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政府交渉、海洋放出撤回と陸上保管継続を要請

 7月15日午後、衆議院第2議員会館第1会議室において、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」に対する政府交渉が、リアル参加とオンライン参加で全国をつなぎ行われました。主催は、福島原発震災情報連絡センターです。
 政府からは、経済産業省、文部科学省、外務省、原子力規制庁、農林水産省、内閣府、復興庁が出席しました
 福島原発震災情報連絡センターは、2011年結成以来、原発立地自治体を始め全国29都道府県の自治体議員により、原発震災で放射能汚染と被曝を強制される人々の生存権を守るため、被災者に寄り添い、いのちと健康を守るための諸活動を続けてきました。
 4月13日、政府は、東京電力福島第一原発事故によるトリチウム等タンク貯蔵汚染水の処分方法について、廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議において海洋放出方針を決定しました。これに対し、「多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」に対する事前質問を政府に提出し回答を得て、政府交渉を実施したものです。
 交渉に先立ち、佐藤和良共同代表の挨拶、山崎誠衆議院議員、金子恵美衆議院議員、石垣のり子参議院議員からの挨拶に続いて、「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」に対する要請書(下記に掲載)を中村まさこ江東区議が読み上げて、提出しました。
 交渉は、6月7日付けで提出した「『基本方針』に対する質問書」24項目への回答(下記に掲載)について、基本方針の繰り返しや既存制度・施策の説明が多く、それらの制度や方針の本質、施策の問題点を問う質問に具体的に回答されてないことから、あらためて、5つの大項目ごとに質疑応答を1時間半にわたり行われました。
 交渉を通じて、海洋放出に反対する被災者と自治体議会・議員の声を政府に届け、政府基本方針の「復興と廃炉の両立」というお題目の空虚さと欺瞞性、廃炉の最終形態の曖昧さと一方的な汚染水海洋放出の矛盾、関係者の「理解と同意」と国民への「説明・公聴会の開催」など問題点と課題が浮き彫りになりました。
 今後、提出した要請書への回答を受けての活動、さらに海洋放出撤回、再検討の声を広げ強める活動を進めることになります。


●「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」に対する要請書 

2021年7月15日

内閣総理大臣 菅 義偉 殿 
経済産業大臣 梶山弘志 殿 
復興大臣   平沢勝栄 殿  
外務大臣   茂木敏充 殿  
農林水産大臣 野上浩太郎 殿
環境大臣   小泉進次郎 殿 
原子力規制委員会 更田豊志 殿 

                
福島原発震災情報連絡センター 
共同代表 佐藤和良(いわき市議会議員)中山 均(新潟市議会議員)松谷 清(静岡市議会議員)

 東京電力福島第一原発事故から10年4ヶ月、政府が発出した原子力緊急事態宣言は未だ解除されていません。30〜40年で廃炉という政府と東京電力の「1~4号機の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」は、実現の技術的裏付けがない燃料デブリ取り出しの困難性がより鮮明になり、デブリ取り出しの終期も原子炉解体終了も法的拘束力も曖昧な状態が続き、放射性廃棄物処理も含め福島第一原発廃止措置の完了形態とは何か、その定義が求められる現状です。
 この状況で、政府は、「復興と廃炉の両立」の名の下、「廃炉を計画的に進める必要」「デブリ取り出し等に大きなスペースが必要」として、トリチウム等タンク貯蔵汚染水(以下、「汚染水」)の処分方法について、4月13日、廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議を開き、海洋放出方針を決定しました。
 このことは、政府が2015年に福島県漁連や全漁連に対して『関係者の理解なしには如何なる処分も行わない』という文書での約束を反故にする極めて不誠実な決定であることから、福島県漁連や全漁連はもとより、福島県内農林水産業・消費者4協同組合組織はじめ、福島県内22自治体議会も改めて、海洋放出方針の撤回・再検討を求める政府への意見書を採択するなど、海洋放出方針への反発が強まっています。
 決定後、政府は、ワーキンググループ設置によりその既成事実化を進めています。しかし、これは汚染水の処分だけを先に進め、廃炉を優先して復興を犠牲にし、二次被害を発生させることから、漁業者はじめ原発事故被災者にさらなる負担と苦悩を強いるもので到底認められません。
 私どもは、6月7日付けで「『東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針』に対する質問書」を提出したところですが、質問への回答については、基本方針の繰り返しや既存制度・施策の説明が多く、それらの制度や方針の本質、施策の問題点を問う質問に具体的にご回答頂けていないことから、あらためて、以下について強く要請し、8月15日まで誠意ある回答を求めるものです。 

