10月29日、東電株主代表訴訟で、福島第一原発事故後、はじめて裁判官が福島第一原発の現場に入りました。
これは、東京電力取締役が福島第一原発事故によって会社、株主、社会に甚大な被害を及ぼしたことに対する責任を追及し、津波の対策を怠ったとして22兆円の賠償を求めた東電株主代表訴訟の現地進行協議として、実現したものです。
29日午前、東京地裁の朝倉佳秀裁判長ら裁判官、原告側と被告側の代理人がJR大野駅に到着後、東京電力の準備したバスで、福島第一原発に向かい、約5時間半近く福島第一原発を視察しました。原発事故の訴訟で、裁判官が原発敷地内を見て回るのは初めてです。
原告株主側は、被告らの津波よる本件過酷事故の予見可能性、結果回避可能性を立証すべく、2017年2月に検証申出書を提出して以来、東京電力刑事裁判で出された書証を東電株主代表訴訟に提出し、さらに検証の必要性について説明を行ってきました。原告株主側は「実際に訪れて事故の原因や被害の状況を把握して欲しい」と現地視察を求め、被告旧経営陣側は「必要ない」と反対しましたが、朝倉裁判長は6月の進行協議で「経営陣の過失を判断するため現地を見たい」と判断したものです。
視察は非公開で行われ、朝倉裁判長らは、現場で東京電力係員の説明に質問しながら、約3時間にわたり敷地内を視察。朝倉裁判長は、浸水対策が講じられた部分について「(対策は)事故前からなのか、事故後なのか」と繰り返し東電に質問していたといいます。視察後、原告株主側は、福島第一原発事故の被害についても書面を提出して説明しました。
視察後、原告株主弁護団は、いわき駅前で報道陣の取材に応じ、海渡雄一弁護士は「裁判官がいろいろ質問をしていました。津波が入ってきた場所がどこかというのを外から確認しようと思って、あそこですね、あそこですねって質問していた」と話し、河合弘之弁護士は「現地を見たことで裁判官は確信をもって判断できるだろう。現地を見た上で出す判決は社会への説得力が違う」と語りました。
東日本大震災の翌年から9年以上続いていて裁判は、11月30日に結審する予定です。
この現地視察の報告は、福島刑事訴訟支援団と東電株主代表訴訟原告団の共催によるオンラインセミナー10月31日(日)14:00~15:30『東電株主代表訴訟・福島第一原発現地進行協議の報告』をご覧できます。河合弘之弁護士、海渡雄一弁護士、甫守一樹弁護士が出席予定です。