7月28日、東電刑事裁判の控訴審の弁論再開に向けて、午前中に、東京高裁への上申書と署名提出行動、さらに午後「東電刑事裁判 弁論再開と最高裁判決等の証拠調べを求める!学習報告会」が行われました。
福島原発事故の東電旧経営陣の刑事責任を追求する福島原発刑事訴訟の控訴審は、6月6日に結審しましたが、7月13日の東電株主代表訴訟の判決を証拠として採用し、証拠調べを行い、審議を尽くしてほしいと、署名を添えて、弁論再開を求めたものです。
行動は、東京高裁正門前で10時からアピール行動を行い、入廷行進をして、東京高裁刑事訟廷に一審判決の破棄・公正判決を求める署名の第2次分4,074筆(累計で16,214筆)を提出。さらに、東京高裁刑事第10部に、被害者参加代理人による、東電株主代表訴訟判決の証拠採用・取調べのため続行期日の指定を求める「続行期日の指定を求める」上申書(下記に趣旨と内容目次、全文は
https://shien-dan.org/wp-content/uploads/appeal-doc-20220728.pdf)を提出しました。その後、記者会見を行い、上申書の内容を詳しく説明。午後1時より、衆議院第1議員会館で報告学習会が開かれ、海渡雄一弁護士が上申書の内容、株主代表訴訟判決の詳細な説明、最高裁の民事訴訟判決の事情など、質疑応答を含めて内容の濃い90分の講演が行われました。
これまで、6月23日に、被害者参加人代理人弁護士が、6月17日付最高裁判決の証拠採用、取調べのための続行期日の指定を求める上申書を提出。7月13日には、東京地裁民事8部(朝倉佳秀裁判長)が、東電株主代表訴訟について、原告らの請求を認め、被告勝俣、清水、武黒及び武藤に対して、連帯して13兆3,210億円の損害賠償の支払いを命ずる判決があり、原発過酷事故の危険性がゆえに万が一にも事故を起こさないようにしなければならないこと認めました。刑事裁判と同じ証拠に基づいて、被告武藤、被告武黒及び被告小森は原子力担当役員として、2008 年~2009 年に推本の長期評価にもとづく津波対策が避けられないものであることについて説明を受けながら、津波対策を講じなかったことは任務懈怠と認定し、被告勝俣及び被告清水は、2009年2月の御前会議における吉田部長の発言にもとづいて、対策を命ずることは可能であったとして、責任を認めています。
東電株主代表訴訟の東京地裁判決は、東電刑事裁判の東京地裁永淵裁判長の不当な無罪判決を覆すものです。東京高裁は、弁論を再開して、審理を尽くす以外にありません。
福島原発刑事訴訟支援団、福島原発告訴団、弁護団は、一審判決の破棄をめざし、東京高裁での弁論再開を強く求めます!
●続行期日の指定を求める上申書
(東電株主代表訴訟判決の証拠採用・取調べのため続行期日の指定を求める)
2022年(令和4年)7月28日
東京高等裁判所 第10刑事部 御中
被害者参加代理人弁護士 河 合 弘 之
同 海 渡 雄 一
同 甫 守 一 樹
同 大 河 陽 子
上 申 の 趣 旨
本年6月6日に本件刑事事件が結審された後、本年7月13日に、東京地方裁判所商事部において、東電株主代表訴訟についての一審判決が言い渡された。結論は本件の被告人3名を含む東電役員4名に対して、連帯して13兆3120億円の支払いを命ずるものであった。
同判決は、被告人らの刑事責任を論ずるうえで、重要な証拠となるものであるから、その判決書と関連証拠を証拠として取り調べるため、本件刑事事件の弁論を再開し、続行期日の指定をしていただきたい。
上 申 の 理 由
内容
第1 はじめに 4
第2 東電株主代表訴訟事件の概要と判決の結果 6
1 訴訟の概要 6
2 判決の主文 7
第3 東電株主代表訴訟の争点 7
1(争点1)東京電力の取締役に津波に対する安全対策の実施義務を生じさせるような過酷事故発生の予見可能性があったか否か(予見可能性の有無)。 7
2(争点2)被告らに津波対策に係る取締役としての任務懈怠があったか否か(任務懈怠の有無) (主位的主張、(1)と(2)は選択的主張)。 7
3(争点3)被告らに過酷事故に係るリスク管理体制構築義務違反があったか否か(任務懈怠の有無) (予備的主張)。 8
4(争点4)任務僻怠と本件事故発生との因果関係の有無 8
5(争点5)本件事故により東京電力に生じた損害の有無及びその額 8
第4 東電株主代表訴訟における立証の状況 8
1 政府事故調と国会事故調関係 8
2 刑事裁判で取り調べられた資料や証人調書のほぼすべてを証拠資料とした 8
3 東電株主代表訴訟における4人の専門家証人の取り調べ 9
4 精力的に補充尋問がなされた被告本人尋問 10
5 現地進行協議 12
第5 判決の概要 13
1 前提となる判断の枠組み 14
2 予見対象津波の程度について(争点1の1) 16
3 長期評価の見解等の信頼性について(争点1の2) 17
4 明治三陸試計算結果及び延宝房総沖試計算結果の信頼性について 26
5 貞観津波に係る貞観試計算結果の信頼性について(争点1の2) 26
6 東電内部における津波対策をめぐる状況(判決文154頁以降。以下に引用するのは、315頁以降の被告武藤の任務懈怠を論ずる前提で認定された東電社内の経緯である。) 30
7 各被告の任務懈怠の有無について(争点2) 37
8 被告武藤についての任務懈怠の有無 38
9 被告武黒についての任務懈怠の有無 48
10 被告小森についての任務懈怠の有無 50
11 被告勝俣及び被告清水についての任務懈怠の有無 50
12 各被告の任務懈怠についてのまとめ 58
13 任務懈怠と本件事故発生との因果関係について(争点4) 60
14 損害の有無及びその額について(争点5) 76
第6 東電株主代表訴訟判決が本件刑事裁判の審理に与える影響と求められる今後の審理 77
1 推本の長期評価の信頼性を全面的に肯定した 77
2 津波対策を実施し、事故の結果を回避することができたことを認めた 77
第7 添付資料 80
1 書証番号対照表(刑事裁判の証拠と株主代表訴訟の甲号証の証拠番号の対照表) 81
2 事実経過表(東京地裁民事8部及び代理人ら作成)