春彼岸の中日、見事なミモザの花が迎えてくれる、鹿島町久保の金光寺へ伺いました。
3年前、県道小名浜平線(鹿島街道)の鹿島町久保薬師前交差点付近の山体崩落事故により崩れ落ちた、久保磨崖仏の御堂が昨年暮れ金光寺境内に建立され、4体の磨崖仏のうちの1体の肩から胸の部分が御堂に納められました。
久保磨崖仏は、鹿島町久保の鹿島街道に面した岩壁を彫り、如来形坐像が半肉彫に彫り出され、通称「船戸薬師様」といって地区住民が尊崇し、「岩薬師」と呼んで親しんできたものでした。如来形坐像は4体で、2体は削り取られ場所を移動して、像高は最大のもので134.5センチ。建立年代は、小名浜住吉の住吉磨崖仏と大きさが近く、技法などの共通点が多いことから、鎌倉時代頃の作とされ、千年近い風雨にさらされ破損が進んでいましたが、2009年にいわき市指定文化財に指定されていました。
久保磨崖仏は、いわき市内一の交通量を有する県道小名浜平線(鹿島街道)に面し、鹿島街道の拡幅工事で、岩盤の裾野が削られ歩道が作られたため、歩行者の頭上に面し、県道の交通に伴う振動や排気ガスに24時間さらされ、文化財の保存条件としては悪条件でありました。このため、岩盤に亀裂が生じ磨崖仏の彫られた部分の剥離も想定されることから、安全性を第1に、岩盤全体の耐震補強や防災構造の強化方策も必要との意見が出され、「岩盤亀裂や岩体崩落への強化処置」「磨崖仏の修復措置」などを課題として修復保存工事の実施要請も出されてきた経緯もありました。
2019年8月24日夜の山体崩落事故。崩落した山体には、昔、住宅の土台やカマドなどに利用する凝灰質砂岩を切り出していた石切場の跡の大きな空洞があり、崩落が危険なので、金網で閉鎖されていました。摩崖仏は、崩落山体の先端に位置しており、崩落後、現場の鹿島街道に無惨な姿で発見され、市が回収し金光寺境内で保管してきました。4体のうちの一部とはいえ、ようやく、「岩薬師」が御堂に安置されました。苦しむ人々を救済する薬師如来さま。「オン・コロコロ・センダリ・マトウギ・ソワカ」