                記
1、福島第一原発事故及び汚染水発生の原点に立ち返り、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする福島県漁業協同組合連合会等との文書約束の反故について、関係者に謝罪し、理解と合意なき海洋放出方針を撤回すること。
2、福島第一原発の廃止措置の完了形態を明確にするとともに、IAEAの指摘通り、汚染水の発生を止める地下水の止水を実現して、汚染水の陸上保管を継続すること。
3、廃炉を優先して復興を犠牲にしないために、現在の敷地利用計画を見直し、被災者や国民が求めるトリチウム分離技術の実用化を図ること。
4、福島県内はもとより全国各自治体で説明・公聴会を開催して、国民的議論、国民的理解と合意の形成を図ること。
                                               以上

●「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所における多核種除去設備等処理水の処分に関する基本方針」に対する質問と政府回答

2021.6.7 福島原発震災情報連絡センター

[1、復興と廃炉の両立に向けて]

1、 「⑴基本的な考え方」について、「着実な復興には廃炉を計画的進める必要。その一環としてALPS処理水の検討も必要」「デブリ取り出し等に大きなスペースが必要。地元からもタンクの存在が風評の一因」「早急に方針を決定する必要」としているが、汚染水処分の前提として、「東京電力ホールディングス(株) 福島第一原子力発電所の廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」における使用済み核燃料の取り出しが終了せず、燃料デブリの取り出しも不透明な現状では、デブリ取り出しの現実的可能性、廃炉の定義、現実的な廃炉方法の検討など課題を検証し、廃止措置計画の策定に向けた、中長期ロードマップの根本的な見直しに取り組むべきではないのか。
<答>
1.福島第一原発の廃炉は、「中長期ロードマップ」に基づき、一部の工程に遅れはあるものの、全体として、着実に進展していると考えている。
2.例えば、使用済み燃料について、3号機からの取り出しが2月末に完了し、2031年内までには全ての号機からの取り出しを完了できるよう、取組を継続しているところ。また、汚染水発生量について、2020年内に一日あたり150トンまで抑制するとの目標を達成し、ピーク時の4分の1にまで低減することができた。
3.また、中長期ロードマップは、日々得られる情報に基づいて、個々の工程を柔軟に調整する事を前提としており、新たな状況や知見を踏まえ、作業を柔軟に見直しながら、工程を進めて行くことが重要である。そのため、現時点では見直しが必要であるとは考えていない。
4.今後も予測の難しい困難な作業が発生することも想定されるが、国も前面に立ってしっかりと進めていく。

2、 「復興と廃炉の両立」を大前提に「早急に方針を決定する必要」について、ALPS小委員会の報告書では、トリチウム等タンク貯蔵汚染水の処分を廃止措置終了までに終えるとしているが、廃止措置計画は現在のところ存在しておらず、計画策定のためには燃料デブリなど核物質の処分場所を明記する必要があり、果たして廃止措置計画が策定できるのか、廃止措置計画も策定できず、廃止措置の終了形を描くことができない現状では、汚染水の処分を急いで決める必要はない。ALPS小委員会の報告書は「廃炉を進めるためにALPS処理水の処分を急ぐことによって、風評被害を拡大し、復興を停滞させることがあってはならない。したがって、必要な保管は行いながら、風評への影響に配慮し、廃止措置終了までの間に廃炉作業の一環としてALPS処理水の処分を行なっていくことが重要である」としているにもかかわらず、タンク貯蔵汚染水の処分だけを先に進め、政府自体が一方的に二次被害を発生させるのは、廃炉を優先して復興を犠牲にし、漁業者はじめ原発事故被災者にさらなる負担と苦悩を強いるものではないか。
<答>
1.福島の復興を進めるためには、福島第一原発の廃炉を着実に進めていくことが不可欠。2041~2051年の廃止措置終了に向け、一歩ずつ作業を進めている。
2.その中で、ALPS処理水の処分は、廃炉を成し遂げる上で避けては通れない課題。関係者のご理解をいただきながら、可能な限り着実に進めていくことが重要。
3.なお、ALPS処理水の処分に当たっては、処分により風評被害を受けうる方々の御意見に耳を傾け、産業やなりわいの復興に向けた歩みを決して止めないとの強い決意を持って、国が前面に立って、風評払拭に取り組んでいく。

