4月14日午後、認定NPO法人いわき放射能市民測定室たらちねは、内田いわき市長に「東京電力福島第一原子力発電所汚染水放出に関する環境モニタリングの官民連携についての要望」を行いました。
たらちねでは、2015年から事故を起こした福島第一原発周辺海域でのサンプル採取による海洋調査を行ってきました。電解濃縮装置の導入によって、トリチウムの検出下限値を下げることに成功し、福島県沿岸海域のトリチウム濃度の現状、環境の実相をようやく知ることができました。
たらちねは、このトリチウム測定と分析結果を、今年の3月に環境研で発表しましたが、その内容を、いわき市長に報告するとともに、「東京電力福島第一原子力発電所汚染水放出に関する環境モニタリングの官民連携についての要望」(下記掲載)を提出しました。
要望は、「原発事故を起こした国と東電が、住民の意思不在の中で、強引に汚染水の放出を進めることは、勝手で非常識な行いだと思います。多くの市民が、この経緯に納得していないと思います。原発事故による汚染水海洋放出実施計画の変更認可申請の事前了解に関わる話し合いが行われる際は、いわき市として慎重な対応で臨んでいただきたいと思います」とし、「11年間の測定活動を通して、いわき市内の農産物の放射性物質減少の推移も数値で可視化し確認しています。また、海洋環境の放射性物質による汚染についても同様です。11年間という年月を経て、私たちを取り巻く環境は、少しずつ事故以前に戻りつつあります。しかし、汚染水の放出は、せっかく自然界の力と人々の努力により戻りつつある環境を、また『あの日(2011年3月11日)』に巻き戻してしまうことになります」とした上で、「いわき市が今後、汚染水についての情報を集め、未来を見据えた判断を見出す際には、私たち市民の測定活動から得たデータを活用し役立て、いわき市が市民と協働し未来を育む『汚染水放出に関する環境モニタリングの官民連携』の仕組みの構築を」として、具体的には、たらちねで実施している「年4回の福島第一原発沖1.5km地点での定点海洋調査の測定結果を提出」「年2回の福島県沿岸の定点調査の測定結果を提出」というもので、今後の定点観測のデータをいわき市と共有、市の行政判断と施策展開に役立ててほしいというものです。
内田市長は、たらちねの活動に敬意を表した上で、国・東電の説明責任を指摘しつつ、「提出いただければ参考にさせていただく」と応じました。
要望提出には、私も同行いたしました。
東京電力福島第一原子力発電所汚染水放出に関する環境モニタリングの官民連携についての要望
いわき市長 内田 広之 様
国は2021年4月13日、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故により発生した汚染水を海洋放出する方針を発表しました。
現在、東電敷地内のタンクに保管されている多核種除去装置処理水の7割は、法令の放出基準値を大幅に上回っています。私たちは、基準値越えの水は「処理水ではなく汚染水である」と考えています。汚染水は、「海水で薄めて流す」と発表されていますが、薄めても、海に流れる汚染水の総量は変わりません。
ここに至るまで、国や東電からは、「汚染水は安全」を押しつけるようなチラシが配布されるのみで、住民への誠実な説明もありません。原発事故を起こした国と東電が、住民の意思不在の中で、強引に汚染水の放出を進めることは、勝手で非常識な行いだと思います。多くの市民が、この経緯に納得していないと思います。原発事故による汚染水海洋放出実施計画の変更認可申請の事前了解に関わる話し合いが行われる際は、いわき市として慎重な対応で臨んでいただきたいと思います。
私たちは、いわき市に生まれ住み、ここで子育てをする母親たちです。原発事故発生後は、家族と子どもたちの健康を守るために食品の放射能を測定し、内部被曝を軽減することに努力してきました。これまで継続してきた11年間の測定活動を通して、いわき市内の農産物の放射性物質減少の推移も数値で可視化し確認しています。また、海洋環境の放射性物質による汚染についても同様です。11年間という年月を経て、私たちを取り巻く環境は、少しずつ事故以前に戻りつつあります。しかし、汚染水の放出は、せっかく自然界の力と人々の努力により戻りつつある環境を、また「あの日(2011年3月11日)」に巻き戻してしまうことになります。
汚染水放出の可否は、今を生き、世代の責任を担う私たちの判断が、子どもたちが生きていく未来の自然環境を、どんなものにしていくのか?を左右する大きな決断です。
子どもたちの未来が健全で明るく、自然と寄り添い生きられるものになるよう、私たちも子育てをしながら尽くしていきたいと思います。
そのために、いわき市が今後、汚染水についての情報を集め、未来を見据えた判断を見出す際には、私たち市民の測定活動から得たデータを活用し役立て、いわき市が市民と協働し未来を育む「汚染水放出に関する環境モニタリングの官民連携」の仕組みの構築をご検討いただきますようお願いいたします。
さしあたって、下記の内容についての測定結果を提案をさせていただきたいと考えています。
●たらちねで実施している年4回の福島第一原発沖1.5km地点での定点海洋調査の測定結果を提出させていただく。
●たらちねで実施している年2回の福島県沿岸の定点調査の測定結果を提出させていただく。
〜提出する核種について〜
現在、提出可能な核種はセシウム134、セシウム137、トリチウム、ストロンチウム90です。今後は、放射性の炭素14、マンガン、鉄、コバルト、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、ルテニウム、セリウムの測定も予定しております。それらの測定データの提出が可能になりましたら加えさせていただきます。
以上
2022年4月14日
認定NPO法人いわき放射能市民測定室たらちね

