被害者の声を聞け！有罪判決を！東京高裁に意見書提出

　4月5日、東京電力福島第一原発事故の真相究明と刑事責任を問う東電刑事裁判の控訴審で、福島原発告訴団と福島原発刑事訴訟支援団は、弁護団とともに、東京高裁に対し「被害者の声を聞け！長期評価の信頼性を認め有罪判決を！」と意見書の提出行動を行いました。

　これまで、強制起訴された東京電力旧経営陣の勝俣恒久、武黒一郎、武藤栄の3被告人に対する東電刑事裁判・控訴審は、昨年11月の第1回公判で、検察官役の指定弁護士が、大津波が予見できた根拠となる「長期評価」を否定した一審の判決を「最大かつ基本的な誤り」と指摘。「原子炉の安全についての『社会通念』を誤って捉えている」「事故を避ける方法を、運転停止のみに限定した」「福島第一原発の現場検証をしなかった」など4点を説明し、長期評価の策定に関わった濱田信生・元気象庁地震火山部長ら3名の証人尋問の申請と一審の東京地裁では採用されなかった現場検証を求めました。

　しかし、本年2月の第2回公判で、東京高裁・細田裁判長は、は現場検証と新たな証人調べの不採用としたため、検察官役の指定弁護士は「大きな禍根を残す」と厳しく批判していました。一方で、東京高裁は、長期評価の信頼性を認めた千葉避難者訴訟の東京高裁判決文などは証拠採用しました。第3回公判は、6月6日に開かれ、指定弁護士側と弁護側の双方が書証の補充弁論を行い、被害者が心情意見陳述を行い、結審する見込みです。

　支援団と弁護団は、現場検証もしないまま、6月6日の第3回公判で結審するという東京高裁の訴訟指揮に対し、このままではすまされん、「東京高裁は被害者の声を聞け！長期評価の信頼性を認め有罪判決を！」と、約370ページに及ぶ弁護団渾身の意見書を提出し、東京高裁・細田裁判長に対して、証拠採用した千葉避難者訴訟の東京高裁判決が認めた長期評価の信頼性と原発事故の過酷な被害の事実認定を読み込み、公正な判断を求めたものです。

　福島原発告訴団弁護団名の意見書は、「第1 我々は，なぜこのような意見書を提出するのか」「第2 福島第一原発事故による深刻な被害」「第3 長期評価の信頼性」「第4 福島原発事故は事前の津波対策によって結果を回避することができた」「第5 東電内部において，被告人らが，津波対策を講ずる契機はいくども存在した」「第6 津波対策先送り方針後の先送り方針見直しの契機となりえた事実」「第7 各被告人の無策を厳しく追及した東京地裁8部の裁判官たち」「第8 独立した司法の誇りにかけて，歴史に残る判決を」の8章からなります。

　下記、支援団のHPから全文ご覧になれます。

https://shien-dan.org/wp-content/uploads/written-opinion-20220405.pdf

　この日、正午過ぎ、東京高裁前で、集まった約100名の市民が見守る中、支援団長や弁護団の河合弁護士、海渡弁護士、被災者らが次々にアピールを行い、午後1時過ぎ、弁護団等が東京高裁刑事訟廷事務室の事務官に意見書を提出し、東京高等裁判所第10刑事の細田啓介裁判長らへの手交を依頼しました。その後、弁護団は司法記者クラブで記者会見を行い、控訴審結審に向けて意見書の作成の趣旨と意見書内容を説明。午後2時半からは、参議院議員会館で院内集会を開催して、弁護団からの意見書の内容説明と質疑応答が行われました。

　院内集会では、まず大河弁護士が意見書を解説した上で、東京高裁の裁判官が現地視察をしないため、東電株主代表訴訟での現地協議の現地視察した際に撮影された原発周辺の写真を東電のダメ出しで全てマスキングし解説をつけて提出したこと。避難者訴訟など民事訴訟の最高裁判決が6月以降出ることが予想されるため、刑事裁判がそれら裁判の結果も見ずに6月6日結審はあり得ないのではないか、と指摘しました。北村弁護士は、東電内部で津波の危険性が指摘されたのであれば、その対策を考え対応するのが普通の企業であり、被告らが考えが及ばなかったという言い訳は通用しない、と指摘。また、海渡弁護士は、東電が最近の訴訟で被害がなかったことにしようと画策し、「危険がないのに危険だと言って避難している被災者には補償を払い過ぎている」などと反動的を主張し始めている現状も指摘しました。

　被害者、被災者はあきらめない！「推本の長期評価が、津波対策を基礎づける信頼性を有しているという前提に立ち、一審の誤った無罪判決を破棄し、被告人らに対する有罪判決を下すべきである」と海渡雄一弁護士は指摘しています。東京高裁・細田裁判長は、採用した千葉避難者訴訟の住民勝訴判決から長期評価の信頼性を認めるべきだ。

　私たちはあきらめない！東京高裁は被害者の声を聞け！6月6日結審せず、長期評価の信頼性を認め有罪判決を！