農地等の利用の最適化の推進として、①担い手への農地利用の集積・集約化、②遊休農地の発生防止・解消、③新規参入の促進、の3つの取組みについて目標を掲げ、日常的な農地パトロールをはじめ、遊休農地所有者への今後の農地利用に係る意向調査や農地の貸し借りに係る出し手と受け手のマッチング、地域の現状把握などの活動を行ってきました。
意見は、本市の農業・農村を取り巻く現状として、農業従事者の高齢化、担い手の不足による遊休農地の増大、TPP等の経済連携協定に伴う輸入農畜産物の増加、気候危機による大規模自然災害の多発、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う農産物の価格低下など、一層厳しさを増していると指摘した上で、大きく4項目について、本市の施策への反映を要望したものです。(下記の詳細を参照)
1 担い手への農地の集積・集約化に関する事項
農業経営における生産性の向上や競争力の強化を図るためには、経営規模の拡大等による大幅なコストダウンなど、収益性の高い農業を目指す必要があります。
そのため、担い手への農地の集積・集約化に向けて、次の事項についての対応が必要と考えます。
⑴ 人・農地プラン作成の推進強化
地域農業の将来の在り方などを明確化し、中心経営体への農地の集約化に関する将来方針を作成する同プランについて、既に農地の効率的活用の機運が醸成されている、中山間直接支払制度の実施地区を重点に、未作成地区への積極的なアプローチを実施するなど、作成に向けた推進強化を図ることが必要と考えます。
⑵ 農地中間管理事業の活用促進
同事業がさらに活用されるよう、関係機関・団体などと連携を図り、そのメリットや活用方法、手続きなどについて、広く情報発信するとともに、推進体制の構築を図ることが必要と考えます。
⑶ 基盤整備事業のさらなる推進
同事業は、生産性の向上を図り、担い手への農地の集積・集約化に寄与することから、さらなる推進が必要と考えます。特に未実施地区においては、アンケートや座談会などを通じて、地域の意向把握に努めるとともに、地域の実情に応じた整備の検討を行うことが必要と考えます。
また、農地中間管理事業の重点実施地区等においては、畦畔除去による区画拡大や、暗渠排水等のきめ細かな耕作条件の改善を機動的に支援する「農地耕作条件改善事業」の活用についても、推進を図ることが必要と考えます。
⑷ 中山間地域直接支払制度に取り組む地域への継続的な支援
同制度は、適切な農地の管理を通じて、新たな遊休農地の発生を防ぎ、中山間地域等が有する多面的機能を維持・確保するものですが、地域のこのような取組みは、担い手への農地の集積・集約化にもつながるため、引き続き、同制度に取り組む、意欲ある地域を支援することが必要と考えます。
⑸ 多面的機能支払制度の活用推進
同制度を通じて、農地の持つ水源の涵養や自然環境の保全、良好な景観の形成などの多面的機能の適切な維持・管理を図ることは、担い手への農地の集積・集約化にもつながることから、同制度が多くの地域で活用されるよう、事業説明会などを通じて、周知を行うことが必要と考えます。
⑹ 担い手の確保及び育成に対する支援
担い手の中心となる家族経営体への支援や、地域における集落営農組織の法人化に向けた支援を行うとともに、各種支援制度の要件緩和についても検討することが必要と考えます。
また、担い手の農地集約化に対する、援助策などを検討することが必要と考えます。
2 遊休農地の発生防止・解消に関する事項
農地は農作物を生産するだけでなく、防災や自然環境の形成など、多様な役割を担っており、安定的な利活用と保全が重要となっています。
また、遊休化した農地は、病害虫の発生原因や有害鳥獣の棲みかとなるなど、周辺農地への影響も危惧されます。
こうしたことから、遊休農地の発生防止・解消に向けて、次の事項についての対応が必要と考えます。
⑴ 中山間地域直接支払制度に取り組む地域への継続的な支援(再掲)
適切な農地の管理を通じて、新たな遊休農地の発生を防ぎ、中山間地域等が有する多面的機能を維持・確保するため、引き続き、同制度に取り組む、意欲ある地域を支援することが必要と考えます。