3、 「ALPS処理水の検討」は、中長期ロードマップの検証と根本的見直しに基づいて、トリチウム等タンク貯蔵汚染水内の各放射性核種の減衰見通し、トリチウム分離技術の実用段階、陸上保管の諸方法の検討、敷地利用計画の抜本的見直しなどを実施した上で、改めて検討すべきではないか。
<答>
1.本年4月 13 日に決定したALPS処理水の処分に係る 基本方針は、6年以上に渡る専門家等による議論や実証事業などを通じて、御指摘のトリチウム分離技術や陸上での保管継続、敷地利用等についての検討を重ねた結果として、取りまとめたものです。

4、 「地元のタンクの存在が風評の一因等の指摘」について、海洋放出期間が約40年間にも及ぶことから、タンクの存在が短期間で解消しないことは明白で、そのことを地元に説明しないのは不誠実であり、東京電力が海洋放出用タンクの30基増設(3万m3分)を公表したことからも、タンク増設の敷地がなく2022年夏までにタンクは満杯との理由による海洋放出の根拠は失われているのではないか。
<答>
1.今後の廃炉作業を円滑に進めていくために敷地を最大限有効活用していく必要がある中て、長期にALPS処理水を保管し続けるためのタンクの増設余地は限定的です。
2.本年5月に東京電力が公表したタンクについては、長期的な保管を目的にしたものでなく、風評を最大限抑制するために、放出前のALPS処理水の放射線濃度の測定や放出設備の一部として、廃炉に影響を与えない範囲で整備するものと認識しています。

5、 「⑵決定に至る経緯」について、経産省トリチウム水タスクフォースの結論をベースにしたALPS小委員会の報告書は、陸上保管の諸方法については、「敷地内外のタンク増設は限定的」として、廃棄物貯蔵施設・減容施設・デブリ保管庫の予定地、新旧土捨場やフランジタンク解体跡地など、当面活用可能な敷地を含めた敷地利用計画の抜本的見直しをしないまま「現実的選択肢ではない」と切り捨て、コンクリートやモルタル固化の技術的検討と評価など、必要十分な検討のないまま、ALPS小委員会の報告書に一方的に依拠した決定の経緯には問題があるのではないか。
<答>
1.ALPS処理水を福島第一原子力発電所の敷地内外で保管継続する案については、ALPS小委員会において、海洋放出やコンクリート固化といった案については、トリチウム水タスクフォースやALPS小委員会において、専門家等により検討を行っています。
2.今回の基本方針は、こうした様々な選択肢についての検討を踏まえて決定したものです。

6、「700回に及ぶ意見聴取・4000件を超えるパブコメ」について、「幅広い方々の意見を踏まえ基本方針を決定」というが、福島県漁連や全漁連など全国漁民の反対の声を切り捨て、福島県内の第一次産業はもとより関連産業、県内自治体議会の7割の反対及び慎重の政府への意見書提出など、福島県民をはじめとする国民的な反対・慎重の声を無視した暴挙であり、政府に寄せられた意見等に対する具体的な回答を行い理解と同意を得ることを蔑ろにした「スケジュールありき」の決定強行ではないのか。
<答>
1.本年4月 13 日に決定したALPS処理水の処分に係る基本方針は、6年以上に渡る専門家等による議論や広く御意見を伺うことなど時間をかけて、議論を進めてきたと考えています。
2.海洋放出に対する御懸念や御不安を持たれる方がおられることは承知しており、引き続き、政府一丸となって、科学的根拠に基づく情報をお伝えするなど、理解いただくよう取り組んでいきます。

