東京電力は、4月25日から福島第一原発事故の汚染水の海洋放出設備の事前工事の一つと称して、放出する海底トンネルの沖合約1キロ地点の放出口工事のため、海上の作業区域を示す浮き(浮標)や海底に穴を掘る作業船を係留する重りなど設置した。29日にも放出口のコンクリート製構造物を設置する海底の掘削工事を始め、8月上旬ごろの完了を目論んでいる。
東京電力は、陸側でも5・6号機取水口付近の海底トンネルの入口部の立て坑を掘削しており、25日にトンネルを掘る「シールドマシン」を、立て坑の底部に運び入れたとしている。
汚染水の海洋放出計画に関する原子力規制委員会の審査は15日に終了しており、東京電力は、原子力規制委員会が審査書案のパブリックコメント実施後、認可を受け、福島県、大熊町、双葉町が「事前了解願い」に同意すれば、6月に本格着工を実行するとしており、来年春の放出開始を公言している。
今回も、立て坑や放出口の準備工事は、設備の新設や増設にはあたらず、認可や同意が必要ないとして、一方的にどんどん工事を進めており、漁業者や福島県民の反対の声を全く無視している。
これ以上海を汚すな!市民会議は、政府と東京電力に対し、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする文書約束を守り、理解と合意のない海洋放出設備工事の6月着工の中止を求めるアクションに、ともに立ち上がることを呼びかけている。
●行動予定
▋東京行動
5月13日(金)規制庁、東京電力本社への申し入れ行動
10:00:原子力規制庁―変更申請の不認可の申し入れ
(衆議院第1議員会館第5会議室)
11:30:東京電力本社―6月着工中止の申し入れ、スタンディング
(東京都千代田区内幸町1丁目1番3号)
▋福島行動
5月25日(水)福島県庁、東京電力福島復興本社福島分室への申し入れ行動
9:30:東京電力福島復興本社福島分室
―6月着工中止の申し入れ、スタンディング
10:30:福島県庁―事前了解願いの不同意の申し入れ、スタンディング
11:30:記者会見(福島県庁記者クラブ)
以下に、原子力資料情報室の声明を紹介する。
【原子力資料情報室声明】東電は海洋放出工事を即時中止せよ
2022年4月26日
NPO法人 原子力資料情報室
報道によれば東京電力は汚染水(処理水)の海洋放出に向けた排出口の設備工事を開始した。トンネル掘削のためのボーリングマシーンの搬入を行ない、29日にも掘り始めるという。
しかしながら、東電が約束している漁業者団体との合意は得られていない。合意を得られないままの工事突入である。東電はあくまでも合意がなければ放出しないとの立場を強調しているが、工事強行は約束を反古にする行為に他ならない。
東電が対策を怠ることで起きた福島原発事故、その結果、東電は数十万の住民の生活を奪い、農林漁業を破壊した。その東電が、今また漁民たちを裏切ろうとしている。
東電は、放射能影響評価に対するIAEAの評価、原子力規制委員会の許可など所定の手続きすら蔑ろにし、さらに、地下水の建屋への流入を止める作業を怠ったまま、ひたすら、海洋放出へ向けた作業を強行している。
東電は工事に入る前にタンク毎に放射性物質の組成と量を調査して公表すべきである。64核種以外の核種について生成量が少ないとして検討対象から外しているが、それらの測定結果も示すべきだ。放射性物質の種類と量を公表しないのは、極めて不誠実な態度と言える。
東電のこうした行為は、到底許されることではない。即刻、工事をやめ、漁業者団体の懸念や反対の声を率直に受け止め、海洋放出方針を撤回し、貯蔵継続あるいはコンクリート固化へと対応を転換するべきである。
以上

4月25日、たらちねの1F沖海洋調査より