3月16日午後、脱原発福島ネットワークなどによる再開第65回東電交渉が開かれました。
冒頭、「理解と合意なき汚染水海洋放出設備工事の6月着工の中止などを求める要請書」(下記に掲載)を提出しました。現在、「ALPS処理水」の海洋放出設備の工事について、原子力規制委員会での審査が3月中にも終わり、パブコメと福島県などの事前了解手続きを経て、6月着工を東京電力が公言しています。
しかし、東京電力は『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』という福島県漁業協同組合連合会との文書約束を守ることが先であり、放出水に含まれる全ての放射性核種と毒性化学物質など全ての情報公開が必要です。また、海底トンネル等希釈放出設備の健全性・安全性にも懸念の声があり、漁業者はじめ全ての関係者に説明すべきです。このまま強引に6月着工を強行すれば将来に大きな禍根を残します。
こうした状況から、要請書を提出し、速やかな回答を求めたものです。
提出後、「21.8.25東電文書『検討状況』、海洋放出計画について再質問への回答」「21.11.17ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書(設計段階)の説明と『軽微な影響』の根拠について」「これまでの質問事項の回答」など、東電の説明を聞いて、質疑を行いました。
やりとりの概要は、以下の通りです。
1、理解と合意なき汚染水海洋放出設備工事の6月着工の中止などを求める要請書
東京電力ホールデングス(株)代表執行役社長 小早川 智明 様
2022年3月16日
理解と合意なき汚染水海洋放出設備工事の6月着工中止などを求める要請書
貴社は、福島第一原子力発電所事故により発生した汚染水に関して、昨年12月21日、原子力規制委員会に対し、「ALPS処理水」希釈放出設備及び関連施設の基本設計等の「福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画変更認可申請書」を提出し、前日の12月20日、福島県、大熊町、双葉町に対し、「安全確保に関する協定」に基づく「事前了解願い」を提出しました。
貴社は、120万トンを超えるタンク貯蔵汚染水について、年間22兆ベクレル上限に30年を超えて福島県沖へ放出する計画を進めています。総量860兆ベクレルとされるトリチウムや炭素14など公表されている64核種は、告示濃度限度以下の希釈放出は安全といいますが、海水で薄めても流す総量は同じです。告示濃度以下でも多量の放射性核種が福島の海に流され、64核種の他にも、定量確認できていない種々の放射性核種が含まれます。福島の海が人工放射能で汚染されることに間違いなく、取り返しがつかない状況になります。放出水に含まれる全ての放射性核種や毒性化学物質の定量確認もせず、漁業者との約束を反故にし、近隣諸国の懸念の声も振り切り、海洋放出の準備を進める貴社の姿に、多くの県民は恐怖を感じています。
また、海洋放出設備については、地震・津波など自然現象に対する防護が、全て耐震Cクラス設計とされており、Bクラス以上の地震では、設備の損傷や機能喪失が想定され防護対策が十分とはいえず、地震や誤操作により異常事象が発生し、ALPS処理水や未処理水の環境への放出や漏洩が起きた場合の安全対策はどうなるのか。放水トンネルは、土木学会指針のシールド工法で200m間隔のボーリング調査とされているに対し、300m間隔3本のボーリング調査のみ、などその健全性、安全性の確保が懸念されています。
海洋放出には、福島県内農林水産業団体が一致して反対し、県内自治体議会の約7割が反対または慎重な対応を求める意見書を政府に提出してきました。このまま海洋放出されれば、本格操業を目前にした漁業はじめ一次産業ばかりでなく、県内の各産業にも実害、風評被害合わせ、二次被害は必至です。福島県漁連の野崎哲会長は、「われわれが反対している中で進んでいくのは残念だ。淡々と進むことに非常に不満だと発信するしかない。説明を尽くしていない」と訴えています。
貴社は、海洋放出設備工事の6月着工を公言していますが、『関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない』という福島県漁業協同組合連合会との文書約束を守ることが先であり、放出水に含まれる全ての放射性核種と毒性化学物質など全ての情報を公開し、海底トンネル等希釈放出設備の健全性・安全性への懸念を払拭し、全ての関係者、県民、市民に説明すべきです。このまま強引に6月着工を強行すれば将来に大きな禍根を残します。