7.現在までの意見聴取は、依然として一部関係者のみにとどまっており、「ご意見を伺う場」でも自治体関係や漁業関係者から、全国での説明公聴会や全漁業者から意見を聞いて欲しいとの声が上がっていた通り、全国の関係者から幅広く意見を伺う公聴会を全国で実施すべきではないか。
<答>
1.本年4月 13 日に基本方針を決定して以降、基本方針への理解を深めていただくべく、漁業者の方々をはじめとした様々な方々への説明会を実施しています。
2.また、今後の追加的な対策を検討するため、新たに設置した関係閣僚会議の下にワーキンググループを設置し、福島県やその隣県の自治体や漁業者の方々をはじめとした関係者との意見交換を実施しているところです。引き続き、できるだけ多くの皆様に御理解いただけるよう取り組んで参ります。

[2、ALPS処理水の処分について]

8、「⑴処分方法」について、「風評被害を最大限抑制する対応を徹底することを前提」に「海洋放出を選択する」とするが、前提の「風評被害を最大限抑制する対応」施策が具体的に示されておらず、前提自体が成立していないのではないか。
<答>
1.風評影響を最大限抑制するための取組については、本年4月13 日に決定した基本方針本文や決定時の参考資料として位置づけられている「ALPS処理水の処分に関する基本方針実現のために当面取り組むべき措置」に内容を掲載しているところです。
2.更なる対策の充実を図るため、現在、ワーキンググループを実施しており、こうした場での意見を踏まえ、今後、取りまとめを実施していきたいと考えています。

9、IAEAによるALPS小委員会の報告書にかかるレビュー報告書が、「科学的根拠に基づく」「国際慣行に添う」評価の根拠としているが、IAEAレビュー報告書自体の信頼性は何によって担保されているのか。第三者委員会等による検証が必要ではないか。
<答>
1. ご指摘のIAEAレビュー報告書は、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)、経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)及びIAEA等により出版された技術文書を踏まえ、廃棄物管理及び放射線環境防護等の専門家により構成される調査団(Review Team)が取りまとめたものです。
2. なお、当該レビューの目的は、福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の管理状況や、ALPS小委員会のレビュー行程の確認を通じて、ALPS小委員会報告書の結論について独立したレビューを実施するものであり、それ自体が第三者委員会としての性質を有するものと考えています。

10、「⑵海洋放出にあたっての対応の方向性について」で、「原子炉等規制法に基づく規制基準を厳格に厳守」とし「これにより、周辺地域の公衆や環境、農林水産品等について、安全が確保される」とするが、この規制基準はICRP1990年勧告に基づいており、同勧告には環境防護は含まれていないことから、自動的に安全が確保されないのではないか。
<答>
「この規制基準は ICRP1990 年勧告に基づいており、同勧告には環境防護は含まれていない」との御質問について、原子炉等規制法に基づく線量告示など我が国ではICRP1990年勧告に基づきますが、最新のICRPの主勧告である ICRP2007年勧告においてもICRP1990勧告と同様に「一般公衆を防護するために必要な環境管理の基準は他の生物種が危険にさらされないことを保証すると
考えられており、委員会はそうであろうと引き続き考える」と、また「環境防護に関して何らかのかたちの“線量限度”を設定することは提案しない」とされており、ICRPにおいてその考え方は現在でも変更されていないものと承知しています。

11、「国民・国際社会の理解醸成に向けた取り組みに万全を期す必要」とするが、国民の理解醸成について、5月31日、政府のワーキンググループでJA福島中央会会長は「国・東京電力が県民・国民と十分に対話せず、問題への理解が深まらない中で一方的に決定したのが根本にあり、信頼関係は喪失している」と指摘したが、理解醸成にあたりこの指摘を認めた上で、どう信頼関係を回復するか。
<答>
1.基本方針決定後も、実際の放出が始まるまでには、設備の工事や規制への対応に2年程度の時間が必要となることが見込まれています。
2.こうした期間を最大限活用し、御懸念や御不安を払拭し理解を深めていただくべく、徹底的な広報活動や風評対策を講じていきます。

