金が行った記者会見にて、甲状腺がん罹患当事者の方が「(県民健康調査で)がんを見つけて頂いて助かった、救われた。検査がなかったら今の自分はない」「(縮小に関しては)ふざけんな、10年で何が分かる?という気持ち」と意見を述べています。また基金が行った当事者へのアンケート調査においても、90%の方が学校での検査の継続を希望するという結果が出ています。
更に、「いわき市民放射能測定所たらちね」が、福島県の保護者約323人に対して行ったアンケート調査においては、約80%が学校での検査の継続を希望しています。
甲状腺がん罹患当事者や県民健康調査対象の子どもたちの保護者の意見は、学校検診を継続してほしいという意見が多数と考えられます。そもそも学校での検査を導入したのは、仕事を休んで検査に連れて行く保護者の負担を軽減し、検査の機会を等しく確保するためとして、県民健康調査課からの学校への依頼から始まっているものです。
また、「過剰診断」との理由で、甲状腺検査そのものを縮小することを主張する委員もおられますが、この件に関しても前述した甲状腺がん子ども基金の記者会見で、アンケートに寄せられた意見に「悪化につながる患者が多数存在しているのに、その表現は不適切。」「甲状腺がん患者に対する軽視発言」「手術を受けると選択したことが間違いだったのかもしれない、という心理的負担を強く感じる」などがあると発表しました。また「いわき市民放射能測定所たらちね」のアンケートでは、いつまで甲状腺検査を続けたらよいかの問いに対して、「生涯に渡って続けるシステムを作ってほしい」と答えた人が最多の 58%、「30年続ける」が14 パーセント、「20 年続ける」が16%でした。この結果からも県民は甲状腺検査の継続を望んでいると言えます。
県民健康調査課に於かれましては、この調査の目的を遂行するために県の主導のもとに、福島県民の声を聞き、県民のために甲状腺検査を続けて頂きたくお願い申し上げます。
要 請 事 項
1、 県民健康調査甲状腺検査の学校での検査を継続すること
2、 県民健康調査甲状腺検査の節目検査がもっと利用されやすいように工夫をすること。
3、 県民健康調査甲状腺検査を県民が希望する間は継続をすること。