11月13日午後、海からの風が心地よい、快晴の小名浜港のアクアマリパーク。大漁旗がはためく中、「汚染水を海に流すな!海といのちを守る集い」が開かれ、100人を超える市民が参加し、パークを訪れる多くの市民が関心を寄せていました。主催は、これ以上海を汚すな!市民会議。
集いでは、織田千代(これ以上海を汚すな!市民会議共同代表)さんが主催者挨拶。ゲストトークの野崎哲(小名浜機船底曳網漁業協同組合長)さんは、政府と東京電力が「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする福島県漁業協同組合連合会等との文書約束を反故にしたことについて「義をもって義が失われた」とし、「福島で漁業を続けていく」漁業者の姿勢を基本に、「海洋放出反対の立ち位置で」「様々な理不尽なことがあっても土着して漁業を続けていく」と静かに話しました。
リレートークは、県内の市民、放射線や水産実験の専門家など12人が次々に登壇。いわき小名浜のママたちから始まり、原発事故によってどれほど子どもたちと海の関係が壊されてきたか、「子供たちの健康を守るために海に汚染水を流すな」と、切実なメッセージ。大熊・双葉のママたちからは、福島第一原発建設地内にあった実家が転居させられ「5世代に渡り原発に翻弄されてきたことから解放してほしい」と訴えました。避難しているママは様々な心無い言葉で傷つきながらも登壇したこと、「帰りたいのに帰れない故郷の放射能汚染」の実態と向き合う現実を語り、「子どもたちに不用な被曝をさせてはいけない、子供の健康を守ろう」と話しました。実家が中間貯蔵地になった方は、「汚染水を流すところに子どもたちと帰れない、復興のために汚染水を流すなんて許せない、親が立ち向かわないといけない」と話しました。
この後、自分たちで放射能モニタリングを行い、子供の環境中の放射能の除染を訴える、TEAMママベク子どもの環境守り隊の千葉由美さん。汚染水の海洋放出に反対する45万筆の署名を集約しさらに海洋放出の再検討を求める署名を行なっている、原発のない福島を!県民大集会実行委員会の飯塚美由希さん。工学博士・元原子力研究所研究員で現在は環境放射能の調査をしている天野光さんは、「汚染水には国と東電が公表している64放射性核種以外にも多くの放射性核種がある」と指摘。大熊町議会議員の木幡ますみさん。東大名誉教授・農学博士・元附属水産実験所の鈴木譲さんは、「放射性物質が海に流れ、海は大きいから薄まれば影響はないというが水は簡単に希釈されない、高濃度のままアチコチ移動する。それで魚が汚染され、漁業が大変な目にあった」「科学は嘘をつく」と警告、「諦める前にまだやることはきっとあるはずだ、それを探せ!」という言葉を紹介しました。
海外から、シカゴ大学名誉教授のノーマ・フィールドのメッセージを武藤類子さんが読み上げ、アジア・太平洋諸国の若者からリバース・ザ・トレンド太平洋諸国のユース委員会もメッセージが寄せられ、日本政府と東京電力の計画が太平洋諸国はじめ世界市民の脅威になっていることが明らかになりました。
最後に、片岡輝美さんが、アピール読み上げて採択(末尾に掲載)しました。
強行に海洋放出が開始されたら30年以上続きます。汚染水を海洋放出しなくても、陸上タンクに保管して放射性物質の半減期を待ち処理する方法、汚染水を貯蔵するタンクを増設する土地もあります。汚染水を海に流すことは、2次、3次の汚染の拡大であり、子どもたちの未来にとって大きな負の遺産になります。
汚染水を海に流すという計画が、如何に無責任で原発事故の被災者を愚弄するものか。被害者に更なる苦しみを強い、生態系に悪影響をもたらすものか。如何に未来の世代の命と環境を危険に晒す愚挙であることか。日本そして世界の人々とつながって、汚染水を海に流すな!かけがえのない海といのちを守ろう!集まった人々の心を打つ言葉ひとつひとつをみんなが共有する集いとなりました。私たちのかけがえのない、子どもたちの未来、そして海といのちを守るために、諦めることなく、汚染水の海洋放出方針を撤回させ、陸上保管の継続を求めて行きましょう。
以下に、動画。
2021.11.13 汚染水を海に流すな! 海といのちを守る集い
11.13 海といのちを守るつどい アピール
私たちの目の前に広がる太平洋…、いのちは海から誕生しました。悠久の時を経て、生物は進化を遂げました。海は全てのいのちの源です。春の光に煌めく水面、照りつける太陽の下、歓声が上がる浜辺、台風や極寒の横なぐりの吹雪によって立つ波しぶき…、私たちは、四季折々の海を楽しみ、また自然の厳しさを見せつけられ、時には畏敬の念を覚えるのです。そして、遙か昔より、海は人間にいのちの糧を与えてきました。海から豊かな恩恵を受けた人間は日常を紡ぎ、生業を営み、この地域特有の技術や伝統を親から子どもへ、そして孫へと繋いできました。
2011年3月11日午後2時46分、大地は激しく揺れ、大津波が沿岸の町々を襲い、東京電力福島第一原子力発電所過酷事故が起きました。この10年間8ヶ月、私たちは、あの時の恐怖や深い悲しみをひと時も忘れたことはなく、失われたいのちや故郷への愛おしさはさらに増しています。私たちは人間の常識を越えた自然災害を経験し、人間は自然の一部に過ぎないことを、痛みを持って知りました。
では、福島原発事故は、私たちに何を突きつけたのでしょうか。それは、暴走し始めた原子炉を人間は止めることができない、そして、一旦、事故を起こした原発の廃炉は極めて困難であるという真実です。
しかしながら、この国と東京電力は、国策が生み出した甚大な被害を認めず、責任も取らず、被害者への謝罪もなく、市民を無用な被ばくに晒し続けています。そして、2021年4月13日、菅義偉前政権は汚染水の海洋放出を決定。「もうこれ以上、海を汚さないでくれ!」との福島県民の抗議、日本各地や諸外国から湧き上がった反対の声に耳を塞ぎ、背を向けたのです。被害者に更なる苦しみを与え、汚染された自然にさらなる汚染を広げるこの決定は、暴挙です。加害者の驕りです。そして、未来世代のいのちと環境をも危険に晒す、愚かな行為に他なりません。
海は人間だけのものではありません。私たち人間は、自然の一部に過ぎないのです。ですが、前の世代から受け継いだいのちを、次の世代へ手渡すという大切な責任が、私たちに託されています。今を生きる子ども達、あとから来る子ども達のために、私たちは諦めず声を上げ続けましょう!海が繋がっているように、日本各地の、そして世界の市民と繋がっていきましょう!思いはひとつ、汚染水を海に流すな!私たちは海といのちを守ろう!
2021年11月13日 これ以上海を汚すな!市民会議