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「過失責任を否定することは正義に反する」東電刑事裁判控訴審の結審、半年後判決

 6月6日、東京電力福島第一原発事故の真相と刑事責任を問う、東電刑事裁判の控訴審第3回公判が、東京高等裁判所第10刑事部(細田啓介裁判長)で開かれ、検察官役の指定弁護士は「過失責任を否定することは正義に反する」と強い言葉で無罪判決の破棄を訴え、結審しました。判決は12月または来年1月に言い渡される見込みです。

 東京電力の勝俣恒久元会長ら元経営陣3名が、福島県大熊町の双葉病院の入院患者44人を死亡させたことなどで業務上過失致死傷の罪で強制起訴された刑事裁判。一審無罪の破棄をめざす控訴審は、昨年11月の第1回公判で、検察官役の指定弁護士が一審で採用されなかった裁判官による現地検証と新たな証人調べを請求しましたが、第2回公判で、細田啓介裁判長がいずれも「必要性がないため不採用とする」と決定、第3回公判で結審するという訴訟指揮でした。
 このため、弁護団は、5月10日に、被害者参加代理人として、6月17日に示される避難者訴訟の最高裁判決と7月13日の東電株主代表訴訟の東京地裁判決を待って、その内容を吟味すべきと「続行期日の指定」を求める「上申書」と「意見書」を提出。福島原発刑事訴訟支援団も、4月15日から「一審判決を破棄し公正な判決を求める署名」を開始、5月20日に第1次集約分12,140筆を東京高裁に提出。また5月23日から6月3日まで、福島から上京し首都圏の皆さんとともに高裁前で、審理の継続、一審判決を破棄し公正な判決を求めて、ランチタイムスタンディングを行い、裁判所に訴えました。

 第3回公判。この日、梅雨入りした東京高裁前の午前の行動には、大雨の中、150人以上が詰めかけ、「東京電力の罪を明らかにしてください」と、細田啓介裁判長に向けて、シュプレヒコール。福島から9名が、さらに海渡、大河、北村の各弁護士も駆けつけてスピーチ。コロナ対策で、一般傍聴席は32席に制限される中で、165人が傍聴整理券を求めて並びました。

 以下は、傍聴した佐藤真弥さんからの傍聴レポートです。

 14時から5分ほど早く開廷。被害者遺族は5人が法廷に入り、被告人の出廷は武黒被告一人のみ、勝俣被告と武藤被告は「体調不良」により欠席。指定弁護士、弁護人、被害者代理人は全員出席しました。
 開廷後、裁判長が冒頭いきなり「本日は結審をし、判決日を決めたいと思う」と発言する中で、最初に被害者遺族の、心情についての意見陳述がありました。
 遺族1人目の陳述は渋村指定弁護士が次のように代読しました。
「裁判では津波の話ばかりでなぜ避難が遅れたのか明らかにならない。
 政府のトップも事故対応ができていなかったし、野田元首相の収束宣言は悔しかった。
 東電の経営責任者が責任を取らないのはおかしい。
 裁判のやり取りでは真実が分からなかった。
 今も現場で何とかしようと頑張っている人達がいるのに、処理水を海に流すなどと言っている。タンクを造っていた時から分かっていたことではないか。風評対策してきたのに残念だ。
 現地検証に期待していたのにがっかりした。どうして必要ないなどと言えるのか。
 私の被害を受けた地がどうなっているのか見てほしかった。
 中間貯蔵地に協力して大熊を出た。
 現場を見ずに結審されるのは悔しい。
 両親に会いたくなる時がある。それは最期を看取れなかったからではないかと思う。」

もう一人の遺族の陳述は、被害者参加代理人の大河弁護士が代読しました。
「地裁の判決を読むと、裁判官に分かってもらえなかったのかと残念だ。
 高裁には私たちの悲しく悔しい気持ちを分かってほしい。
 寒がりだった父が、冷たい体育館の床の上のビニールシートの上で遺体となっていた、その心情を理解してほしい。
 東電は何も対策しなかった。どうして幹部が責任を問われないのか。
 結婚するとき父は夫に「大熊は原発があるからな」と心配していた。私は笑い飛ばしていたが、11年たって父の言葉を思い出す。」

