これ以上海を汚すな!市民会議は、福島原発事故により発生したタンク貯蔵汚染水の処分について、政府が海洋放出とする方針を廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議で決定した2021年4月13日から1年を迎え、「4・13海洋放出政府決定から一年、これ以上海を汚すな! アピール」を織田千代共同代表名で公表し、「大切な日常を守るために、私たちは声を上げ続けます」と訴えています。
4・13海洋放出政府決定から一年、これ以上海を汚すな! アピール
2011年3月福島で原発事故が起こりました。それは故郷を奪い日常を一瞬で変えてしまう瞬間でした。人々は放射能の影響を避けるために避難をしたり、除染や測定をしたり、本当に大変な努力を続けてきました。漁業は試験操業が続き、ようやく本操業ができるかもしれないとなった昨年2021年4月13日、汚染水の海洋放出の政府決定がありました。
「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という漁業者との約束を反故にし、公聴会、パブコメ、署名などで専門家も含む多数の市民から反対意見が続出し、県内自治体議会の7割で反対や慎重対応を求める声が上がり続けていた中での突然の決定でした。
政府と東電は、福島の復興のため丁寧に説明を続ける、と言いながら海洋放出の準備を進めようとしています。流されようとしているものは1度流してしまったら取り返しがつかないものです。その中にどのようなものが含まれ、どれだけの量がいつまで流され、どんな風に広がって流れ、どんな影響が出るのか、情報は不十分なまま海底トンネルを使って放出する計画を進め、漁業者向けの補償や魚類の生育実験の話を出して、影響を矮小化させる動きも見られます。それで人々の安心は本当に得られるのでしょうか。
原発事故後11年目となる現在、その事故の影響についての詳しい情報は、日に日に減らされつつあると感じます。世界中の原発から流されていて身近に有るものといいながら、トリチウムは安全とする副読本やチラシが全国小中学校に配布されました。しかしそれが原発事故炉から流される水であること、放射性物質は内部被曝が心配されること、どんな危険性があり、いつまで流し続けなければいけないのか、は言われていません。
私たちが汚染水を海に流すな!と声を上げた時に、経産省資源エネルギー庁は、放出するのは処理水なのだから、汚染水という言葉を使ってまわりに宣伝しないように、と指示してきました。
事故後に感じた放射能への恐れ、とは別の、国と東電への不信感が私たち市民を苦しめていると感じます。
最近もまた大きな地震があり、原発は大丈夫なのかと言う心配がよぎり、事故後の人々の混乱がフラッシュバックします。私たちはあの時の思いを今も忘れられません。どんなに薄めたからといって、人為的に放射能を拡散することは、原発事故の影響が続くことを意味します。
今も、海の景色は事故前と変わらずゆったりと私たちのそばにあり、人々は少しでも健康に日常を暮らし、子供を育てたいと願って生きています。それは世界中のどの場所でも共通の思いです。その大切な日常を守るために、私たちは声を上げ続けます。
2022年4月13日
これ以上海を汚すな!市民会議共同代表 織田千代
画像はいわきから奈良に移動した、彫刻家、安藤栄作さんのイラスト。