12、 「⑶国際社会との関係について」で、「情報提供を積極的に実施してきており」とするが、韓国原子力学会が日本政府に対して「福島汚染処理水の放出により周辺国の国民が受けることになる心理的な苦痛と物理的な被害に対し深く謝罪し、周辺国を気配りする姿勢を持たなければならない」と声明を公表したとの報道からは、近隣諸国との関係悪化が生じているのではないか。
<答>
御指摘のような報道があることは承知していますが、個別の報道のひとつひとつにコメントをすることは控えさせていただきます。いずれにせよ、日本政府は、東京電力福島第一原子力発電所の状況やALPS処理水の処分の検討状況について、韓国を含む国際社会に対し、科学的根拠に基づき透明性をもって丁寧に説明し、関連の情報も提供してきております。
例えば、韓国を含む在京外交団,韓国の報道機関を対象にした説明会の開催を始め、様々な機会を通じて説明を行うとともに、韓国政府にはデータの提供や意見交換を行うなど、頻繁に意思疎通を図ってきました。引き続き、こうした取組を積み重ね、近隣諸国を含め国際的な理解を醸成していきます。

[3、ALPS処理水の海洋放出の具体的な方法]

13、 「⑴基本的な方針」について、海洋放出に当たって、国際放射線防護委員会が1977年勧告で示した放射線防護の基本的考え方を示す概念、ALARAの原則に基づき、浄化処理や希釈によりリスク低減するというが、「すべての被ばくは社会的、経済的要因を考慮に入れながら合理的に達成可能な限り低く抑えるべきである」というALARAの基本精神から極力放射線被ばくを受けない事を合理的に達成するには、トリチウム等放出する放射性物質の総量を規制すべきではないか。
<答>
「トリチウム等放出する放射性物質の総量を規制すべきではないか。」との御指摘について、原子炉等規制法に基づく線量告示においては、排水中に含まれる放射性物質毎の濃度限度を、排水口から排出される水を毎日飲み続けたと仮定して、関係規則に定めのある周辺監視区域における実効線量が年間 1 ミリシーベルトを超えないように設定し、複数の放射性物質を含む場合の評価方法も含めて、これを告示しているところです。

14、 「⑵風評被害を最大限抑制するための放出方法」について、「放出トリチウムの年間総量は事故前の福島第一原発の放出管理値(年間22兆ベクレル)を下回る水準」とされるが、海洋放出するタンク貯蔵汚染水は二次処理でもトリチウム以外の炭素14などの放射性核種も残るのではないか。
<答>
1.本年4月13 日に決定した基本方針において、東京電力に対して、ALPS処理水の海洋放出に当たっては、トリチウム以外の核種について、環境中に放出するための規制基準以下となるまで浄化することを求めています。
2.これらについては、更に、少なくとも 100倍以上に希釈する予定であり、結果として、規制基準値を大幅に下回る濃度となります。

15、 トリチウムや炭素14等放出する放射性物質の総貯蔵量と濃度は現時点でいくらか。また、原子炉建屋残留水のトリチウム等放射性物質の総貯蔵量と濃度はいくらか。
<答>
1.例えばトリチウムの総貯蔵量は、約 780 兆ベクレルであり、平均濃度は約 62 万ベクレルと推計されています。
2.また、原子炉建屋内の滞留水に含まれる放射性物質に ついては、調査中ですが、海洋放出に当たっては、トリチウムや炭素 14 を含めた 64 核種について濃度を測定します。その上で、トリチウム以外の核種が規制基準を確実に下回るまで浄化されていることを確認し、結果を公表することとしています。

16、 「関連する国際法や国際慣行を踏まえ、環境に及ぼす潜在的な影響についても評価するための措置を」とるとされるが、まずは陸側排出口及び沖合パイプラインからの放出という手段を変えた汚染水の海洋投棄をやめ、放射性廃棄物の海洋投棄を原則禁止するロンドン条約と国連海洋法条約を厳守することが必要ではないか。また、環境影響評価の措置とは何か。
<答>
まず、 日本政府は、ALPS処理水を海洋放出するに際し、 国際法や国内外の規制・ルールを確実に遵守します。また、日本政府は環境及び人の健康と安全への影響を最大限考慮しており、国際基準に準拠した規制基準を満たさずにALPS処理水を海洋放出することを認めません。
お尋ねの「環境影響評価の措置」については、日本として、国際法や国際慣行を踏まえ、実際の放出に先立ち、海洋環境に及ぼす潜在的な影響について評価するための措置をとります。また、放出後にも継続的にモニタリングを実施し、環境中の状況を把握するための措置をとります。
具体的には、東京電力がALPS処理水を放出する前の放射性物質の濃度測定、人及び環境への放射線影響評価を実施するとともに、日本政府と東京電力が海域モニタリングを実施します。これらの情報については、随時公表し、高い透明性を確保します。また、第三者機関の視点からIAEAによるレビューを受けます。このような取り組みにより、国民・国際社会の理解醸成に努めてまいります