 その後、第2回公判で採用された証拠について指定弁護士が説明しました。
 指定弁護士は、新たに高裁で採用された証拠に基づき、長期評価の信頼性が高まったとして、地裁判決の基本的な誤りは長期評価の信頼性・具体性を否定したことにあり、その誤りを明確にする証拠だと述べ、千葉訴訟の高裁判決書やIAEAの指針などについて分かりやすく説明。そして、地裁判決は長期評価に信頼性がないことを前提に書かれたが、この信頼性が認められれば根底から覆ると指摘し、最後に神山指定弁護士は、地裁判決は事実誤認があり、高裁が被告人らの過失責任を否定することは正義に反する、と訴えました。

 被告弁護人の反論は、3名共通の弁論として、武藤被告の弁護人である宮村弁護士が行い、地裁判決に誤りはなく、控訴は棄却されるべき、と主張。民事訴訟の判決を刑事訴訟の事実認定に用いるのは許されない、反対尋問権の侵害だ、防御権の侵害だ、などとし、民事事件と刑事事件では問われている責任が違うし、結果回避義務も違うのだなどと主張しました。

 双方の弁論が終わり、裁判長が他に何かあるかと問いに、被害者参加代理人の海渡弁護士が立ち上がって発言しました。
 海渡弁護士は「まもなく、最高裁と東京地裁商事部で関連事件の判決が下されます。これらの判決で、本件の一審判決と異なる判断が示されたときは、弁論を再開して、これらの判決を証拠採用し、判決の資料としてください。
 福島原発事故は戦後最大の公害です。最高裁の判断、現地に足を運んだうえで下される東京地裁商事部の判断を参考にすることは当然です。一言意見を述べさせていただきました」
 これに対して、細田裁判長は、「事実上の進行についてのご意見として承りました。他に当事者双方からは何かご意見はありませんか」と指定弁護士と弁護人の意見を促しました。
 これについて、検察官役の石田弁護士は、「参加代理人の意見も踏まえて、書面を提出することになるとおもいます」と話しました。
 裁判長は「進行についての意見として受け取った」とし結審、閉廷後すぐ判決日の調整をしたいと、閉廷を告げました。
 傍聴席から「最後まで審理を尽くしてください」「被害者の声を聞け」「現場検証をしてください」などという声が次々に上がりました。衛視が駆け付け、発言をしないよう注意を繰り返しました。裁判官は何も言わず黙って見つめていました。

 判決日は確定はしませんでしたが、12月14日、1月16日、1月18日のいずれかの14時からになるとのことでした。
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 公判後の記者会見では、武藤告訴団長は、「現場検証をしなかったり、新しい証人尋問が認められなかったことに関しては、本当にちょっと審理が尽くされたとは思えません」「今後、新たな局面が出てくることを期待したい」と語りました。
 その後の報告会で、河合弁護士は「今日は押し返した。長期評価の評価に刑事、民事関係ない。最高裁判決は国の責任を認めないとしても、長期評価の信頼性は否定できないと思う。望みなきにしもあらず。」と話し、甫守弁護士が訴訟の審理を丁寧に説明した上で、「前回却下され、審理として残念。怒号当然。裁判所は有罪と思っているかも、悲観する必要ない。逆の心証だとしても、最高裁判決が良いものが出れば。」と話し、大河弁護士は「前回、意気消沈したが、ランチタイムスタンディング、署名、上申書、意見書を出した。今日、最高裁判決を見る可能性も出た。みなさんのやったことで押し返した。」と話しました。
 海渡雄一弁護士は、「東電刑事裁判は結審されましたが、最高裁判決後に弁論が再開される可能性があります。」と控訴審の結審に対してコメントしています。
 東電刑事裁判は結審されましたが、最高裁判決後に弁論が再開される可能性もあります。
 署名活動も継続します。第2次集約は7月31日です。
 審理を尽くし、一審判決の破棄、公正な判決を求めて、私たちはあきらめません。

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by kazu1206k | 2022-06-07 17:34 | 脱原発 | Comments(0)

佐藤かずよし


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