この際、わたしたちは、下記の通り要請し、速やかな回答を求めます。
記
1、海洋放出設備工事の6月着工について、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする文書約束を守り、理解と合意のない汚染水海洋放出の設備工事の着工は中止すること。
2、放出水の情報公開について、トリチウムと放射性炭素のほか放出する全ての放射性核種と毒性化学物質を測定し、種類、濃度、総量、期間など放出水の全ての情報公開を行うこと。
3、希釈放出設備等の健全性、安全性について、地震・津波など自然現象や誤操作による設備の損傷や機能喪失で汚染水の環境放出や漏洩が起きた場合の安全対策を明らかにすること。
4、海洋処分の説明会の開催について、県民・市民を対象に処分に関する説明会を開催すること。
5、汚染水対策について、地下水の止水、トリチウム分離技術の実用化、大型タンク長期保管案やモルタル固化保管案等の検討など、汚染水についての抜本対策を早急に確立すること。
命を守る三春の会 風下の会福島 脱原発の日実行委員会福島 脱原発福島ネットワーク
脱原発緑ネット ハイロアクション福島 福島原発30キロひとの会 双葉地方原発反対同盟
フクシマ原発労働者相談センター ふくしまWAWAWA―環・話・和―の会
2、21.8.25東電文書「検討状況」についての質問と回答
①測定・確認用設備について
質問ー各核種の年間放出量・総放出量は?
回答: 現時点で64核種の分析結果が揃っているK4タンク水及び2020年実施の2次処理試験のALPS処理水を年間のトリチウム放出量が22兆ベクレルになるよう放出した場合、その他の核種が1年間あたりどの程度放出するかについて、21年11月公表の放射線影響評価報告書にてお示ししております。
放出については、一度に大量に放出せず、廃止措置の期間をかけて放出することから、この30倍になると現時点で想定しています。実際に環境に放出される水の総量は、放出前に濃度を測定評価し、濃度に放出量を掛けることで確認していきます。
64核種も見直し、洗い直しています。確定ではありません。
②取水放出設備について
質問ー海底トンネルの費用は、放出口工事の防護対策は、海底ボーリング調査3箇所の根拠は?
回答:放出口工事は深さ10mを掘削。放射性物質を掘削しない。シールド工法の掘削は、圧送で地上まで運ばれ、人が触れることはない。ケーソンを降ろして工事をする。海底ボーリング調査は、土木学会等の技術指針を踏まえて、ボーリングの頻度を決め計画を進めています。
市民:国民の血税が投入されており透明性を確保すべき費用の公開を。
東電:次回、回答
市民:どう工事するのか?(3月10日規制委員会審査会合での話)
東電:次回、回答
市民: 海底ボーリング調査は土木学会の技術指針で200mごとでは?
東電:次回、回答
③海域モニタリングについて
質問ー貝類の調査、採取場所は?
回答:海域モニタリングで貝類は対象としていない。貝類、はIAEAのトリチウム濃度係数は魚と同じ。
市民:常磐もののホッキ貝など貝類は調査対象に増やすべきだ。?
東電:次回、回答
④海洋生物の飼育試験、脳神経など生物学的試験?
回答:魚を飼って安全を示す。9月からトリチウムの半年間の試験データを収集する。
市民:第3者機関に試験をしてもらうべき。
東電:次回、回答
3、21.11.17ALPS処理水の海洋放出に係る放射線影響評価報告書(設計段階)の説明と「軽微な影響」の根拠についての質問と回答
市民:国際基準に基づき評価というが、ICRPの係数はトリチウムで千分の一ほど低いのでは?
東電:次回、回答
市民:海洋拡散のシュミレーション結果は、何年間放出したものか。低濃度の再現データに問題があるのではないか?
東電:次回、回答
市民: トリチウム以外の放出核種の生物濃縮の評価は?
東電:次回、回答
市民: 放出する主核種の測定調査は?
東電:次回、回答
4、これまで質問事項への回答
①凍土遮水壁温度上昇の原因
東電:回答別紙
②ALPSフィルター破損
東電:残ったスラッジ、高線量ヒックの取扱方法を検討する。ヒックの数は1月6日現在3.399基。
市民: ヒックの耐用年数、遠隔作業で人の作業はないのか?
東電:次回、回答
以下、次回
③ロボットの回収機の汚染状況、12機の総額、使用毎
④スラッジの化学的性状、含有核種
*次回、5月12日。