[4、風評影響への対応]

17、 「⑴基本的な方針」について、「実施者である東京電力には、風評影響の発生を最大限回避する責任が生じる」「賠償により機動的に対応する」とされるが、これまで原子力損害賠償のADR和解案を拒否するなど、被害者に立証を求め、加害者責任を全うせず被災県民の不信をかってきた事実からも、原子力事業者としての資質に欠けており、東京電力にその能力はあるのか。
<答>
1.原発事故後の東京電力の賠償対応や、原子力事業者として今年2月の福島県沖地震における不十分な対応、核防護に関する不適切な対応については、多くの関係者の皆様から東京電力に対する厳しい御意見や不信の声を伺い、大変重く受け止めています。
2.東京電力は、風評影響を最大限抑制するためのリスクコミニュケーションや生産・加工・流通・消費の各段階での対応、それでも風評被害が生じた場合には、迅速かつ適切に賠償を実施することを表明しています。
3.国としても、「新たな風評を生じさせない」という強い 決意を持ち万全の風評対策を講じるとともに、単に東電を指導するのみならず、賠償についての特別チームで迅速かつ適切な賠償の実現に向けた賠償方針に関する丁寧な説明や支援などを行ってまります。

18、 政府は「必要な対応に、前面に立って取り組む」とされるが、5月31日、政府のワーキンググループが風評対策の行動計画策定に向けた福島県内関係者からの意見聴取の際、座長の江島経済産業副大臣が「風評払拭にどのような対策が効果あるか教えて欲しい」と繰り返し発言したことに対し、これまで繰り返し風評対策の具体化を求めてきた農林水産団体など関係団体からは、この姿勢に疑問の声が上がり、風評被害は確実との声が大勢を占めた。他人任せとも受け取れる発言を撤回し、具体策や解決策を示さなければ、意見聴取は一方的な聞き取りに終わるのではないか。
<答>
1. ワーキンググループは、基本方針決定後の対策の進捗と今後の検討の方向性をお示し、御参加いただいた方と双方向の意見交換となるよう実施しています。

19、 「⑵風評被害を最大限抑制するための国民・国際社会の理解醸成」について、福島第一原発事故を受けて現在もなお14の国・地域が輸入停止を含む規制をしており、海洋放出すれば、政府も認める通り輸入制限措置の拡大の懸念があることから、海洋放出を見合わせ、まずは14の国・地域が輸入停止を含む規制の撤廃に向けて尽力すべきではないか。
<答>
1 ALPS処理水の海洋放出は、国際基準に準拠した規制基準を遵守した形で実施されます。このため、各国・地域による輸入規制措置の根拠にはなり得ないものと承知しております。
2 なお、原発事故による我が国の食品に対する輸入規制については、政府の最重要課題の1つとして、「農林水産物・食品輸出本部」の下、日本産食品の安全性について科学的根拠に基づいて説明するなど、働きかけを行っているところです。
3 ALPS処理水については、安全性が確保された上で海洋放出するものであり、科学的根拠に基づかない輸入規制等により、輸出に影響が出ることのないよう、引き続き、関係省庁と連携し、輸出先国に対し丁寧に説明してまいります。

20、 「⑶風評被害を最大限抑制するための生産・加工・流通・消費対策」について、福島県漁連・福島県水産加工工業連合会は海洋放出反対であり、福島県水産市場連合会も「水産物については風評被害ではなく、実害被害だ。国と東電はどう解決の道を作るのか」と意見聴取で述べたのに対し、梶山経産大臣は「説明し説得してまいりたい」と繰り返しているが、国は県漁連との約束違反を認め、海洋放出について再検討することから信頼関係の再構築を図るべきではないか。
<答>
1. 御理解を得られるよう努力し続けることが大切という考えは、一貫して変わっていません。
2. 今回の基本方針決定後も、実際の放出が始まるまでには、設備の工事や規制への対応に、2年程度の時間が必要になることから、放出までの期間を最大限活用し、地元の方々の御懸念を払拭し、御理解を深めていただくべく、理解醸成活動に取り組みたいと考えています。

