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海洋放出実施計画の審査書案に意見提出

 6月16日、原子力規制委員会が6月18日0時0分締切として公募している「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等)に係る審査書(案)」に対するパブコメに「科学的・技術的意見」を提出いたしました。以下に、紹介いたします。

原子力規制委員会 宛て

「東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画の変更認可申請(ALPS処理水の海洋放出関連設備の設置等)に係る審査書(案)」に対する意見提出用紙

●意見/理由:提出箇所

はじめに

 貴委員会は、より独立性の高い国家行政組織法3条に基づく委員会として、「東京電力福島原子力発電所事故の教訓に学び、二度とこのような事故を起こさないために」「国民の安全を最優先に、原子力の安全管理を立て直し、真の安全文化を確立すべく、設置」(組織理念)されました。
 放射性液体廃棄物の海洋放出について、政府と東京電力は、事前了解の必要のない場所から海底トンネル工事を始めるなど、有無を言わさず、海洋放出準備を進め、廃炉を優先して復興を犠牲にする姿に、多くの福島県民が不信感を抱いています。
 そもそも、本件の放射性液体廃棄物は、原発事故と事故収束作業に伴う汚染水等の発生に原因があります。東京電力は発生者責任の原則のもと、厳重管理・処理する必要があり、国と貴委員会は、福島第一原発を特定原子力施設に指定しており、放射性液体廃棄物等を適切な方法により安全に管理する義務があります。関係諸法令に基づき、国民の安全を守るため、高度な注意義務を果たすことが求められおり、仮にも、本件放射性液体廃棄物の処理によって二次汚染による被ばくや人的社会的被害を引き起こしてはならないのです。
 総量規制のないまま液体放射性廃棄物を海洋放出すれば、トリチウム等の放射性核種が全量投棄され海洋汚染が拡大します。核種毎の放射能の総放出量、貯蔵タンク内の核種毎の放射能総量などの情報公開、総量規制の実施も必要ですが、実施されない現状では、予防原則のもと、トリチウム等を含む液体放射性廃棄物は、タンク保管や固化保管等安全な陸上保管を進めること現実的であり、国民の安全を守るための懸命な選択です。
 貴委員会は、設置の本務を逸脱せず、その組織理念に基づき、福島第一原発事故の原点に立ち返り、国民の安全を守るため、「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」とする福島県漁連等との文書約束を守らせることが必要不可欠です。
 理解と合意なき放射性液体廃棄物の海洋放出の「福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画」の変更認可申請は認可しないよう強く求め、以下の通り意見を提出します。


1、10ページ〜11ページ 1-1 I.全体工程及びリスク評価

 意見:「『講ずべき措置』を満たしているものと認める」との審査判断だが、廃止措置完了までの全体工程が具体的に示されず不透明なままで、全体工程及びリスク評価は、不適切かつ不適正な評価である。

 理由:1号炉から6号炉については、廃止措置計画が策定されておらず、東京電力「福島第一原子力発電所特定原子力施設に係る実施計画」による「中長期ロードマップ」のみで事業が進められており、廃止措置完了までの全体工程が不透明である。「貯蔵タンク」の解体・撤去による、燃料デブリ保管施設等の設置エリアの確保のため、ALPS処理水を海洋放出することが、特定原子力施設全体及び各設備のリスク低減及び最適化が図られるとするが、具体的リスク評価の詳細が不明なままであり、東京電力の説明を鵜呑みにした一面的評価である。廃止措置計画の策定による全体工程の明確化がないままでは「木を見て森を見ない」不適切かつ不適正な評価と言わざるを得ない。


2、15ページ 1-2 放射性液体廃棄物の処理・保管・管理のうち、4. 遮蔽及及び漏えい
防止・汚染拡大防止対策

 意見:「漏えい及び漏えいによる汚染の拡大が適切に防止される」というが、配管等の耐震性と経年劣化対策の具体的詳細が不明である。

 理由:規制委員会は、漏えいを防止するため耐食性に優れた材料を使用することにより、漏えい及び漏えいによる汚染の拡大が適切に防止されることを確認したというが、ALPS処理水を内包する配管のポリエチレン管及び外側の外装管の耐震性及び経年劣化対策等の具体的詳細が不明である。