⑵ 多面的機能支払制度の活用推進(再掲)
同制度を通じて、農地の持つ水源の涵養や自然環境の保全、良好な景観の形成などの多面的機能の適切な維持・管理を図ることは、遊休農地の発生防止・解消にもつながることから、同制度が多くの地域で活用されるよう、事業説明会などを通じて、周知を行うことが必要と考えます。
⑶ 人・農地プラン作成の推進強化(再掲)
地域農業の将来の在り方などを明確化し、中心経営体への農地の集約化に関する将来方針を作成する同プランは、遊休農地の発生防止・解消にも資すると考えます。
このことから、既に農地の効率的活用の機運が醸成されている、中山間直接支払制度の実施地区を重点に、未作成地区への積極的なアプローチを実施するなど、作成に向けた推進強化を図ることが必要と考えます。
⑷ 基盤整備事業のさらなる推進(再掲)
同事業は、担い手への農地の集積・集約化を促進し、生産性の向上を図るだけでなく、遊休農地の発生防止・解消にも有効であることから、さらなる推進が必要と考えます。特に未実施地区においては、アンケートや座談会などを通じて、地域の意向把握に努めるとともに、地域の実情に応じた整備の検討を行うことが必要と考えます。
また、農地中間管理事業の重点実施地区等においては、畦畔除去による区画拡大や、暗渠排水等のきめ細かな耕作条件の改善を機動的に支援する「農地耕作条件改善事業」の活用についても、推進を図ることが必要と考えます。
⑸ 直接支払交付金対象外の作物への市独自補助の創設
遊休農地の発生を抑制するためにも、水田活用及び畑作物の各直接支払交付金の対象作物以外の作物を生産する農業者に対し、市独自の補助メニュー創設について、検討することが必要と考えます。
⑹ 担い手の確保及び育成に対する支援(再掲)
遊休農地の発生防止・解消を図るためにも、担い手の中心となる家族経営体への支援や、地域における集落営農組織の法人化に向けた支援を行うとともに、各種支援制度の要件緩和についても検討を行うことが必要と考えます。
また、担い手の農地集約化に対する、援助策などを検討することが必要と考えます。
⑺ 鳥獣被害対策事業の継続的な実施
イノシシなどの鳥獣被害を防止するための資材等の購入費や、鳥獣被害対策実施隊の活動に係る経費について、引き続き、補助事業を実施することが必要と考えます。
⑻ 地域に合った作物の導入
中山間地域の傾斜地を生かした作物や、高齢者でも生産が容易な作物など、その地域や農業者の事情に合った作物の導入に向けた検討を行うことが必要と考えます。
また、作物の導入に向けた種苗や資材などに対する補助制度の創設についても、検討するとともに、田から畑への転換によるハウス栽培の促進を図ることが必要と考えます。
⑼ 企業による遊休農地の活用に対する支援制度の創設
遊休農地の活用に向けては、農地の再生から作物の生産までを一体的に進めることが効率的・効果的であり、そのためには重機を所有する企業など、他業種が参入しやすいよう、支援制度の創設を検討することが必要と考えます。
⑽ 農業経営の第三者継承への支援
農地や施設・機械などの「有形資産」と、技術やノウハウ、信用などの「無形資産」を、一体的に家族以外の者に受け渡していく「第三者継承」の取組みが、全国各地で行われており、本市においても、独自の支援や制度の創設などについて、検討を行うことが必要と考えます。
⑾ 農業体験施設や市民農園への活用
農業者以外の方から「家庭菜園をやってみたい」といった相談が寄せられており、遊休農地の活用方法として、市民を対象とした農業体験施設や市民農園などが有効であることから、こうした取組みが各地域で展開されるよう、検討が必要と考えます。
3 新規参入の促進に関する事項
農業従事者の高齢化や担い手の不足に伴い、将来の本市農業における担い手を育成・確保することは喫緊の課題であることから、新規参入の促進に向けて、次の事項についての対応が必要と考えます。
⑴ 新規就農相談窓口の統一的対応
就農相談に対し、関係機関・団体での情報共有を図り、互いに連携を密にすることで新規就農につながるよう、統一的で一貫した同相談窓口の運営を行うことが必要と考えます。