21、「⑷風評被害が生じた場合の対策」について、「原子力損害賠償紛争審査会の中間指針等の基本的考え方を踏まえ賠償を実施する」とされるが、ADR集団申立案件等で、原子力損害賠償紛争解決センターが一被害実態を認め、一律の賠償額を認容する和解案を提示した場合、中間指針等に乖離した判断ではないと同センターが確認しているにもかかわらず、東京電力は和解案が
「中間指針等に乖離する」として受諾拒否を続け、救済されない被害者が続出してきたことから、政府は、同センターが提示した和解案の内容が指針上の賠償水準の最低限となるよう早急に原子力損害賠償紛争審査会の中間指針等の見直しを図るべきではないか。
<答>
1.中間指針等は、可能な限り早期に多数の被害者救済を図る観点から、類型化が可能で一律に賠償すべき損害の範囲や損害項目の目安を示したものであり、その中に明記されていない損害についても、個別具体的な事情に応じて、賠償の対象となり得ることが示されています。
2.なお、原子力損害賠償紛争審査会の場においても、東京電力は中間指針等を賠償の上限とは考えておらず、その旨の社内周知を強化していく方針を示しています。

[5、将来に向けた検討課題]

22、「トリチウムの分離技術」について、ALPS小委員会の報告書は、「直ちに実用化できる段階にある技術はない」と評価しているとし、希釈海洋放出を前提に「実用化可能な技術があれば積極的に取り入れる」としているが、この際、政府として予算を確保して実用化への技術開発を進めるべきではないか。
<答>
1. トリチウム分離技術については、過去に約 30 億円の予算をかけて、複数の技術の実証試験を実施し、国内外の有識者による性能等の評価を実施しています。
2.その後も技術的な進捗については、引きつづき注視していますが、技術が進歩し、実用可能な技術があれば、改めて、その技術の導入の可否について検討したいと考えています。

23、「汚染水の発生量を可能な限り減少させる取組」について、格納容器内の温度変化等の影響を見る注水停止試験を実施しているが、燃料デブリの水冷から空冷への切り替えの見通しはいつか。また、格納容器内へ流入する地下水の完全な止水を実施し汚染水の発生を停止させるべきではないか。
<答>
1. 注水による冷却を停止した場合には、まだ燃料デブリの温度が上昇していく状況にあること等から、いわゆる空冷の実現には、相当な時間を要すると考えています。
2. その上で、汚染水の発生量を抑制するための対策については、震災直後に汚染水の処理が課題になってから、継続して実施しています。その結果、対策前には一日当たり平均約 540 立方メートルであった汚染水発生量が、昨年(2020 年)の一日当たりの平均では、約 140 立方メートルまで減少しています。
3.引き続き、更なる汚染水発生量の低減に努め、まずは、中長期ロードマップでマイルストーンとして掲げている2025年内までに、汚染水の発生量を1日当たり 100立方メートルまで抑制することを目指しています。

[6、終わりに]

24、「政府としての重大な決断である」について、海洋放出するタンク貯蔵汚染水は液体放射性廃棄物であり、事故の発生者で加害者である東京電力が責任を持って管理保管しなければならず、政府は経済産業省と原子力規制委員会を通じて管理監督しリスクコントロールする義務があるにもかかわらず、海洋投棄の実行を決断することは、あってはならないことではないか。
<答>
1. ALPS処理水については、環境中への放出に関する規制基準を遵守することを大前提に、海洋放出を実施することとしています。今後、海洋放出の実施については、 事前に原子力規制委員会の審査を得て認可を得ることが必要です。
2. このような、管理された放出は規制当局の認可を得た上で国内外の原子力施設で実施しており、IAEAからも国際慣行に沿ったものであり、技術的に実現可能との 評価を得ています。

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by kazu1206k | 2021-07-15 22:14 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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