3、29ページ〜30ページ 1-8 保安のために講ずべき事項のうち、1. ALPS処理水中の
放射性核種

 意見: ALPS処理水中の放射性核種の特定が終了しておらず、総放出量も不明であることから、現時点で保安の確保は担保されておらず、認可は早計であり、認可後に別途確認するのは不適切かつ不適正である。

 理由:東京電力は、ALPS処理水を海洋放出する時点において、存在しうる放射性核種を特定した上で、測定・評価の対象とする放射性核種を選定する方針としており、規制委員会も、この結果をALPS処理水の海洋放出が開始されるまでに別途確認するとしている。
 現時点において、東京電力が64核種を測定し濃度を公表しているのは、40以上あるタンク群のうち3タンク群だけであり、タンク貯蔵水の7割がトリチウム以外の放射性核種の告示濃度比総和が1を超え、基準を満たしていない。このような現状を糊塗して、放出する全放射性核種等の濃度、総量などの全情報を確認しないままでは、保安の確保は担保されたとはいえず、認可は早計であり、認可後に別途確認するのは不適切かつ不適正である。


4、36ページ 1-10 実施計画の実施に関する理解促進

 意見:東京電力の適切な取組がなされ、措置を講ずべき事項「VII. 実施計画の実施に関する理解促進」を満たしているとの評価は、事実誤認で理解は促進されておらず、認可は不適当かつ不適正である。

 理由:「VII.実施計画の実施に関する理解促進」は、実施計画の実施に当たって、継続的に、地元住民や地元自治体をはじめ広く一般に説明や広報・情報公開を行い、理解促進に努めることを求めている。
 しかし、東京電力は、「関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない」という福島県漁業協同組合連合会や全国漁業協同組合連合会に対する2015年の文書約束を反故にして、海洋放出設備の準備工事を進めており、福島県内農林水産業・消費者4協同組合組織はじめ、福島県内自治体議会の多くが、海洋放出の反対・慎重の意見書を採択してきたことを無視する、一方的な「理解」の押し付けを進めているだけである。
 また、東京電力は、放出する全放射性核種等の濃度、総量などの全情報を公開しておらず、海底土や海浜砂、生物への吸着・濃縮による放射能の蓄積とフィードバックの再評価など、必要な放射線影響評価と安全確認の徹底も怠っている。
 このように、東京電力の広報・情報公開が不適切のため、地元住民や地元自治体、広く一般の理解は促進されておらず、措置を講ずべき事項を満たしていないことから、審査評価は事実誤認に基づく著しく不適切で恣意的な評価で、認可は不適当かつ不適正である。
 むしろ、貴委員会を中心になって、国と東京電力による本件の説明・公聴会を、福島県内はじめ全国で開催することを望むものである。
 

5、32ページ〜39ページ 2-1 海洋放出に係る放射線影響評価

 意見:貴委員会は「人と環境に対しての影響が十分に小さいことを確認した」とし、「海浜砂等への移行に伴う放射性核種の蓄積については、放出開始と同時に海水中の濃度と平衡状態に至る設定で評価をしており、長期間にわたる放出によって環境中の放射性核種の濃度が最も高くなると考えられる状態で評価している」というが、人と環境への影響評価において放射能の蓄積による影響が考慮されておらず過小評価の危惧、被ばく線量評価の妥当性に懸念があり、放射線影響評価は不十分で認可は不適切である。

 理由: 海浜砂等への放射性核種の蓄積について「放出開始と同時に海水中の濃度と平衡状態に至る設定で評価している」とし、海藻などに蓄積した放射能により海水中の濃度が上がる現象(フィードバック)について考慮されていない。海藻などと海水中で放射能がやりとりされることにより海水中の放射能濃度が相対的に上昇する現象がセラフィールドなどで観測が指摘されている。また、2021年2月、試験操業における漁業協同組合の自主検査で新地町沖合8.8kmでとれたクロソイに500Bq/kgが確認され、福島県漁業協同組合連合会が出荷を自粛したが、これは生物濃縮が単純でないことを示しており、10km四方海域の平均濃度での被ばく線量評価については、内部被ばくは漁業対象エリアでの最大値、海岸外部被ばくでも海岸沿いの最大値を使用すべきとの指摘があり、本被ばく線量評価の妥当性には懸念が残る。この本放射線影響評価は不十分であり、認可は不適切である。

 以上、貴委員会の委員の皆様の懸命な判断を願い、意見といたします。









by kazu1206k | 2022-06-17 07:47 | 脱原発 | Comments(0)