事始めの2日、若松丈太郎詩集「夷俘の叛逆 」を読んだ。
本の帯に「若松丈太郎氏の詩集『夷俘の叛逆 』は日本の正史が隠蔽してきた真実をさらけ出し、その先住民たちを『夷』や『鬼』としてきた歴史認識の在り方に疑問符を投げ掛け、日本列島の多様性ある真の豊かさを伝えてくれる恐るべき叙事詩集だと私には感じられる。」(鈴木比佐雄「解説文」より)とある。
若松丈太郎さんは、岩手県奥州市に生まれ福島県南相馬市に暮らし高校教諭をしながら詩作をつづけた。日本ペンクラブ、日本現代詩人会会員で、1994年に事故後8年のチェルノブイリ原発を訪れて以来、脱原発福島ネットワークに参加。ネットワークニュース「アサツユ」を購読し続け、原発の危険性を訴え、福島第一原発事故を予見した詩「神隠しされた街」を発表。事故後も論集「福島原発難民 南相馬市・一詩人の警告」や「若松丈太郎詩集」など作品を通じ原発を告発してきた。11作目の詩集である本書を2021年3月に刊行され、翌4月に若松丈太郎さんは鬼籍に入られた。
詩集「夷俘の叛逆 」は五章に分かれ、42編が収録されている。
「若松氏はどんなことがあっても不屈の精神で言葉に希望を託してきた先人たちの知恵を詩篇に宿そうとする。そんな<東北の土人><地人の夷狄>の基層を探索する叙事詩篇の試みを、公的言語や教科書的歴史観の表層の虚しさを感じている人たちに読んでほしいと願っている。」(「栞解説文」より)
2021年の立春にと記された跋には、「今後も詩を書けるかどうかは不確かだけれど、この『夷俘の叛逆』が、おそらくは生前最後の詩集になるにちがいないと意識する年齢に向きあっている。」とある。
詩集「夷俘の叛逆 」は、我ら「蝦夷の魂」を受け継ぐものへの若松丈太郎さんの遺言である。
目次
Ⅰ
夷俘の叛逆
土人からヤマトへもの申す
こころのゆたかさ
三千年未来へのメッセージ
Ⅱ
自由ヲ保ツハ人ノ道ナリ 植木枝盛
北の海辺から 小田為綱
自由や 自由や 我汝と死せん 苅宿仲衛
若い二人を流れていたもの 小林多喜二・今野大力
戦争はひとを殺す 矢部喜好
俺達の血にいろどった世界地図 鶴彬
鳥になりました 亀井文夫
いちばんの味方は事故 舛倉隆
戦争いらぬやれぬ世へ むのたけじ
Ⅲ
こどもたちがいない町
むしゅぶつ
避難指示はないけれど
こどもたちの未来のために
二〇一六年の春に
避難指示の解除
原因者が決めることなのか
八年目になったばかり
ふたつの八年という時間
Ⅳ
墨の上塗りという行為について
「積極的平和主義」って?
軍備はいらない
のようなもの
おらだの重宝なことば
未来を標的にする戦争
「遠交近交」策はいかが
積極的非暴力平和主義の理念を貫きたい
戦争したがっている国がある
平和のうちに生存する権利
さっさとおひきとりを!
Ⅴ
ハエという存在
白旗をかかげて生きよう
いま求められていること
二〇一七年秋にこんなことが
ひとについて
ひと由来の
ひとにはことばがある
一羽の駝鳥
これからなにをするの?
跋
初出一覧