また、企業の新規参入に向けては、柔軟な受入れ体制を構築し、支援策の充実・強化を検討することが必要と考えます。
⑵ 農業経営や農業技術向上のための支援の充実
新規参入者が早期に経営の安定化を図ることができるよう、農業経営や農業技術の向上など、就農後の支援やサポート体制を充実させることが必要と考えます。
また、就農する地域の実情に精通した、指導者の確保も必要と考えます。
⑶ 市独自の助成制度の拡充や研修制度の創設
低利融資制度の活用推進と併せて、農業機械の取得や施設の整備などに対する、本市独自の助成制度を拡充させることが必要と考えます。
また、本市独自の研修制度の創設についても、検討することが必要と考えます。
⑷ 離農者の中古施設を提供する仕組みや農機具・施設等のリース促進
初期投資を抑え、新規参入のハードルを下げるため、離農者の中古施設の利用や農機具・施設等のリースなどができるよう、その仕組みを構築することが必要と考えます。
⑸ 地域に合った作物の導入(再掲)
中山間地域の傾斜地を生かした作物や、高齢者でも生産が容易な作物など、その地域や農業者それぞれの事情に応じた作物を導入することは、遊休農地の発生防止・解消に資するだけでなく、新規参入の促進の点でも有効と考えられることから、その検討を行うことが必要と考えます。
また、これらの作物の導入に向けた種苗や資材などに対する補助制度の創設や、田から畑への転換によるハウス栽培の促進は、新規参入の促進を図るうえでも効果的と考えます。
⑹ 移住者へのきめ細かな支援及び本市農業の情報発信の強化
市外から移住し就農する者への支援として、空き家バンクとの連携による住宅のあっせん、地域の受入れ体制の構築など、きめ細かな支援の充実と受入れ体制の整備や、農業体験会の開催などを検討することが必要と考えます。
また、本市農業の特徴や利点などについて、支援策も含めた情報発信の強化を図ることが必要と考えます。
4 その他の必要な事項
前述の3項目以外に、本市農業のさらなる振興・発展に向けて、次の事項についての対応が必要と考えます。
⑴ 磐城農業高校生徒を次世代の担い手として育成するための取組みの充実
市内唯一の農業高校である磐城農業高校の生徒は、最先端の農業技術を習得し、本市の次世代農業の担い手として、大いに期待されます。
このことから、卒業後の地元就農につながるよう、市・同校に加え、関係機関等も交えた連携や情報交換、農業者等との交流などの取組みを充実させることが必要と考えます。
⑵ 畑地や施設用地への再基盤整備及び水田の畑地化に対する支援
米価の下落に伴う農業収入の減少が続いている状況を鑑み、畑地や施設用地への再基盤整備や、水田の畑地化に対する計画指導と支援事業の創設を検討することが必要と考えます。
⑶ 女性農業者のための異業種交流や研修メニューによる6次産業化の推進
女性農業者は6次産業化に積極的であることから、異業種との交流・連携を支援するとともに、様々な研修機会の充実を図り、6次産業化を推進することが必要と考えます。
⑷ いわきブランド農産物の生産振興と販路拡大への支援
イチゴ、トマト、ナシ、ネギのブランド作物について、引き続き、生産振興を図るとともに、販路拡大についても継続的な支援を実施することが必要と考えます。
⑸ 機械や施設等の助成枠拡大と条件緩和
生産に必要な機械や施設等の助成については、助成額・率の拡大や兼業農家も対象に含めるなどの条件緩和を検討することが必要と考えます。
⑹ 親元就農に対する支援
親元就農は、新規参入者よりも就農しやすい環境にあることから、職業として、農業を選択してもらえるような支援策を講じることが、必要と考えます。
⑺ 多核種除去設備等処理水に関する適切な対応
同処理水の海洋放出が科学的に安全であることを広く理解されなければ、本市農産物に対する消費者の購買意欲が低下するなど、和らいできた風評が再燃し、その犠牲になることは明らかであります。
そのため、政府が責任をもって、国民や関係者に対して丁寧に説明し、理解を得て、農業者が安心して営農できる環境が実現されるよう、国等に対して適切な対応を働き掛けることが必要と考えます。